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蟹の よこ歩き①

「こんにちは。午後も頑張りましょう」
ある程度の家事も終わりノートパソコンの画面に出た文章を読む。
「特に頑張ることはないのだけど・・・」

何を書こうかと悩んでいた陽真里(ひまり)は、冷めたコーヒーをすすり
文章を書く気持ちも一気に無くなり、テーブルにあった雑誌の表紙を読む。
「頑張るあなたに、頑張らないメイク法!」
「頑張りすぎないコーディネイト!!」
「人気ユーチューバー1日ルーティン♪」という言葉が並ぶ。

頑張らなくてもいいとか、頑張るとかそういった言葉にさえ
置いてかれている私は一体何者なのか。
ぐるぐると思考が周り、頭が痛くなり雑誌を裏返す。

「僕と結婚してください」その言葉を受け
なんとなく、勤めていた会社を辞めて
専業主婦になり7年目。子どもを授かるわけでもなく
気づけば時間だけが経っていた。
友人たちは、仕事をバリバリして、子どもを出産したり
目まぐるしく前へ進んでとても眩しくあった。

どこか世界に置いてけぼりで、前へ進む人たちを見て
横歩きをしている感覚。まるで蟹にでもなったような。

ピースサインをして天井を見上げた。
少しシワが増えた手の甲。
このままでいいのか・・・悶々とし
文章を書こうとまたパソコンを開いた。

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短期連載/蟹の よこ歩き①
はじめます。よろしくお願いします。




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