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How do I live on such a field?


夢のなかで、久々にゲームセンターに行った。

入り口の自動ドアが私を認識しなかったため、私は自動ドアにぶち当たった。気にせず、自動ドアをバリンとぶち破って入店した。

すると、それを見た小学生男児が爆笑している。

私は、子供の方へガラス片が飛んでいないことを視界の端で確認したあと、無視を決め込む。自動ドアのセンサーが悪いのであって、こちらに非はない。(はずである。)

中では、ガンディーの反戦演説みたいなものがリピート再生されていた。

非暴力、不服従、非暴力、不服従、非暴力、不服従、非ぼう力、不服従、非暴力ふ服従 ひぼう力 ふふく従 ひぼうりょく 不ふくじゅう ひぼうりょくふふくじゅうひぼうりょくふふくじゅうふぼうりょくひくふじゅうふふふりょくひぼうふふぼうひじゅうひふぼうりょくひひふじゅうふふふひぼうりょくひひくじゅうふくじゅうふひぼうりょふふ

繰り返されるあまり、ガンディーの強い意志が含まれた言葉は ゲシュタルト崩壊 した。

高尚でありがたいはずの御言葉が、コインゲームのコインがジャラジャラ落ちていく音と合わさり、重なり、単なる「音」として私の鼓膜を震わせる。なんかたぶん私が悪かったっぽいんで許してください、と思った。

私はできるかぎり平静を保ちながら「あいあむご~っずちゃああい このふぅはいした~」と大きな声で歌いはじめる。
困ったら鬼束ちひろの『月光』を歌えばOKなのです。

I am GOD'S CHILD(私は神の子供)
この腐敗した世界に堕とされた
How do I live on such a field?(こんな場所でどうやって生きろと言うの?)
こんなもののために生まれたんじゃない

ああなんか
本物の鬼束ちひろの声が聞こえてくる。

私は隣にいた子供のことをなぜか(友達)だと思い込んでしまい、「鬼束ちひろのコンプリートアルバムをBOOK OFFで買おうよ」と耳打ちをするのだが、案の定子供は「ぎ~~~~~~!!!!」と叫んだあと防犯ブザーの紐をひっぱって逃げていった。私は自分が小学校の不審者情報の一覧にのるのを想像して、崩れ落ちた。

そういえば昔付き合っていたひととBOOK OFFに行ったことがあり、私は子供のように男の後ろをついて歩いたが、レディースコミックのゾーンに近づくときだけなぜか恥ずかしくなってしまい、スッと離れて1人でプレステのゲームを見に行ったなあ。

プレステは持っていない。

私は プレステを持っていない。

私とコインゲームにいそしむ老人以外
誰もいなくなったその場には、
防犯ブザーの音とクレーンゲームから
流れるチープで陽気な音楽だけが響き渡る。

私は、ポケットに入っていた100円でクレーンゲームに挑戦する。

ピカチュウのぬいぐるみを
ガッチリと掴み穴に落とし込んだが、
取り出し口から出てきたのは
東海林さだお著「トンカツの丸かじり」
だった。

「どゆこと??」

混乱を極める私の耳に、コインゲームをしている老人たちの声が届く。

「え、それってDance Dance Revolution(ダンスダンスレボリューション)でしょう?」
「ええそうなんです。と言っても、和訳すると『踊り踊り革命』なんだけどね(笑)」
「ははっ、ですよね~(笑)」

私は意味の分からなさに泣きそうになっていた。


この世には存在しないゲームセンターの夢から起きると、私のiPhoneからは鬼束ちひろの『月光』が流れていた。私は、寝ぼけた頭で、小学校の不審者情報に自分が載るのをもう一度想像して、笑った。

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