空を飛びながら、写真撮影したことはありますか?
パラグライダーで飛んでいると、フライトしながら写真や動画を撮影したい!と思うのは、自然な流れ。ところが、いざ自分で空撮しようとすると、意外と難しい。どんな機材を使えばいいか、どこにカメラを固定するか、パラグライダーを操作しながらどうやって機材をいじるか……事前準備は必須。準備しても、空中で想定通りの動きをできないこともしばしば。
いつも気さくな「ぴょん吉」さんは、地上でも、パラグライダーで飛んでいる時も、カメラと一緒。離陸場(テイクオフ)や着陸場(ランディング)はもちろん、フライトしながら上昇気流(サーマル)のなかで高度を上げるために旋回しているときも、チャンスがあればシャッターを切ります。
ぴょん吉さんがいるときにフライトすると、自分が飛んでる様子を撮影してもらえる事も! かっこよく撮影してもらった写真を見返すと、パラグライダーで飛ぶ楽しみが倍増です。いつもステキな写真をプレゼントしてくれるぴょん吉さんは、自然と、多くのパラフライヤーから慕われています。
そんなぴょん吉さんがパラグライダーを始めたのは1990年、彼が20代のとき。それから約30年経った今も、コンディションが良い日には足繁くパラグライダーエリアに通い、フライトと撮影を続けています。
彼が何を考えてパラグライダーを続けているのかを聞いて、文章にしておきたい!と取材企画「パラグライダーと私」を開始する時から、私は企んでいました。だって、30年ずっと同じ趣味に打ち込んでるんですよ。すごいというか、よく飽きないな(笑)というか……気になりませんか? 私はとても気になるので、根掘り葉掘り聞いてきました。(取材日:2021年3月)
(2015年8月、スイス・エンゲルベルクにて)
目の前に広がる景色はそのときだけの存在
はじめはハンディカム(手で持つタイプの小型ビデオカメラ)を右手にパラグライダーを左手に…つまり片手でパラグライダーを操作しながらビデオ撮影していたというぴょん吉さん。1993年にアクションカメラの先駆けともいえる小型カメラ「マメカム」が発売されると、ハンディカムを卒業して乗り換えました。「これをヘルメットにつけて撮影すれば、飛んでいる目線で映像が撮れる」と思って…と語ります。2021年の今、GoProをヘルメットに付けて撮影しているパラグライダーパイロットは少なくありませんが、その先駆け!? 写真撮影に移行してからも試行錯誤を重ねて、 現在は主にファインダー付きコンパクトデジカメを使っています。
(2015年8月、オーストリア・ケセンにて、旅先での出会い。
手前はぴょん吉さん。奥を飛ぶのは、ハングライダーの事故で大怪我した後にリハビリ復活し、車いす・アシストハーネスで空を飛んでいるという方)
週末フライヤーでも8時間飛べちゃった!
ぴょん吉さんは「風と友達になろう!」というタイトルでホームページを開設。気象情報リンク集や台湾フライトエリアガイドなどフライヤー向け情報に加えて、自身が使った機材の記録を「パラグライダー遍歴」として公開しています。
(2014年8月、スイス・アッペンツェルにて。雲の影が平原に映り込んで… どこかにアルプスの少女ハイジがいるかも?)
ただ漠然と飛ぶのではなく、自分の中で「こういうことをしたい」という目標を持って飛ぶ。記録を取り分析して、次に生かす。目標を達成したらまた次の目標を立てる……そのサイクルを回すことで、より長くより高く飛ぶことができるようになるんですね。
(2012年6月末、群馬にて。8時間以上のフライトを達成した日に撮影)
「良いサイクル」を回して達成。みなかみ発・谷川岳武尊山アウト&リターン
https://www.paraglidingforum.com/leonardo/flight/1149294
ぴょん吉さんは「谷川岳のほうに攻めた経験はあまりなかったけど、後半の武尊に行くのはそれ以前にもやったことがあった。失敗すると谷に降りて遭難するリスクもありますが、その日なら『できるだろう』と狙った」と飄々と語りますが、そのエリアの地図や当日の気象条件を把握していないと、フライトしながら計画のアップデートは出来ません。
一緒に飛んでいた仲間たちが「満足してランディング」した様子を見ながらも、自身は満足せずに飛び続ける。精神的余裕とハングリー精神が同居しているようです。
チャレンジしつつ、無理はしない。バランスを取りつつ、出来ることを広げていく。それが難しく、同時に面白いところなのでしょう。
(2015年5月、上州武尊山近くのたんばらスキー場上空で撮影。
谷川岳方面の山波を望んで)
仲間とともに限界にチャレンジ。オーストラリア・マニラでのクロスカントリーフライト
https://www.paraglidingforum.com/leonardo/flight/2255454
(2017年2月、オーストラリア・マニラにて)
王道はない。ライフスタイルに合わせて、無理なく楽しもう
飛ぶエリアにもよりますが、何もしないと10分程度で地上に降りるパラグライダー。平均フライト時間が1時間半というのは、驚異的なことです。ちなみにまだ初心者の私だと、平均フライト時間は20分くらい…💦
(2020年11月、鹿児島にて。
現地のカメラマンさん撮影。本記事の扉写真も同様)
編集後記
私にとってのぴょん吉さんの印象は「陽気で気さく、いつも楽しそうなパイロットさん」でした。夏はヨーロッパに行ってフライト三昧とか、飛びに行った台湾でスヌーピーのかわいいヘルメットを見つけたとか、楽しい話題が尽きないひとだなぁ…と。
でもあるとき、ふと不思議に思ったんです。ただ「楽しい」だけで、30年もパラグライダーを続けられるの?と。今回のインタビューはそんな疑問を払拭するにとどまらず、いつも楽しそうな彼が奥に持つ「熱さ」を垣間見る機会になりました。
今回うかがったお話のなかで、特に私の印象に残った部分は、こちら。
フライトデータなど「よいサイクルを回す」ための土台を構築して、「リスクとチャレンジのバランス」を取りつつ、自分が楽しむために写真撮影をして、仲間にそれをお裾分けして、自分もみんなもハッピーにしている。絶妙なバランス感覚だなぁ!と、原稿をまとめつつ感服でした。簡単に真似ることはできないけど、少しずつ技を盗ませてください、ぴょん吉師匠。
いつも色々な話を聞かせていただいていること、たくさんの写真を提供いただいていること、改めて感謝申し上げます♪
いただいた写真がどれも素敵なので、写真集も作成しました!