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【ライブレポ】心臓を貫く箱の中で視界を開くような音楽を「おいしくるメロンパン 『cubism』レコ発インストアライブ」


2022年5月5日の記録。昨日のJAPANJAMの興奮もさめやらぬまま、私の足はタワーレコード渋谷店に向かっていた。なんなら昨日の衝動が私を突き動かしていたといっても過言ではない。私は、おいしくるメロンパンのインストアライブに向かっていた。昨日のフェスの疲労も溜まり、ベッドで生産性の無い泥と化していたけど、野外で聞いたおいしくるの良さと野外ならではの音響云々による物足りなさから私はライブハウスで鳴る音楽を求めていた。正直昨日ステージを見たし、インストアは配信で見るつもりで通販にてCDを頼んでいたが、サイン会付きでライブも箱で見られるということで音速で渋谷店に電話をかけていた。当日15:00に電話して取り置きできるかは半分賭けだったけど、商品も特典もあるということで私の渋谷行きが決定した。

キャパも何も分からなかったが、当日レジは大混雑。整理番号抽選の列も混みあっていた。周りの人達が地下アイドルかなんかのライブか?と言っていた。ウケる。私も以前、別のタワーで働いていたけど渋谷店の人には頭が上がらない。この混雑が毎日のようにあるんでしょ?捌くの絶対大変ですよね、すみませんと思いながら待機。どの方もかなり丁寧に対応してくれて嬉しかったし尊敬。

さて、ライブだが私は推しのライブほど整理番号がゴミというデバフ付きの人生を送っているので、最後方音響卓前という場所取り。後方彼氏面で見ようかしらと調子にのっていたが、普通に肉眼で視認できるし各所にステージモニターが付いていたのでなんとか回避。危ない。そうでなくても後方彼氏面でなんて見るな。気持ち悪い。19:00にライブがスタート。いつものSE「Bye Bye Summer」が流れ、メンバーが登場する。

1.look at the sea

1曲目はライブアレンジされた入りが好きな「look at the sea」。昨日の野外とは変わり、ドラムやベースの低音が心臓を撃ち抜くように鳴り響く。大きな快晴の空に広がっていた歌声は、今この小さな箱にいる私たちの鼓膜だけを貫く。直線最短距離で私の胸を掴んで離さない騒音にただ虜になった。これだ、これなんだよ、と思って少し頬が緩んだ。余談ですが、MCとかYouTubeでこの曲のことを"ルカザシー"っていうのめちゃくちゃ可愛いなと思っています。良いですよね。

2.色水

そのままの流れで「色水」を。耳に馴染んだ音が心地よい。昨日はフェスらしく至る所でクラップがあったな、とか思いながら演奏に見入る。ここでMC。最新ミニアルバム『cubism』について触れる。5/4のYouTube配信でも話していたことだが、今作は"届ける"
ことに注力したという。おいしくるはメジャーシーンにいる訳ではないがその意識の変わり方にはインディーズからメジャーへ出るそれに近いものがあると思う。メジャーへ進出するバンドは周りから見ても、ファンならなおさら、その違いを大きく感じることは多々あると思う。そこに喜びだけでなく歯痒さだったり、イメージと違うモヤモヤとした気持ちを抱えたりした経験は少なからずあるのではないだろうか。実際私は死ぬほどある。各所に対して失礼だし、別にお前のためにバンドをやっている訳ではないと言われたら仰る通りだ。でも、なんかそうじゃないんだ!みたいな時。本当のお前はこうじゃないだろう!という時。どうしてそんな違いが生まれるんだろうと思った時に、"思考の変化"が手っ取り早く思いつく。人間誰しもあらゆる経験によって価値観が変わるだろう。1人でPCやギターを弄り音楽に昇華したこと、それを自分以外の誰かに見つけて貰えたこと、ステージで音を鳴らす喜び、自分の音楽が誰かを救っているという感覚、求められるものあるべき姿を追い求めること、視界に捉えきれないほどの人を前に音楽を届けること。私はそういう経験をしていないので妄言程度でしか表せないが、そう言った音楽の面もしくはプライベートの面で、人は生活する上のあらゆる経験で思考が変化する。外的要因でいえば、メジャーシーンで大きく変わるのは関わる人の規模かと思う。より高い視座で自分たちに寄せられる期待や未来を背負う。そういうイメージを抱いている。そこで多くの大人や自分の考え方に触れるにあたって、様々な変化や進化が見られるのではないだろうか。それが自分の信じていたものと違うものだとしても。でも、私はおいしくるメロンパン、彼らにその負の想いを抱くことはなかった。いやそもそもメジャー云々の話じゃないからそうなんだけど。彼らのミニアルバムに対して感じたのは新しさより色々なものを抱えて戻ってきた感じだった。1st EP 『thirsty』はどちらかといえば明るく、爽やかに纏められた作品だった。続く2nd EP『indoor』では、どちらかといえば彼らの仄暗い部分を描き、当時は"前作と2つ合わせておいしくるメロンパンだ"という風に話していた。そこから3rd EP『hameln』4th EP『theory』とどんどん内に内に向かっていくイメージがあった。そこで今作にて、色々な荷物や想い、経験を抱えながら1st EPに戻ったかのような、そして開けたイメージを確実に感じた。そして、それでも、色を変えながらも変わらずに私の心を掴んで離さなかったのはきっと、どれもおいしくるメロンパンだからだ。MCにて"自分たちは今までずっと同じことを曲にし続けている。見方や切り取り方を変えているだけでその核は変わらない"と話していて、その理由がすとんと腑に落ちた。タイトルの『cubism』にも繋がるように、彼らは表現するものを変えているのではなくて、同じものをひたすら表現を変えながら作り続けている。そんな新たな一面を魅せてくれる作品だった。話は逸れまくってしまったが、そんな感じである。また今年は、ツアーが2本あるということでそこにも力を入れていきたいと話していた。ナカシマさんも"12時間くらい寝てたから頭働かない..."と呟きながらも"色々...頑張ります..!"とのこと。さっき、サンセットフィルムショーの入金してきたので本当に楽しみにしてます。

3.Utopia


MCを終え、3曲目に演奏したのは『cubism』から「Utopia」。綺麗な高音からはじまる、その一瞬で私は彼らの虜になります。本当に、良いんだって。文章がGoogle翻訳通したみたいになるくらい語彙力飛ぶから。"恰も僕の頭が解して 愛しているかのような"。気づかず心惹かれる感覚をこんなに素敵に表現できるんだね。好きなフレーズは2番の"体も声も名前も貸し付けたんだ疾うに"の所。語感も跳ねる感じとチャカチャカしたリズム感が堪らない。あと、いつかの酔いながらアーカイブを見た自分の感想書き残しに、とげとげしてなくて丸くて綺麗に言葉を言うな〜とあったので記しておきます。とにかく好きなので全員聴いてください。

4.シュガーサーフ

そして流れるように「シュガーサーフ」へ。これは、箱で聴くのが好きすぎる。音が刺さる。ベース大好きヲタクなんですけど、ベースってかき鳴らせるんだという所感。あのベースラインって人間が弾けるんだって嘘だろ...。峯岸さん......。ベースソロ、その迫力を全員生で聴いて惚れてください。爽やかなクセしてライブの演奏での煽りが熱すぎるんだよなおいしくる。

5.トロイメライ

ここで最後にツアー告知のMCを挟み、最後の曲へ。"「トロイメライ」"。この曲、今作の中で1番好きだな。まず、ギターの音作りが好き。クリーンなアルペジオにぎゅっと心が締め付けられるんだけど、どこか力が抜けていくような感覚。ふと涙の温かさを感じてしまう様な曲。サビの高音、ギリギリ地声で張れるくらいの音が求めて焦がれてるようで息が出来なくなる、胸がきゅっと痛くなる。"水に指を滑らせて"という届きそうで届かない距離感の表現、"例えば海が渇いたら婚約者にして欲しい"という彼が歌うからこそ度肝を抜くような言葉選び。美しいな、とただ純粋に思う。歌詞1つ、音1つ語りたいのですが日が暮れるので辞めます。私の中においしくるが歌う夕景の曲、大体どストライクな説あるな。夕立と魚と近い匂い。海辺でいつか聴きたい、夢だな。海行こう。そんな感じで浸っていたら、あっという間にインストアは終焉を迎えていました。後のサイン会については色々色々、描きたいけどもうとにかく緊張の一瞬でしたので心に留めときます。以上、急遽行ったおいしくるインストアについてでした。6月のツアーでまた。



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