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人生の後悔は 1

2023年10月
人生の後悔はただ一つ、父を看取れなかったことだった。あんなに私が助けるんだと意気込んでいたのに、最期に父は1人で、病院で、死んだ。息を引き取って20分くらいして、やっと会えた時には、もう冷たくなっていた。せめて、手をにぎって、声をかけて、送り出したかったのに。お父さん、ごめんね、ごめんね、ごめんね、寂しかったよね、怖かったよね、苦しかったよね、お父さん、ごめんね、ごめんね、ごめんね、、、

2018年8月
父に腫瘍が見つかった。足の付け根が痛い痛いと言うから、加齢による股関節の痛みだろうなんて言って、グルコサミン飲んでたらそのうち治るよなんて話していたのに。母からの着信を受けると、母はパニック状態で、「お父さん腫瘍だって」と泣き叫んでいた。気が動転して泣き叫ぶ人なんて映画かドラマ以外で無いと思っていたけど、それは現実だった。私はこの瞬間から、自分の心に重い重い石をつけて、深い深い場所にブクブクと音をたてながら無理矢理沈めたんだと思う。冷静でいるために。父を、母を救うために。私は淡々と、「大きい病院にいこう。とりあえず、帰っておいで。」と返事して電話を切った。

続く


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