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「寝ながら学べる構造主義」読書会に参加して

内田樹の「寝ながら学べる構造主義」についてのさくら里BookCafe読書会に参加しました。読書会といってもオンラインで21時スタート。ご飯を食べた後に、お茶とミカンを頬張りながら炬燵で参加という地方在住にもありがたいものでした。

オンラインの読書会の参加は3回目です。1度目は近所のどっぽ村の松本茂夫さんが主宰されている読書会、2回目は名古屋の猫町倶楽部の読書会で、両方ともカミュの「ペスト」でした。その時のペストについての感想はnoteに書きました。https://note.com/kankorya/n/n715a61c39f4f

さて、今回の「寝ながら学べる構造主義」昔読んだことがあり懐かしくて思わず参加申込をしてしまったのですが、本棚から探すところからはじまりました。ようやく見つけたその本は、以前読んだのが出版されて間もない20年近くも前でした。当時のマーカーや付箋が残っており、20年を経て読むと、それ以外のところでたくさん線を引く場所が出てくる出てくる。それは読書会に向けての読書ということもあったのですが、それを差し引いてもあまりあるたくさんの箇所でした。そして読むほどに気づかされたのは、ここに書かれていることが今の自分の考え方に少なからず影響を与えていることでした。

しかも、そのことについてはまさに文中で言及されていました。

125ページ
「テクストのほうが私たちを「そのテクストを読むことができる主体」へと形成していくのです。<中略>二度目に、私たちは一度目に読み飛ばしていた「意味」を発見することがあります。なぜ、最初は見落としたこの「意味」を私は発見できるのようになったのですしょう。しれは、その本を一度最後まで読んだせいで、私のものの見方に微妙な変化が生じたからです。」

構造主義とは私たちのものの見方、感じ方、考え方が、属しているある時代、ある地域、ある社会集団の条件により強く影響を受け、私たちは自律的な主体でありえず、その自由や自律性はかなり限定的であるという考え方です。

それはさらに世界の見え方は視点が異なれば違っていて、ほかの人よりも正しく世界が見えていると主張することは論理的に基礎づけられないということを教えてくれています。構造主義によりもたらされたこの「常識」が登録されたのは1960年代でなないかとこの本は指摘しています。

読書会では2つのグループに分かれて感想を言い合いました。最初に感想を求められてお話ししたのはまさに、この事象の多面的な見方についてでした。その時思いついた「尾崎豊の15の夜」と「昔の相撲」と「冬のビール」を切り口にお話ししました。

尾崎豊の15の夜は盗んだバイクで走りだします、そして自由になれた気がした15の夜と結びます。しかし、盗んだということは盗まれた側の視点というのもあるはずです。そのことをアンサーソングという形でネタで「59の夜」としてマキタスポーツが歌っています。盗まれた側の悲しみと悔しさ、そして自由じゃねえぞ犯罪だぞと結ばれます。同じ事象も見方によって変わる。私たちはこの視点を当たり前として享受していますが、これが1960年代以降に定着した常識だというのです。https://www.nicovideo.jp/watch/sm17848731

そしてもう一つが昔の相撲です。これは内田樹も参加している大滝詠一との会話「大滝詠一的2011part2」で語られています。http://www.radiodays.jp/item/show/200855
柏戸の取り組みだったはずということから昭和30~40年代のころでしょうか。判定の透明化をというGHQの指導により物言いの説明にマイクを使うようになったばかりの頃だそうで、説明の語法も確立されてなく、観客もどう聞いてよいのかわからなかったのか、西方の力士に軍配が上がりましたがの「が」を聞かずにワーッと盛り上がり、東方力の足が出たということもありでまたワーッと盛り上がり、でよく見たところに西方の勝ちですでまた盛り上がる。最後まで聞かずにそのたびに盛り上がる観客、いまと比べるとなんと素直といいますかそんな時代もあったのです。今とはかなり違っているのではないでしょうか。

そして、冬のビールです。これは割と最近の話で、冬にビールを飲むという習慣はここ30年ぐらいで普及したものでないかという実感があります。わざわざ冬に飲むビールということでサッポロ冬物語という銘柄のビールが登場したほどです。田島貴男と高野寛がCMで歌っていたのを覚えています。
https://www.youtube.com/watch?v=ImqzMoSX6Yo

事程左様に私たちの世界は変化をしており、カチッと固いものではなくかなり緩みがあるということに気づきます。この緩みというのをキーワードに社会学の視点から読み解いた筒井淳也さんの「社会を知るためには」という本があります。
https://amzn.to/39dxh4A

読書会の後半はこの変化が生成した現場をたどる「零度の探究」をキーワードに議論を進めました。ここでは中動態の話で盛り上がりました。しかしこれについてはまたの機会に。


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