1発目の直後にしゃがまなかった平和ボケ

ネトウヨに人気の櫻井よしこ氏が仰々しい見当違いを晒しているので反論。因みに、彼女はかつて石原慎太郎と一緒に体罰容認の主張を繰り返していた教育素人でもある。

>《安倍晋三元首相が暗殺された。暗殺犯よ、なぜ殺したのだ。現場にいた警護のプロフェッショナル達よ、なぜ一発目の襲撃で止められなかったのか。なぜ二発目を許したのか。》《これが日本か。その姿は日本国憲法前文と9条に重なる。》

独特の芝居染みた臭い台詞回しはさておき、確かにもっと監視の目を光らせておけば、「一発目の襲撃で」どころか「一発目の襲撃以前に」止められただろう。警備体制に落ち度があったのは否めない。

だが、1発目で安倍氏自身がその場で咄嗟にしゃがんでさえいれば、2発目は空を切っただけで終わったかも知れない。空気を揺さぶる異様な爆音に対して身を竦ませることもせず悠長に突っ立っていたから、2発目を諸に受けたのだ。
彼が当時、防弾チョッキを着用していなかったのも迂闊だった(尤も、あの弾道では致命傷は防げなかったかも知れない。結果論だが、振り向いたタイミングも角度も最悪で不運としか言いようがない)。
また別記事でも触れたように、そもそも相手方の素性や裏の顔など実態を良く調べもせずに(或いは本性を知った上で不都合な情報を切り捨て)極右カルトを称賛するなど、人付き合いに節操がなかったことも、余計な内患を誘致した。

つまり最も平和ボケして日本国憲法前文と9条を体現していたのは他ならぬ安倍氏自身だったのである。
政治も要人警護も結果責任。警備体制のみを論って緩み弛みがあったと批判するのは、片手落ちというものだろう。

遡れば、彼の危機意識や情報分析力の乏しさは2015年のエジプトでの演説内容にも表れていた。「テロリスト」と述べれば良い部分でわざわざISIL(イスラム国)を名指しして反感を買い、当時人質となっていた邦人2人が殺されたのだ(https://w.wiki/4ekJ)。
これも、自身の言動の影響力を顧みない彼の軽率・不注意が招いた災いの一事例である。

櫻井女史の「9条に重なる」は「警備体制に抜かりがあったのは平和ボケした憲法のせい」とも読めるが、憲法と事件に因果関係はない。仮に9条に自衛隊を明記したところで、警備員の動きが機敏になったり元自衛隊員が政治家を狙撃しなくなったりする訳ではない。
寧ろ、憲法の平和ボケ箇所を正せば「憲法が是正されたからもう安心」と却って油断や怠慢を招き兼ねない。「憲法が平和ボケしていて危ないから慎重の上にも慎重に」と言っている方が寧ろ安全なのだ。
9条否定論者はそこまで知恵が回らないので、「9条を変えれば解決」と短絡するのである。

二度とこのような事件を起こしたくなければ、何よりも教育を変える事だ。
諸問題の原因は全て無知。人々の無知が放置される原因は低水準教育。よって解決・未然防止に必要なのは適切十分な高水準教育。義務教育で哲学・心理学を教えないから、想像力・自制心・倫理観・論理的思考力・メディアリテラシー・問題解決力が低くなる。
教育の高水準化をなおざりにしているから、極右カルトやトンデモ右翼思想や「殺せば解決」というテロリズムに感化され傾倒する偽善者もいなくならないのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?