鉄男と母

前から気になっていた、田口トモロヲさんが主演の『鉄男』という白黒の映画を見ていた。
最初はホラーかなぁと思ったが、楽しそうな雰囲気が出てきたと思いきやバトルが始まったりと、何が何やらわからなかった。
しかし、なんだか引き込まれてしまった。おもしろい。

『鉄男』を楽しく視聴しながら晩ごはんを食べていると、母が帰ってきた。母は「BKB」「バイク川崎バイク」などと意味のわからない単語を連呼して、私に指を差してきた。
次に彼女は、トイレに駆け込んでゲボゲボッとして、号泣し始めた。ときどきツバ吐きも織り交ぜながら。しばしばハナもかんでいた。便座に殴打も少々。

もはや、『鉄男』が全然入ってこない。母がマジ泣きして荒れてるんだもん。30分以上経って映画が終了してもまだ泣いているが、心配というか、ドン引きである。混沌に混沌を掛け合わせると、逆に冷静になるのだった。

にわかに母は素に戻り「あー気持ち悪」と呟いた直後に、思い出したかのように再び泣きだした。
私は食器を片付けて、お風呂を洗うことにした。

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