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【掌編小説】中二

 今日生きるために、また誰かを殺さないといけない。
 頭の中では今度自分は誰を、なのかばかり考えている。朝陽も、声も動物も、僕を癒せない。最近は、上手に殺して苦しませずに済んだと思うことが増えた。人と関わる数だけ傷が増えていく。僕は何かを生み出す回数より、殺していく回数のほうが上回っている。肉を食べ、人を傷つけることを止められない。

 そんなことを君に話したら、素直に嫌な顔をしたね。僕はそんな表情に遭遇すると、飛びたいなと思う。全てを地上に置き去りにできるから。離陸して君を置き去りにする瞬間のGがどのくらいなのか、今から楽しみで仕方がない。離陸した先に待っている厚い雲と暗い海。接敵するまでに考えることは勿論君のことで、海はこんな僕が落ちてくるの楽しみにしている。

 僕はただ心から安心できる場所を探しているだけなのだ。それだけのことだが、そんな事を言うと君は私では無理なのだと言われている気分になるだろう。だから君を守ると言いながら置き去りにして、落ちる場所が決まっているパイロットになりたい。海は冷たいけど、希望を叶えてくれる場所。

分かって欲しいとは思わない。生きる為に何かを殺し続ける自分をやめたいなんて。
本当にやめられる時は死ぬ時なのだろうけど、その瞬間まで君のことを思っていられるのなら死ぬのも悪くないかもしれない。

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