ゲームシナリオの執筆ってパズルみたいなもん
こんにちは! かにまろです。
私はもともと趣味で小説や漫画を書いており、ゲーム会社に入社して主にシナリオプランナーとして働いてきました。
ゲームシナリオを構築していると、つくづく思います。
「小説や漫画を書くのとは全然違う」
「こりゃパズルみたいなもんだな」
これはこれで楽しいですし天職だと思っていますが、正直期待していたものとは全く違いました。
今回は、小説や漫画と何が違うのかを具体的に書いてみました。
私と同じように、小説や漫画を書くのが好きでゲームシナリオにも興味がある方が、思い描いている仕事とのギャップに幻滅し、それが悪い方向に働くことがないように……。
⚠️これはコンシューマーゲームのシナリオライティングの話です。
ゲームはシステムが第一
基本的に、ゲームにおいて重要なのはシナリオよりもシステムだと考えています。
『マリオブラザーズ』において重要なのは、ピーチを助ける物語ではなく横スクロールの戦闘がいかに楽しいか。『ピクミン』においては、星に帰る物語ではなくピクミンをやりくりして物を運ぶ遊び。『エルデンリング』においては、エルデの王になる物語ではなく敵とのシビアな戦い。
どれも、ユーザー体験として重要なのはシステムです。シナリオはそれを引き立て、要素をつなげ、ユーザーを誘導するための道具にすぎません。
もちろん、ビジュアルノベルやRPGのような、シナリオの役割が大きいゲームも多く存在します。ただし、それはシステムがそういう設計になっているからです。
主体はあくまでシステム。
シナリオはシステムの枠組みの中で、求められた役割を果たすことを求められています。
その制約の多さゆえに、私はゲームシナリオはパズルを組み立てるようなものだと考えています。
ゲームシナリオの自由度は、小説や漫画に比べたら無いも同然です。
『メテオス』のライターだったら
『テトリス』にシナリオはありません。
一方、似たゲームの『メテオス』には、各種設定があります。ただし、その設定をドラマティックに語るデモシーンがあるわけではありません。
仮に『メテオス』のシナリオライターとしてアサインされたら、こういった役割を求められます。
メテオスのグラフィックを特徴づけること
ブロックを揃えたときに行う演出の設定的な裏付けができる世界観
上から降ってくるブロックの設定的な裏付けができる世界観
などなど。
『メテオス』は最終的にSF的な世界観になっていますね。
シナリオライターがSFを好きでも嫌いでも、それがシステムにとって最適であればSF的な世界観にすべきです。
また、『メテオス』はシナリオ主体のゲームではありません。構築した世界観をデモシーンでお披露目する機会はありません。ライターに求められるのは、あくまでシステムを引き立てる世界観のみです。
『ペルソナ』のライターだったら
『ペルソナ』はゲームの面白さをかなりシナリオに依存しているので、ライターに求められる役割は非常に多くなります。それでも、ゲームシナリオである以上、システム側の制約はなくなりません。
『ペルソナ5』であれば……
舞台は渋谷
キャラクターは学生が主体であること
味方のキャラクター数は23人
キャラが持っているアビリティに納得感がある設定にすること
9つのダンジョンとボスの設定
クリア時間40~50時間
ランクアップイベントは10話構成……
などなど。
舞台設定等は、企画書作成の段階でライターが絡んでいれば意見を反映できるかもしれませんが、基本的には既に企画書に書かれているものの範囲内で組み立てることになります。味方の数は、システムや予算との調整が必要。味方のシステム的な能力に合わせて設定を作る。
決められた予算と話数の中で、キャラ設定を生かした、可能な限りドラマチックにすることがライターに求められます。
ピースの数と形は、おおむね決まっています。パズルを組み立て、足りない場所をどう埋めるか、組み立てたパズルを何色で塗るか。それが、ゲームシナリオのライターに求められる仕事です。
自由に書きたかったら同人誌で
面白いシナリオを自由に書きたかったら、同人誌で小説を書くべきです。
シナリオではなく、ゲーム全体を面白くするのがゲームシナリオライターの仕事です。
それを弁えて、ゲームシナリオライターは日々キリキリと働いています。
ゲームシナリオを書いてみたいという方々も、自分が作るのは小説ではなくゲームなのだと意識しておけると良いですね。
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