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奄美の星空〜写真・アート〜展2023無事に終わりました!作品ふりかえり①

カニアーティストとして初の美術館展示
無事に終わりました。

・・・とここまで
ふりかえるつもりで書いたまま
もうひと月以上経ってしまった。

わたしは自分がやったことをすぐに忘れてしまうので
やったことを記録に残しておこうと
思いはじめたのはほんとにこの1、2年のことだ。

ひと月前のことでももう記憶が薄いが
ゆっくり思い出してみようと思う。

今回、まずは、自分のカニ活動を言葉ににすることに挑戦した。
なぜわたしがカニに魅かれるのか。
カニの活動にどんな想いをもっているのか。

「そんなの説明しなくても
 わかるひとにはわかるでしょ。
 言葉にしたら何かを失っちゃうんじゃない?」

わたしの中の
服のセンスが昭和っぽいキャリアウーマン風の女が
ハイヒールを履いた足を組み替え
会議室のテーブルをたたきながら
吐き捨てるようにいう。

わたしは、これまでの人生
言葉でわかりやすく説明することが
苦手というか嫌いで。
歌とか絵とか非言語の表現を言葉で説明するということに
強い抵抗感があった。

言葉は、
カタチにならない豊かなものを切り取り
ラベリングするものと感じていたし、
それによって切り捨てられるものの
悲しみを強く感じてしまいがちだった。

でも、気づいたのだ。
言葉にして伝えることは
せっかくこの世に生まれたものの命を、存在を、
大切にすることにもつながるのだと。

「何から何まで説明的になるのもどうかと思うけど
 わかるひとにはわかるでしょ、っていうのも傲慢じゃない?」

「せっかくこの世に生まれてきた大切なものなのですし
 ちゃんと名前をつけてその存在をご縁のある方に
 知ってもらいましょうよ。一度やってみてから
 考えるってのもいいもんですよ。」

会議室のテーブルを囲む
徹夜明けの女と
清潔感のあるスーツを着こなした男が
畳み掛けるように言った。

そんな会議が
わたしの中で行われ、
わたしは、自分の内にある想いを
なるべく切り取らないように
遠くならないように
でもなるべく伝わるように
言葉にすることに
挑戦してみた。

そうして数日間かけて
やっとできたのが
以下の文章であった。

カニは、波打ち際の生き物です。

かつて奄美には、自然や万物に霊的な力が働いているという信仰が
ありました。海の彼方は神々が住むあの世の領域、手前の集落は人
間の住むこの世の領域。海と陸の間に生きるカニは、あちらの世界
とこちらの世界を行き来する生き物と考えられます。

現代は、人々の暮らしが都市化され、目に見えるものばかりが重視
されるようになりました。人間がコントロールしやすいように自然
が造りなおされ、闇が排除され、奄美の森でもケンムンが生きられ
る場所が少なくなってきたようです。人の心の闇も行き場をなくし、
その歪みがさまざまな形で出てきているのが現代のように思えます。

そんな時代の中、ふと目の前を横切るカニたちが、なにか大切なこ
とを語りかけてくるように思えるのです。

 「人間が心豊かに生きるには、目に見えないものを受け入れる器
 が必要なのではないか。」

横歩きで、暗い穴に隠れ、月のリズムで生きる。命がけで脱皮して
成長する。そんなカニたちの小さな声に耳を澄まし表現をする。こ
の活動が、生き物としての人間を取り戻し、これからの時代をどう
生きるのか向き合う助けになるのではないかと予感しています。

                        2023年1月
                       あおきさとみ

わたしの中で
あたりまえに感じていたことを
言葉にしてみる作業は
まるで新生児にひかりを当てる儀式をしたようで
とても新鮮で清々しいものだった。

のちのちいろんな方にも
伝わってきたとフィードバックをいただき
苦手なことに挑戦して
言葉にしてよかったと思った。

言葉にすることは思ったより悪くない。
生まれてきたものの存在を
大切にすることを
忘れてはいけない。

わたしの展示コーナーは
この言葉からはじまる。

* * *

今日はここまで。
この調子で行くと長くなりそうだが仕方がない。
少しずつ作品を振り返っていこうと思います。

カニ!(荒木マサヒロさんに撮っていただいた搬入日の写真)

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