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故郷金沢で紐解かれた蟹紋様の謎

春に故郷金沢に帰った際、
母が大好きだという「中村記念美術館」にいってみた。

金沢の美術館といえば「21世紀美術館」だが、
人が多くて落ちつかない。
それに比べて「中村記念美術館」は静かでゆっくりできて、
お庭を見ながら350円でお抹茶とお菓子を楽しめる。

そう聞いて、
抹茶を飲みながらゆっくりしたいと思ったのだ。

「中村記念美術館」には、
お茶の道具が展示されている。

まずはゆっくり展示をみてみようと
展示室をまわっていたら
なんと蟹の紋様が出てきたのだ。
まさかここで蟹に出会えると思わずに来ているので
静かな展示室の中でひそやかに興奮する。

蟹の香合
※撮影OKなものだけ撮影しています。
香合の説明
蟹の鉄釜鐶
鉄釜鐶の説明

思えば、
我が家にあるお茶道具のセットについていた香合も
蟹の紋様だ。

茶道と蟹は何か関係があるに違いない。

興奮したわたしは
思わず入り口の受付にいたおねえさんのところに行って
「蟹の紋様にはどんな意味があるのですか?」と
尋ねてしまった。

おねえさんは、すこし戸惑いの色を浮かべながら
学芸員が今日はいないことと
電話をしてアポとって学芸員に聞きに来てくださいと
教えてくれた。

ぜひ、聞きにこよう!
また帰省する時のミッションができた。

帰宅してネット検索したところ
蟹と茶道に関するおもしろい情報がいろいろ出てきた。

足利義政さんが、慈照寺(京の銀閣寺だ!)の庭に唐銅のカニを景色として配置して、
その中のひとつを賜った武野紹鴎さんが、
茶道具の蓋置きとして使い始めたとか。
あと、カニは菊の花と合わせて還暦(華甲)の象徴であり
吉祥をあらわすとか。

以前、京都の知恩寺の骨董市に出かけたときに
やたらと蟹の文鎮のようなものを見かけたことを思い出した。
七種の蓋置と呼ばれるもののひとつに「蟹」があるそうである。
それは、もともとは筆架や文鎮だったものを蓋置にしたとか。
どうりで京都で蟹が出回っているはずだ。

さらにいろいろ芋づる式に検索していくと
蟹は中国では「横行君子(おうこうくんし)」と呼ばれ、
権力に抗って横に横に(我が道を)行く、
という意味合いをもっており、
文人の好む所となったとか。

台湾のある会社では
「横行天下」(『天下に横行する』、即ち『世界をのし歩く』)という社訓で
蟹の絵が社章になっているのだとか。

美術館にあった蟹の香合も中国で作られたものである。
中国では、蟹は文人に好まれるような
我が道をゆくかっこいい存在だったことが見えてきた。

いいではないか。
わたしも横歩きで
我が道をゆくぞ!

今回のことがきっかけで
文鎮や茶道具、着物など
文化的なもので蟹の紋様が使われる理由が
すこしだけみえてきた。

ざっとネット検索しただけでここまで調べられるなんて
便利な世の中になったものだ。
この辺りは、もう少しちゃんと出典などあたって勉強したい。

蟹は人間の暮らしの中の身近な存在であり
人は蟹にいろいろな要素をみていたのだ。

ますます蟹が愛おしくなった。

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