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君たちは…を観てきた

一昨日から公開された宮崎駿の最新の映画を観てきた。

途中から展開を飲み込めていない自分がいたので、ここで感想を書いたとしてもネタバレすることはないと思う。

とはいえ、観て気づいた点を語っているので、これから観に行こうと思っている方が読むのはあまりおすすめしない。観てきた人が自分の抱いた感想との違いを比べたりするのにはよいと思う。
 







数時間前に見てきたので、まだまとまっておらず、非常にざっくりした感想になるが、去年の公開されていた新海誠の「すずめの戸締り」に似ている箇所が色々あり、意識して作っているような気がした。
世界と世界を繋ぐドアや星空の見える丘、風の音、家の中にある生活感。主人公の母親不在の空白感。
ジブリ映画はいつも背景や家の中の雰囲気が丁寧に書かれているが、今回も健在で、キャラクターの派手なアクションより背景に重きを置いている気がした。

その落ち着き感がハウルの動く城の時の背景にどこか似ている気がした。あと、声優にハウルと同じ木村拓哉がいたからそう感じたのかもしれない。

今までの宮崎映画のオマージュでもありつつ、庵野秀明のエヴァンゲリオンを微妙に意識しているように思えなくもないCGの使い方をしている場面もあったように感じた。

ラピュタやポニョの時みたいなアグレッシブなアクションは控えめで、多分本人の年齢的に作業量を少なくしているからだと思うが、他の人に色々任せながら作っている感じがした。

序盤の日本家屋の背景は蛍の墓の背景に似ていた。
空中に浮かぶ庭つきの家はラピュタのオープニングに映る家に似ていた。
主人公は風立ちぬの堀越次郎とポニョの宗助に似ていた。
主人公の頭の傷跡の模様はもののけ姫のアシタカが負った腕の傷の模様に似ていた。
劇中に映る夏雲っぽいもこもこした雲と青々とした空は風立ちぬの軽井沢の場面の空の色に似ている。
寝ている人の周りで舞っていた大量の白いお札みたいな紙は千と千尋の時の飛んでくる紙に似ていたし、どこかエヴァンゲリオンの使徒っぽい感じもした。
魚などの生き物の質感がポニョの頃のゼリーみたいなぐにゃぐにゃした感じで描かれていた。

このように、まだまだ探せばたくさんあると思うが、色々な角度から膨大な数のセルフオマージュを楽しんで作っているように見えた。
セルフカバーベストアルバムみたいな感じで、シーンとシーンの継ぎ目が少し荒いが、本人も分かってわざとやっている感があった。

トトロやラピュタ、ナウシカの頃みたいな子供が見ても一発で楽しめるものというよりは、メタファーの連続で噛めば噛むほど味が出るような作品の気がする。
あと、風立ちぬの時までは女性を宮崎駿が本気の本気で描いている場面があったが、今回は距離を置いている感じがした。

風立ちぬの直子の花嫁姿や、トトロの入院しているお母さんの笑顔や、ラピュタのドーラがハムを食いちぎる様や、魔女の宅急便のキキが疲れてベッドに倒れ込む瞬間など、圧倒的に「これ!!」という確信的なカットがあったのだが、今回は何故かそういう印象が少なかった。

多分、というかおそらくこれが最後の作品になる可能性が高いことをかなり自覚したうえで作っていると思う。もし本当にそうだとしたら、「もう執着しなくていいんだ」という安らぎがあったのかもしれない。分からないけど、なんとなくそんな気がする。

象徴的だったのはものすごく適当に描かれたパンかなと思った。
ジブリ映画といえば、ジブリ飯という言葉があるくらいいつも食べ物がおいしそうに描かれているが、今回登場した謎のパンに謎のチーズかバターみたいなのを塗りたくり、適当に大量のジャムを塗りたくっていた。もはや確信犯としか思えなかった。
そのパンを主人公がベタベタにがむしゃらに食べ、目の前に座っていたのが、物語上かなり重要な女性であったにも関わらず、パンそのものとその食べ方が異様に適当であることには意味があるとしか思えない。


どういう話だったのか?と聞かれると上手く説明できないが、なんとなく宮崎駿はこれを作って大分すっきりしたのではないかと思う。
もののけ姫みたいなこれからどうなっていくか本人にも分からないギラギラした感じはなく、本人の中でもう折り合いがついた「母」というテーマを今までの作品のオマージュを混ぜつつ作品にした。そんな作品な気がした。面白かった。



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