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カニを求めて徳之島 #1

歌に込められた呪いを断ち切るためのカニの歌が
徳之島にはあったという。

松山秀光さんや小川学夫さんという方々の資料によると
徳之島の母間という集落の方が
歌っていたという記録が残っている。

さらに先日喫茶店でばったり出会った友人より
「古い写真集で、徳之島の
カニが彫られている石の写真を見たことがある」
という情報も得たため
居ても立っても居られなくなって
唐突に徳之島行きを決めた。

徳之島には石に刻まれた線刻画が
島全体に点在して数カ所残っている。
奄美群島の他の島では聞かない文化で
非常に興味深い。

「カニが彫られた石」というキーワードから
線刻画に残っている図案を調べてみた。
線刻画には、舟と鏃の紋様がみられることが多い。

ところが、
1箇所、三京集落のの線刻画は、抽象的なデザインで
□四角の中に、✳︎縦横斜めの線が交差した線が描かれ
その横にはなんとなくカニのハサミっぽいような鏃のような
紋様がある図案を見つけた。

「戸森の線刻画調査報告書/天城町教育委員会」より

これかな?
と思って、友人に送ってみたが
「違う、もっと明らかにカニだ」という。
そして後日写真が送られてきた。

「松田幸治写真集」より「文/水野修」

すごい!
カニだ!
めちゃくちゃかっこいい!
うちの庭にも祀りたい!

この写真には、
写真が撮られた集落の場所とお宅の名前まで書かれている。
写真集は随分昔のもののようなので
今まだそのお屋敷にカニの屋敷神様が
祀られているのかどうかわからないが
これは訪ねてみるしかない。

添えられた説明の中には、
「南島では、蟹、蛇の脱皮、雛の孵化のことを
 スディルといい新しい生命の出現を意味するという」
と書かれていた。

やはりカニという生き物は
かつての島の人々にとっては
何か神聖な意味があったのだろう。
カニとは一体どんな存在だったのだろうか。

ちょうど夫の薫ちゃんは、
次の絵のために舟のことを調べていて、
舟が描かれている徳之島の線刻画を見たい
といっていたので
2人それぞれ調査のために
徳之島に旅にでることにした。

いつもは別の仕事で言っている徳之島、
カニのために行けるしあわせよ!



数日に1回
我が家の近くの古仁屋港から
徳之島の平土野港までフェリーが出ている。
徳之島まで約2時間、
あっという間に到着した。

徳之島について
チロルの麻婆丼で腹ごしらえをして
まずは、戸森の線刻画へ。

薫ちゃんが
フェリーで読んでいた線刻画の調査報告書から
いろいろ教えてくれる。 

第一の石に刻まれた船。強く太い線。どんな思いと共に刻まれたのか。

薫ちゃんによると
この船と鏃の図は、
島津藩の船が琉球王国侵略のために
徳之島にやってきた時の図ではなかろうか
という説もあるらしい。
(当時の徳之島は琉球王国の一部である)

大きな岩に刻まれた紋様たち。
今は観光しやすいように整備された場所だが
かつては山の中だったのではないだろうか。
目を閉じて想像してみる。
緑の鬱蒼としたかおり、
大きな岩の安心感
人々の祈りのような想い。

人は、文字として記録を残すことが難しい時に、
どうやってそれを残していくか。
「ひとつは絵、もうひとつは歌」
そんなふうに思われた。

次は、三京の線刻画へ。
こちらは人の頭くらいの小さめの石に刻まれている。
三京坊主さんという仏像の横に置かれていた。
(このnoteの表紙の写真が三京の線刻画の一部)

やっぱり
カニ目線で見るとカニに見えてくる。

三京坊主さま。手に持っている球が気になる。
和紙と鉛筆を文具屋さんで買って、拓本をとらせていただいた。

この石は、かつては山の頂上にあったそうな。
いったいどんな人が
どんな思いで刻んだものなのだろうか。

蚊がいっぱいで痒いので、
急いでご挨拶して三京を後にした。

最後に徳之島郷土資料館を訪ねてみた。
前もって、電話をしてカニのことを調べている旨
お伝えしていたら
担当のお兄さまが、いろいろ調べてくれていた。

付箋が挟まれた資料をどさっと出してきて
いろいろカニのことを教えてくれて、
コーフンと感激!

興味深かったのは
徳和瀬という集落では、
赤子の腹にカニを這わせ、
カニの向かった方角によって吉凶を占う
「ガニホーラン」というカニ占いがあったということ。
やはりカニは何かを知っている生き物なのだ。

あと、カニの歌を歌える人が
もう島にはいないのではないかと言う。
カニの歌は口説というメロディーにのせてうたうものなのだが
そもそも口説きを歌える人がもうほとんどいないそうである。

わたしは、
はぁみちゃ(方言で赤土という意味)という音楽ユニットをしている。
カニの歌の話を最初に知った時、
島の唄者や島唄に詳しいはぁみちゃメンバーに相談した。
口説のメロディーを教えてもらい、
みんなであーだこーだと蟹口説の歌詞をのせ、
こんなメロディーではないかと想定したものを
はぁみちゃで歌っている。

とても好きな歌になったのだが
実際はどんな歌だったのか知りたいし、
知っている人に聴いてもらいたい。

いろいろ資料も教えていただき
またカニ情報が有れば教えていただくお願いをして
資料館を後にした。

徳之島ではカニはやはり神聖な動物だったのだ。
カニのことをもっと知りたい。
味わいたい。
カニ衝動が溢れてくる。

宿に帰って、
「カニ占い」を検索したら
カメルーンのカニ占いがやたら出てくる。
カメルーンの呪術師がカニ占いをしているらしいのだ。
これはすごい!
カニの動きでいろいろ占うらしいのである。
やはりカニは知っているのだ!
この呪術師にとても親近感を覚えた。
これはカメルーンにも行かなければならない!

ネット検索で出てきたカメルーンのカニ占いの呪術師

我が家のカニでもカニ占いはできるだろうか。
【奄美のカニ占い師あおきさとみ】
ちょっと想像しておもしろかった。

ああ、奥深いカニの世界よ!

きょうはひとまずこれでおしまい。
カニのことに全力を注げて
しあわせないちにちでした。
カニサマカニガトウ。

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