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つけつゆおかわりできますか?

この前の休日に自転車で横浜を彷徨っていたら、ちょうどよさそうなチェーンっぽい蕎麦屋があったので思いつきで入ってみた。

店内は空いていて自動券売機が1台あり、自分が選んでいるとすぐに次のお客が来て、プレス感を感じたので何を血迷ったか大盛りのざるそばに揚げ物がついたやつを頼んだ。(焦ってボタンを押してしまった。)

大盛りといっても1.3倍くらいだろう。。。と思って待機していたが出てきたのは通常の3倍くらいのメガサイズだった。
箱根そばのフィーバー盛りくらいあった。

大盛りでもつけつゆの器は通常サイズで、緑茶の湯呑を2ポイントくらい小さくしたようなサイズである。
絶対足りなくなると思いながら食べ進め、やはり本当に足りなくなり、つけつゆが蕎麦湯みたいな色になってしまった。

揚げ物の塩気と気合いで耐えていたが、味が完全になくなってしまった。
周囲を見回しても「つゆのおかわり承ります」といった表示はなく、セルフサービスなのでホールのスタッフも存在せず、店員は厨房で忙しそうにしている二名だけだった。

私は後悔した。
慌てて大盛りを押してしまったこと、ではなく
「つけつゆのおかわりください」と快活な声で頼めない自分のまま今日まで生きてきたことを、である。

飲食店の店員をトータルで5年以上やってきたのに、未だに店員が怖い。「つけつゆください」と言って、猫ミームみたいに「はぁ?」と対応されてしまったら、、、と想像してしまう。
でも、そろそろこういうところでも大人にならないとまずいと思い、私はかなり緊張しつつ厨房のほうへ行った。

「すいません、大盛り頼んだんですけど、つけつゆのおかわりってもらえたりしますか?」

多分、こんなへりくだりまくりの日本語だったと思う。
書いてて情けない。弱弱しさが充満している。
丁寧というより、店員にびびっている日本語。

店員はとても優しかった。
「できますよ、つゆの器持ってきてもらえればつぎ足しますんで」


「え、なにこれ、めっちゃやさしいんやけど!!!」

と驚嘆しながら
「あ、ありがとうございます!」
と言い、つぎ足してもらった。

なんかひと皮むけた気がした。
やっとちょっと大人になれた気がした。

ルールや義務が明確になっていないことをお願いする。
というのを極端に避けてきていたのだろう。

仕事であれば仕事という大前提の上で何もかも行動するので、割とコミュニケーションをするかしないかで迷うことはない。

でも、休日の場合はそういう前提が存在せず「ただの人」になるのでただの人として人に何かをお願いすることに慣れていなさすぎて困惑する。

コーヒー豆屋や楽器屋なら自分の守備範囲もあるので、割と自然に話せるが、そうじゃない普通の場所で普通に人に何かお願いすると緊張する。

話が大きくなってしまったけど、ちょっとしたことでも変に自分で完結させようとし過ぎず、頼めそうなことは頼んだほうが、自然な気がした。

気を遣いすぎているのか、卑屈なのか、プライド高いのか、コミュ力が低いのか、人見知りなのか、そもそも他人に自分の声を聞かれるのが嫌とか
色々複合的な理由はあるが、全部ガチガチで構えて生きなくても、そこまで人は冷たくない。という認識にようやく変わってこれた。
間違えて大盛りボタンを押してよかった。


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