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東大生が1ヶ月バナナジュース専門店を経営してみた

こんにちは、東京大学工学部3年の伊延観司です。僕は9月から準備し10/7-11/9までの1ヶ月間で

自分でバナナジュース専門店を企画、準備、運営する

という奇妙な体験をしました。わかりやすく先に結果をいうと

28日間で771杯32万円の売り上げを達成しました。200kg近いバナナがジュースになりました。

終わってから少し時間は経ってしまいましたが自分の成功、失敗をnoteに書き出すことで初めて一体あのバナナは自分に何をもたらしたのかがわかるのかなと思いました。また、今回の件に関してたくさんの人が

「店長って何?」「一体どういう風の吹き回しだ?」「ボケかたの癖がすごい」「なぜバナナ?」「結局どうだったの?」

と疑問を持ったと思いますし、それに対しての自分の答えも時と場合によって変えてしまっていたのでここで改めて説明したいです。

・お店を開くに至る経緯

・OPENまで取り組んだこと

・営業中何をしてたか

・営業を終えての売り上げ、利益

・得られたこと、反省

の時系列で大きく分けて書くので気になる所を読んでみてください。


お店を開くに至る経緯

ここが最初にして最大の疑問だと思います。僕は大学2年の時に西荻窪の学習塾「walkway」にて塾講師のバイトを始めました。家が近く職場の雰囲気が自分にあっていたこともあり1年半もの間割と高頻度で働いていました。そこでは、学生講師にも各分野の責任を持たせているので長期的に指導計画を考える必要があり、何よりも自主性と結果が求められていました。

その自主性は指導時間内に限らず、塾のシステムの改善や生徒の個人的な問題とも向き合っている先生方もおられました。自分が理系でプログラミングをかじり始めていたこともあり、インターンとして生徒の自宅学習を支援するシステムを開発することになりました。ここまではまだバナナは1本も出てきません。

そんな中、walkwayが別事業として11月からトンカツ屋を始めるという話を聞きました(?)。かなり前から計画していたようで僕が知った時には、オープン予定日や場所などもすでに決まっていました。お店を借りたのが10月からで、オープン予定日までは1ヶ月ほどありました。そこで塾長に

「伊延くんカフェで働いてるんだから10月から1ヶ月間カフェ開いてみなよ」

と言われました。「え、めっちゃ楽しそう」とは思いましたがその時は半分冗談のように考えていました。自分でお店を開くって言っても何するの?許可は?時間は?お金は?などわからないことが多すぎて自分の中で、これはできない、と思い込んでいました。しかし、他の先生の絶対やってみるべきだ、という話を聞いたりしてるうちに、これはチャンスなんじゃないか?と考えるようになりました。楽しいことがしたい、とずっと思い続けてきて、それをこんな形で実現できる機会は滅多にないと思い本気で1ヶ月間やってみることに決めました。自分の中で決断できたのが9/7で、ちょうどオープンまで1ヶ月しかありませんでした。



OPENまで取り組んだこと

 そもそも僕が少しカフェで働いていたことからお店はコーヒーをメインとしたくつろげるカフェにすることを想定していました。その上で目的を明確に定めました。

目的:女子大生が学校帰りに集まれるカフェを作り、店舗の知名度を上げてとんかつ屋のPRを行う

客層を女子大生に絞ったのは3つ理由があり、

①西荻窪が東京女子大学の最寄りであり中央線沿いに多くの大学が存在する

②運営側が大学生(東大生)という点で相性が良い 

③西荻窪には昔ながらの店が多く短期間で地元の人の人気を得るのは難しい

と考えたからです。

 そしてその目的を達成するためにどうすれば女子大生がお店に来てくれるのか、を考えました。当初は東大生を武器にしてPRする案もありましたが、自分の今までの経験から、0から行動を生み出すほどのものではないかなと思い、やはり飲食店として、「これを目当てで来た!」という目玉商品を用意する必要があると考えました。

目玉商品を作る

 コーヒーを軸として考えていたため、カフェや塾の先輩からお店を教えてもらい都内の様々なコーヒー専門店に行きました。お店の方ともお話ししてコーヒーについて勉強し、そのお店の方からまたオススメのお店を教えてもらい飲みに行って話を聞く、、という具合にバンバン行ってバンバン飲みました。コーヒーに携わる方々はそれぞれ独自の視点と表現力を持っておられコーヒーへの愛が強かったです。話を聞けば聞くほど自分が店を持つために学ぶべき知識、必要な経験や道具の圧倒的な量がわかり、準備期間3週間で、コーヒーを目玉商品として出せるようなレベルにまで達するのは不可能だと思いました。

同時に今世の中で流行っているものを友達に聞いたりSNSを通じて探していました。その中で、今はバナナジュースのブームがきている、という話を耳にしました。調べてみると、テレビでバナナジュース専門店が取り上げられていわゆるバズり始めていることがわかりました。すぐにネットで見つけた都内のバナナジュース専門店全て(7個くらい)に足を運び,お店の雰囲気やメニューの作り方を調査しました。流行っているという理由以外で最終的にバナナジュース専門店に決定したのはいくつか理由があります。

①材料がバナナと牛乳だけなので考える要素が少なく済む

②冷凍保存なのでロスが少なく食中毒などの問題が起こりにくい

③自宅に業務用ミキサーがあった

④トッピングで個性を出すことができる

この時点でバナナジュース一本の方が売れると思い、コーヒーを諦めました。

それからはひたすら家で試作を重ねました。何よりこの時点で9/20だったので本当に時間がなく、ネットの様々なレシピを試しノートに記録し改善していきました。

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     バナナ開き


飲食店営業許可

 これが相当の鬼門で最後まで僕が本当にお店を開けるのか?と自信がなかった原因です。飲食店開業book!みたいなものを立ち読みするとどれも、「1ヶ月前に取得しておくこと‼︎」と書かれており「いや店終わってもーてるやん」となっていました。本やネットでは話にならないと思い、無知の塊のままとりあえず保健所に行き全てを教えてもらいに行きました。こんな何にも知らない大学生が行ったところで怒られるだけやろうな…と思ってましたが、保健所の方は事情を話すと丁寧に申請のやり方や注意点を教えてくれました。営業許可取得は、事前相談→本申請→検査→取得、という流れなのですが通常2週間ほどを要します。僕が本申請したのはOPENの4日前だったのですが無理言ってOPENに間に合うように翌々日に検査に来てもらい無事許可をいただくことができました。

仕入れ

 利益を上げることが目標なので売り上げUPと同じくらい原価を抑えることは重要でした。必要なものをリストアップしてそれぞれの値段を調べました。もちろん安い方がいいのですが、僕の短期間低予算営業の場合、質が悪い使えないものを買ってしまう or 安定に供給されず販売できなくなる、ことによる損害はかなり大きいものだと思ったのでカップやストローに関しては実際に合羽橋まで足を運び自分の目で選びました。大量買してから遠い駅まで歩くのはとりあえず苦行でした。 

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ちょうどこの時期に価格設定をしました


広告・デザイン

 ターゲット層的に何なら味よりも大事だと思っていたところです。一番最初は僕がillustratorでロゴを作ったのですが常に美術成績5点満点中3だった僕が突如才能を開花させるわけもなく、目も当てられないものが生まれました。ダンスサークルの後輩に美大でグラフィックデザインを学んでいる子がいたので彼女にデザインしてもらい、シールにしてカップに貼り付けることにしました。可愛くもありオシャレでもある最高のロゴをデザインしてもらいました。

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この商品ならSNSで興味を惹きつけることができると思いInstagramを開設しビジネスアカウントとしてお金を払って広告を出すことにしました。SNS担当も近くの大学生に対して大量のフォロー活動をしてくれてOPEN前から多くの方にお店を知っていただけました。

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従業員

 そもそも一人でずっとお店を回すつもりだったんですが、自分に足りない点を補ってほしかったし、多くの人と働く方がコミュニティが広くなり周知されやすくなると考えて、西荻窪にゆかりのあるサークルの人たちを中心に声をかけました。売上予測が全くできていなかったので最終的な利益を働いた時間に比例して分配するという方法を最初にお願いし、みんな快く了承してくれました。OPEN前々日に一同集い試作会を行い写真を撮ってもらい、内装を行いました。店内が可愛くなったことで一気にお店の質が上がった気がしてより一層やる気が高まりました。

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営業中何をしてたか

営業開始してから人が来ない時間帯は多くありました(授業も行かずに何をしているんだろうと途方に暮れていました)。友達にお店を任せている時も売り上げはスマホで見れるのですが人が来ていないときは不安で不安でしょうがなかったです。その間頑張っていたこととしては次の2つです。

①SNSの連続更新  ②キャンペーンの打ち出し 

SNSの更新は友達が巧みなコラージュ技術を用いて魅力的な作品をたくさん作ってくれたものを連投したり、通知が届き一番左上に表示され続けるから、という理由でインスタライブに初挑戦したりしました。非常にうっすいライブでしたが素通りした人たちに対しても効果が0ではなかったんじゃないかなと楽観的に捉えています。

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キャンペーンは、雨の日割り・SNS投稿割・学割・本日のトッピング割の4つを行いそれぞれに違った効果が見られました。

雨の日キャンペーンは言わずもがな雨の日の一人店番が将来を憂うほど辛かったからです。ところが雨の日に店に行くのが億劫になる、という影響は僕が思っていたより大きくトッピング無料ではその行動を変えることができませんでした。ずぶ濡れの中学生くらいの女の子が雨の日キャンペーンの画像を見せてきた時には思わずえ、なんで知ってるん?となったくらいです。

リピータを確保するために、SNS投稿してくれたら次回無料トッピング、というものを行いました。これの適用は体感として8割が友達だったかなと思います(笑)これは飲食店としてはよくないことなのかもしれません。けれども、友達が作っているという、商品価値として普通は下がるであろうものに何度も足を運んでお金を払って商品を買ってくれるのは本当に嬉しかったです。なので、それに対してトッピング無料という形で微力ながら感謝の気持ちを示すことができてむしろ満足感の方が大きいです。


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また、二週目以降勢いが減りだした女子大生から、客層を女子中高生に広げるために中高生割引を開始しました。ここで、安全性が疑われるんじゃね?という意見から隠していた、運営スタッフが全員学生で男子はみんな東大生であることをSNSで公表しました。東大の赤本を大量に持ってきてディスプレイに使用し、そこの勉強にお困りの学生さん、ちょっと勉強教えちゃりますよ!という我ながら恥ずかしいくらいにアピールしましたが、結局1回も教えませんでした。。中高生自体は友達の後輩やSNSのフォロー活動を通じて増えたというのと、赤本を置いたことで様々な客層のお客さんとの会話のきっかけ増えたことから結果的にはよかったかなと思います。ただ、東大生というブランドというかインパクトって以外に強かったですね。 もっと最初からごり押ししてもよかったのかなとも思います。

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主張の強い赤本達


もう1つの新たな客層として西荻窪の地域の方にも目を向けました。僕はもとからめちゃめちゃ美味い西荻窪のお店が大好きでよく食べに行っており、お近づきになりたいと思っていました。

そしてバナナジュースを手にした僕は、チラシを置いてもらってお店の常連さんに紹介してもらい、それをきっかけとして普段から抱いていたお店への愛を伝えることにしました。今まではただの客だった自分が突然お願いするというのはとても緊張しました(万が一激怒させたら2度と食べに来れないかもと思っていた)が、どこの人も快くOKしてくれて優しさが溢れました。中でもdeli cafe kikuさんにはバナナの仕入れに関して相談に乗ってもらい、ちょうど今までの仕入先が欠品になってアワアワしていた僕に対して地元の青果店の方をすぐ紹介してくれました。青果店の方もとても応援してくれて、若いのに頑張っているから、と高級バナナを好きな時に好きなだけ卸売市場から仕入れてきてくれることになり、さらにそれを原価で売ってくださったのです。結局100房くらい流してくださりバナナの仕入れに困ることがなくなりました。


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また、昼時(13-15時)の空いてる時間を有効活用したくて宅配サービスを始めました。お店の近くにはいるけど仕事があって営業時間内に寄れない、という層がいるのではと思い、サービス開始時に近くのお店のInstagramのアカウントに大量にDMを送りました。すると吉祥寺の居酒屋さんから声をかけていただき、その日の夕方にお店を他の人に任せて運びに行きました。道がわからず知らない真っ暗なビルに迷い込みエレベータに挟まれ警報がなったりしましたが、そのお店の方も応援してくださり、後日そこの常連の方が飲みにきてくださいました。ありがたや。


困ったことといえば10月は何より天気に振り回されました。営業開始して初めての連休が台風によって閉店せざるを得なくなり 次週以降の休日の対策を練ることが難しくなりました。過去10年の中でも10月の降水量が多く、前述した雨の日キャンペーンへとつながりました。

台風による閉店の影響や、スロースタートだった売上高を取り戻すために東女の文化祭がある11/9日まで営業を延長決定し、新たにInstagramで広告を出す事に決めました。

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11月は天気も回復し積極的な宣伝も行い比較的好調でplumは幕を閉じました。最後はただただ名残惜しかったんですが撤収作業を終えkikuさんのところに報告に行くと、お疲れ様!とビールをご馳走してもらい労ってくれました。暖かすぎて、西荻窪でこういう出会いができただけでもやってよかったな、とじんわりしました。

営業を終えての売り上げ、利益

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こちらが banana juice plum の10/7~11/9までの売上高です。当初予定していた客単価400 ✖︎ 800杯= 320000、は営業開始後に商品の値段を上げ、宅配料金の設定による単価のUpで771杯ながら達成することができました。短時間営業だった日曜日は基本的に売り上げは少なく、対策を早めに打てなかった10月終盤にはノルマの1万円の売り上げを下回る日が多くありました。様々なキャンペーンや広告の効果、それにラスト週ということもあり11月に入ってからはノルマをほとんどの日にちで達成できました。

なんというか、真面目に書いてきましたが、とにかく不確定要素が多く予測が困難でした。天気の影響やキャンペーン、広告の効果を正確に読み取れず、後手後手に回ってしまった感があります。

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上図が原価と売り上げをまとめた表です。バナナは原価で仕入れてもらったとはいえ最高級のものを仕入れており相当の値段(1杯あたり150円)がしました。その他の費用には試作や清掃用品、消耗品が含まれており1ヶ月で回収するには重かったです。原料費が売り上げの半分近くを占めており飲食店としてはかなり採算度外視レベルです。。ただ商品の売れ筋が不透明な中大量買によるロスのリスクは大きかったため、しょうがない判断だったところも多いと思います。


得られたこと、反省

まず冒頭で述べた目的「女子大生が学校帰りに集まれるカフェを作り、店舗の知名度を上げてとんかつ屋のPRを行う」はカフェ→バナナジュース専門店、という違いはあれども達成できたと思っています。

得られたことは2つあって、1つ目はプロジェクトを成功させるために細分化し(大きく分けて、商品開発、仕入れ、広告、認可)それぞれにおいて改善点はありつつも納得のいく結果を残せたという経験です。最初は大枠から考えていくことで抜け落ちがなく、大きなトラブルなどもなく終われました。

2つ目は、人って暖かいし優しいんじゃない?と思いました。この期間に今まで関わったことのないような人と多く関わりました。保健所、業務用バナナ販売業者、警察、西荻窪の飲食店、青果店などなど。それぞれの場所でみんな真剣に話を聞いてくれて対応してくれました。西荻窪の街が暖かいのはもちろんですが、頑張って挑戦している人に対して人は手を差し伸べてくれるんだ、と実感しました。人の暖かさはこれだけにとどまらず、わざわざ遠い中店に来てくれて飲んでくれた友達、そして楽しいからずっと働きたいと言ってくれあらゆることに相談に乗ってくれた従業員(友達)のみんな、そしてこの機会を与えてくだっさたwalkwayの方々に心から感謝を申し上げたいです。

お店が終わってしまって悲しいですが、場所さえあればすぐにでも開くことができるのでいつか機会があれば挑戦してみたいです。また、この経験を活かした新しい企画も考えたいです。とりあえず学校はしばらく行かないと大変です。

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