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山あり谷ありモハメド・アリ

心の奥底にうっすらと苔のように拡がる貧乏性のために、お洒落な美容院の入り口でかっぱらってきたバナナと桃のミックスされた飴を食べずにおやつにとっておいた。

そんな私にとってのワンピース(ひとつなぎの財宝⭐︎)とも言えるその飴を、つい先ほど、大切にしてたものなんか初めから一つもなかったみたいにひょいと口に放り込んだ。そしたら、当前の結果としてバナナ&桃の味が口の中に広がっていった。

まぁ、そうか。
いや、普通に美味しいんだけど、一体何なんだこの組み合わせって思わなくもない。
なんか例えるならFNS歌謡祭かなんかで、玉置浩二と桜井和寿がコラボしてる感じ。どっちの味もが合わさらないままに、ただ一緒にそこに「ある」というだけだ。

ところでなんだか寝不足の私は、明るい場所で目を開けておく事が辛くてほとんど真っ暗な部屋で、床暖の上にぶっ倒れたまま日がな一日を過ごしてる。

きっと今日もなにもできないまま終了。

そんな確信を持って顔をあげれば、天井で豆電球の小さな灯りがオレンジ色に揺らめき、それは目を細めて見ればまさしく日本海にきらきら輝く夕陽のようで、飴を舐めることも忘れて私はそれをず〜っと眺めていた。
そうしたら、つるりんと透明な水みたいなヨダレが唇の端っこから溢れて、それは私の皮膚をつるつるすべって、UNIQLOで1990円で買った毛玉だらけのパジャマに吸収され、消滅した。

ああ、いつのまにこんなに馬鹿で弱い生き物になっちゃったんだろう私。10年前はもっとじゃりン子チエみたいに聡くて強い女の子だはずだ。クッソ〜と思いながらヨダレを手の甲でぐいっと拭き取って、ふと、窓ガラスの方へ目をやれば、窓の外には雪。
おいおい雪じゃん!興奮して犬っぽいなんかの生き物(でも犬だよね?)のぬいぐるみに抱き着いたら、そいつの鼻が私のおでこにヒット。

あーあー自分がださくて寂しくて愛おしくて笑いと涙が止まらないよ〜
ここにほんとうの犬がいたらいいのに。
自分のじゃなくて、犬のヨダレで顔をぐちょぐちゃにしたい。

しかし、いくら犬への愛情に飢えているからと言って、私はこの犬風のぬいぐるみに名前など与えてやらないと決めている。
ただの手触りの良い布と綿のかたまりだよこんなの。ただのかたまり。ただのかたまり。ぬいぐるみが一番かわいいシチュエーションって、ぬいぐるみのことそこまで愛してない(まあまあかわいいくらいには思ってる)人に雑に扱われてる状態だと思っている。それはビートたけしが言う、自分が芸人である以上一番おもしろいことはできない理論(フリが効いてないから)に似てるなといつも思う。

だからね、結局何が言いたいかっていうとぬいぐるみに名前なんて付けなくていーんですよ。だってもっと名前をつけるべきものは、他にあるはずでしょう?

好きな人にもらった花とか。

あるいは、

名前を考え直すべきものだって、
他にもっとあるはずでしょう?

例えば

『ひえぴた』と『熱冷まシ-ト』とか。

そりゃあ、そうだよね。今や様々な世界において技術は日進月歩なのだと言うし、これらの商品もそれはそれは画期的で素晴らしいものなんだろうけど、こんなカワイコぶっちゃって甘ったれた商品名では、その効力がどうにも薄ぼんやりとしていて判然としない。
ここはひとつ見ためにもエネルギ-が伝わりやすい名前を、と見兼ねた私は使命感に火を点して考えに考えを重ねた。言うなればその効力の証、力強さ、それらが込められた名前が必要だ。いま。いまこの時代に。

『布エルサ』

『冷却帝王』

『氷山一角』

『貼る南極大陸』

う〜ん。
かの夢の一大国家であらせられるディズニーはこういった権利関係に厳しいと聞くので、ここは収まりも良い『冷却帝王』でどうだろうと、私は1人まじめに結論付けた。
あとあれかな、無意味に特別な感じを演出するために末尾に「EX」とかもつけとこうかな。こういうのは「カルビ」と「上カルビ」みたいなもので、実際にはそこに大した違いはない。あくまで言ったもん勝ちの世界だ。

『冷却帝王EX』

なかなかいいんじゃないすか?

そんな相変わらずの私だけれど、あんなに力強く天を仰いで「すべてを捧げます」と神へ直接語りかけるように誓った明治のチョコレ-トを裏切り、つい、他社のチョコレ-トを食べてしまいました。今までにも、お土産用のものを一口二口つまんで食べたことはあるのだけれど、シルクの下触りがトロトロでなんとも美味しく、この手の有名お土産品でここまで美味しいのも珍しいといった具合に私の心を掴んで放さなかった一品、ロイズの生チョコ。いつの日か独り占めしてやると常々思っていたロイズの生チョコ。その夢が今、私の目の前に。

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