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記憶の中の同心円

一時期、枯山水キットを欲しいと思ったことがあります。枯山水キットとは、机上で手軽に枯山水を楽しめる模型の一式です。
枯山水キットで検索しても、各種さまざまな商品がでてきますが、参考までに画像を一枚添付します。

ミニチュア枯山水専門店-zengarden
ホームページより

禅の庭ともいわれる枯山水を手軽に飾って、日々、砂に模様を描けるなんて……と、憧れましたが、飾り棚のスペースの関係上、欲しい気持ちをぐっと封印。禅における書画の一つ「円相」とよばれる毛筆画へと興味をもっていきました。

一筆で円を描く「円相」です。
丸を一筆で描き、
その解釈は見る人に任されます。
(コピー元:イラストAC)

そして、意気揚々と100均の文具コーナーへ書道セットの下見に行き、その場で急きょ路線変更。手に入れたものが写真の「くるくる定規」と呼ばれる玩具です。これでくるくる円を描いているうちに、無心の境地に立てそうな気がしてムクムクと欲しくなりました。

もし使わなくなっても、ハサミやスティックのり、カッターや付箋などを入れる文具箱に入れれば邪魔にならないし、箱を開けたときに気が向いたらまた遊べばいい……。そう自分に言い聞かせて。

ちなみに、このくるくる定規の発祥元はスピログラフといいます。

・スピログラフ(英: Spirograph)は、曲線による幾何学模様を描くための定規の一種である。主に玩具店で販売されていることから玩具ともみなされている。
・1965年にイギリス人発明家のデニス・フィッシャーが考案したといわれ、商品化されたのは1966年のことである。

Wikipediaより抜粋
久しぶりに袋から取り出したら(左)、
久しぶりすぎてインクが出ず…。
形だけ描いてみました(右)。

インクがまだちゃんと出ていたころに5回ほど無心でくるくる遊びましたが、もっと満喫しておけば良かったと残念です。
下のイラストは、スピログラフで検索した際に「スピログラフで描かれた曲線の例」として挙げられていたものをお借りしました。

コピー元:Wikipedia

前置きが長くなりましたが、ここからがタイトルにそった本題です。

以前、行きつけの美容院でカットしてもらっている最中、担当の美容師さんが、「なぜか分からないんですけど、自分は小学校3年生の時のことを妙に覚えているんです」って話を口にして、びっくりしたことがあります。
というのも、まさに私もその一人で、私の場合は小学校4年生の時となりますが、その頃のことを妙にはっきり覚えているからです。

美容師さんと私はどちらかというと寡黙な間柄で、会話も当たり障りのないものがメインだったのに、この日はなにかの弾みで意気投合したとしか思えないような展開でした。

「私もです!けど、なんででしょうかねぇ」と自分に語るように呟くと、
「それは多分、自分の考えがしっかり出てくる時だからかもしれませんね。僕の場合、どういうわけか、弟の手をとってぐるんぐるんと遊んだこととか、そういうどうでもいいことをはっきり覚えています」と、美容師さんはしばし手を止め、鏡の中の私に向かってニッコリ二言ふたこと

「なるほどなぁ」と思いました。

ほんとうにどうでもいいようなことだけど、なぜか心に残っていること。
それが私の場合、小学校4年生の時期に集中していて、ほんとうに不思議なくらい、様々なことがくっきり記憶に残っています。

同心円もその一つで――。
国語の教科書で「味の広がり」を表すのに同心円が登場し、水たまりにできる波紋が同心円ということも知りました。

名前も知らずに眺めるのが好きだった”水たまりの輪っか”を同心円と呼ぶのだと、あわせて覚えたからなのでしょう。私にとって同心円は、水たまりにできては消えていく輪っかを眺めていた小さな自分を思い出させる言葉となりました。

そんな同心円の記憶が枯山水の模様につながり、それが冒頭の枯山水キットへの好奇心となり、めぐりめぐって同心円の思い出に戻ってきました。

おわりに

同心円を題材に何か書きたいと思いながらも内容がまとまらず、下書きのまま温めていましたが、ここ数日の間になんだか書けそうな気がして、思いつくままつらつらと書きはじめたら、想定外の締めくくりとなりました。
当初は、面影だとか思い出だとか、浮かんでは消える心模様を同心円にたとえる予定だったのですが……。

でも、これはこれでいいかな。
なんだか、そんなふうに思えてきました。
なので、明日の朝、もう一度読み直してそれで良かったら、気が変わらないうちにポチっと投稿ボタンをクリックしよう!
と、軽く意気込んだ静かな夜です。


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