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アジャイル開発にとってマーケターは良きパートナーになりうるか?

ソフトウェア提供会社の人間として「アジャイル」や「スクラム」という言葉は知っていたものの、その意味するところや価値観は知らないという状態が続いていました。


今まではそれほど問題にならなかったのですが、ここ数ヶ月でデザインや開発のメンバーと業務上でやり取りをする機会が増え、プロダクトや機能の詳細まで議論できる場にいられるようになりました。

そうした中で改めて「これは言葉の持つ意味や思想、背景を知らないとマズイな」と思うようになりまして、同僚からオススメの本を借りて読んでみました。


それがこちら。『正しいものを正しくつくる』


当然のようにこの本にはマーケティングの話は出てこないのですが、

(実際には仮説キャンバスというフレームワークのうち「チャネル」を扱う部分でほんの少しだけ出てくる。他の開発向けの書籍ではマーケティングのマの字もでないことが多いことを考えるとまだマシな方)

「正しいものを正しくつくった」後は「正しい人に正しく届ける」ことが必要になるはずです。


その領域も含めて考えたときに、アジャイルを実践する開発メンバーに対して、マーケターが関わりうる領域はどこにあるのか?

開発からうざいと思われないレベルで、適切なパートナーとして関係を築く接点はどこにあるのか?を自分なりに整理してみました。


①初期仮説の精度向上と、検証の実行を支援する。

「正しいもの」の解像度を上げるには、初期仮説の精度とその検証をいかに早く回すかが重要です。

マーケター(特にデジタル寄りの人)はその特徴として「切り口を複数立てて具体的な形にしてデータの分析方法を考慮した上で計測可能な施策を実行することが好き」というものを備えていることが多いです。

開発現場への最低限の理解と尊敬があれば、MVPの要件の絞り込みや検証方法の実現(LPの作成など)に関して、良きパートナーになれる可能性があります。


②開発メンバーにユーザーニーズを届ける。

アジャイルの原則の1つに「顧客満足を最優先し」とありますが、どうしても開発メンバーは実際の顧客と距離が遠くなってしまいがちです。

プロダクトオーナーが顧客の声を届ける役割を担おうにも、他の業務にも忙殺されなかなか手が回らないのが現実だと思います。


であれば、日々顧客と接しているセールスやカスタマーが、さらには見込み顧客のニーズや属性をもっとも知っているマーケターが、その声を積極的に届ければ良いではないですか。

実際、ユーザーさんに会社に来ていただきサービスの実際の使い方の実演や、対面だから言える不満を伝えていただいた際は、かなり質問や意見交換も盛り上がり、多くの方から感謝の声をいただきました。
(もっとも感謝を伝えるべきは、お忙しいなか会社に来てまでフィードバックを下さったユーザーさんであることは強調してもしきれません。)


個人的にも今のチーム的にも「マーケターは社内で1番ユーザーのことを考え、理解すべき!」という価値観が作れているので、こうしたマーケターとアジャイルに取り組む開発の相性は、かなり良いのではないかと考えております。


③自ら機能の価値を理解し、ユーザーに機能を届け、価値を実感してもらう。

ここがマーケターにとってもっとも重要、かつ開発メンバーにはコントロールしづらい領域だと思います。

これは自分の大きな反省でもあるのですが、実装時点ではその価値が見積もれず、むしろ粗に目が行ってしまい、リリース時にそこまで強くメリットを推し出さなかった機能があります。

しかし実際にユーザーさんに聞いてみると、使っている方は満足、使っていない方も知らないだけで、実際にデモを見ると「これはイイね!」という反応をくださる方が多くいらっしゃいました。


もちろん「リリース前に限定的に公開して感触を検証すべきだった」「事前に機能の実現価値について認識を合わせておくべきだった」など理想論としては色々あります。

しかし、それはそれとして、多くのメンバーが労力と時間をかけて実装し、期待を込めて送り出した機能が使われないのはマーケターの大罪であり、万が一原因が開発側の実装が甘かったのだとしても、それを指摘せずリリースを出したマーケターにも等しくその責任は乗ってくるのだと思います。


そのように考えると「正しいものを正しくつくる」のは開発側の責任であり領分かもしれませんが、その「正しさ」を一緒に考えたり検証したり、「つくったもの」の価値や本質を最大限理解し、翻訳してユーザーに伝え、最大限の価値に転換することが、ある程度想定される「アジャイル開発にとっての、良きパートナーとしてのマーケター」なのではないかと考えます。


そしてもし、その信頼感が築けるのであれば、要件の時点でユーザーにとっての価値について認識を揃え、開発時点でユーザーに届ける準備を整え、リリース時点ではその機能を待ちわびているユーザーがいる、という状況が作れるのではないでしょうか。


つくったものを届けたいユーザーが、常にリアルに存在している。
開発とユーザーを結び、サービスのファンを増やし続ける。

世の中が大変な状況だからこそ、そんな状態を目指して自分の仕事の在り方を見直したいなと思います。

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