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#7 台北カフェ① 木柵路的「TAIGA」

初めて乗るバスはワクワクする たとえ目的地が初めてじゃないとしても ルートが違うだけで新鮮な気持ちになれる

この日はスッキリとした秋晴れ
少し歩けば軽く汗ばむほどだ

昼休みの学生たちの間をすり抜けるようにして歩き 普段は使わない学生寮前のバス停で待機する

5分ほどでバスが姿を現したので 本当にこの系統で合ってるよな?と念の為自問しつつも手を挙げた 台湾ではバスもタクシー同様 手を挙げて止めなければならない

客がいるはずないと思ったのかバスは通り過ぎそうな勢いで入ってきて 慌ててもう一度手を挙げた
少し先で停車されたバスに乗り込む ガラガラの車内の座席は選び放題だった
陽当たりを少し気にして日陰になる方に腰を下ろした


辛亥路という名の広々とした道路を進み まもなくトンネルに進入した このトンネルの向こう側の街に行くのはかなり久しぶりだ
生活圏からさほど遠くないが用事以外でその方面に行くことは少ない だから毎回そちらに行く時は心が踊る
なぜだろう言葉にできないが おそらくわたしはこのトンネルの向こう側の街が好きなんだと思う


時々現在地を地図で確認しながら降りるバス停までの時間を気にした

20分程で目的地に近いバス停に着いた

降りたって何食わぬ顔で次の進路をとらえて歩き出した
まるでこの辺慣れてますよみたいな顔して こういう顔をするのは割と得意な方だと思う

歩いているうちにちょっと不安になってきて もう一度地図で住所を確認した

もう少し先か
と思いながら歩き続けていたら一瞬通り過ぎていた

お、ここか
と思って数歩戻る 防疫期間の実名制ルールにのっとり きちんと入り口でQRコードを読み取る 画面を切り替えメッセージでこの店に入店することを疾病管理センターに報告した

少し高い位置に付けられたドアノブに触れてゆっくりと店内に入った

細長い造りのせいか1階はレジカウンターとキッチン専用になっているようだ

先にここで注文を済ませてから席に通してもらえるシステムらしい
台湾では先払いというシステムがわりと多い

メニューを詳細に見ることはしなかった
ブランチセットを食べる と前日の夜から決めていたのだから

組み合わせをどうするかだけ少し迷ったのだが
トリュフ塩で炒めたマッシュルーム
オイルドレッシングのサラダ
グルテンフリーのパンにチーズクリーム
そしてホットコーヒーというセットにした


会計を済ませると2階に通された

ゆったりとしたカフェスタイルというよりは整然と並べられたテーブルから食事を楽しんでもらいたいというコンセプトがみてとれた


細く急な階段のあるこの店の造りは子連れには向かないなぁと思っていると
後から3歳前後の男の子を連れた阿嬤がやってきた *ここでいう「阿嬤」は男の子のおばあちゃんのこと

スタッフが慣れた手つきで奥から持ち出したのはオシャレなキッズチェアだった

え!あるの?!

さすが台湾 とこんな時よく思う

絶対子どもNGでしょ!みたいなお店で当たり前のようにキッズチェアが出てくる


あとから気づいたが あの男の子はどうやら老闆(店主)の子供らしい  お昼におばあちゃんが親の元でご飯を食べさせに連れてきていたようだ


老闆に小さな子供がいるからキッズチェアを置いている なんていうのも結構あるあるな気がする


こんなことをつらつらと考えていると華やかなプレートが運ばれてきた
マッシュルーム炒めは正直色合いを心配していたが パプリカも一緒に炒められていてその心配は無駄に終わった

フルーツが豊富な台湾ではサラダにフルーツが入ることも多く このプレートのサラダにもリンゴが散りばめられていた

家でやることはないんだけど カフェでこうして出てくるフルーツ入りサラダは結構好きだったりする


細長く持ちやすいフォークとナイフを使ってプレートを楽しんだ

自家製らしいチーズクリームはマーマレードのような風味もしてただのチーズではなかった

なんども舌で味わってみたけど結局何が入っているかわからなかった
そして、そもそも自分が味に鈍感なんだよなってことを思い出して 意味のないことをしたなと思った


コーヒーのタイミングは特に聞かれなかったので何も言わなかったけど プレートが出てきてわりとすぐにスタッフが持ってきてくれた

コーヒーは食後派なので飲むのはまだ先だけど 先に持ってきてもらえるのはありがたい

なぜかといえば わたしはガッツリ猫舌だからだ

冷めたら酸味が増してしまうコーヒーが多いので コーヒー好きとはいえお店でコーヒーを飲む時は毎度時間と温度そして味のバランスをとるのが難しい

幸いコーヒーの量は多くなかったから 少し冷めて酸味がキツくなっても飲みきれなくない


猫舌である自分のコーヒーの飲み方をこうして文字にしてみると コーヒーが好きなのに コーヒーを楽しむのに毎回必死になってる自分がアホらしく思える しかも絶対ホットにするんだから呆れる

しかしこの矛盾している生き方がなんともわたしらしいとも思うのだ


すっかり冷めきった残りのコーヒーを飲み干して静かに席を立った 下に降りて帰り際にちょっぴり勇気を出してスタッフに声をかける

この店の名前の意味は何かと 「TAIGA」という店の名前が気になっていたからだ

日本語の大河をイメージしていたのだけど 答えは英語 元をたどればロシア語だが「針葉樹林」の意味だ 言われてからショップカードに針葉樹のデザインがあったことに気づいた 彼女らは作業中だったのでなぜ針葉樹林なのかというところまで聞くのは諦めて店をでた

それでも自分から気になったことを聞きにいけるようになったことが嬉しい 


それはまさにこの日の空 気分も秋晴れのようにスッキリとした午後だった




*登場した中国語*

木柵路 Mù zhà lù ㄇㄨˋ ㄓㄚˋ ㄌㄨˋ

辛亥路 xīn hài lù ㄒㄧㄣ ㄏㄞˋㄌㄨˋ

阿嬤 a mà ㄚ ㄇㄚˋ

老闆 lǎo bǎn ㄌㄠˇ ㄅㄢˇ


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