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19.生と死

■生と死について、あなたの考えを述べなさい。



■生と死について(400字相当)

生と死と聞いて、わたしが思い浮かべるのは「生老病死」という四字熟語だ。もともとは仏教に由来する言葉で、生まれる、老いる、病む、死ぬことは、人間が思い通りにできない苦悩であるという意味らしい。ただ、この考えは現代医療には、そぐわないかもしれない。なぜなら現代医療は、これらの苦悩を少しでも減らすことを目的としているからだ。出生前診断では、生まれる前の胎児の健康状態を知ることができる。若返りのために美容整形が行なわれている。再生医療は病を克服するためのものだし、ターミナルケアは死への苦しみを緩和するのが目的だ。人間は、生と死を動物のようにありのままに受け入れるのではなく、そこにQOL(人生の質)を求める。そして、そうした医療行為のすべてに関わるのが看護師だ。人間らしい、尊厳のある生と死をサポートするのは大変な仕事だ。けれど、やりがいも大きいと、わたしは思う。(378字)

※ここではQOLを「生活の質」ではなく、「人生の質」と訳しました。

■生と死について(600字相当)

生と死と聞いて、わたしが思い浮かべるのは「生老病死」という四字熟語だ。もともとは仏教に由来する言葉で、生まれる、老いる、病む、死ぬことは、人間が思い通りにできない苦悩であるという意味らしい。ただ、この考えは現代医療には、そぐわないかもしれない。なぜなら現代医療は、これらの苦悩をありのままに受け入れるのではなく、少しでも減らすことを目的としているからだ。出生前診断では、生まれる前の胎児の健康状態を知ることができる。若返りのために美容整形が行なわれている。再生医療は病気やケガを克服するためのものだし、ターミナルケアは死への苦しみを緩和するのが目的だ。動物たちは、そうした医療行為をしないし、そもそもできはしない。彼らは生も死もありのままに受け入れる。象やチンパンジーは仲間の死に寄り添うと言われているが、エンゼルケア(保清などの死後ケア)まで行うのは人間だけだ。現代の医療は、患者のQOL(人生の質)だけでなく、QOD(死の質)も保とうとしている。そして、そうした医療行為のすべてに関わるのが看護師だ。人間らしい、尊厳のある生と死をサポートするのは大変な仕事だ。けれど、やりがいも大きいと、わたしは思う。(497字)

小論文弁当のレシピ
①生と死と聞いて思い出すのは、生老病死という言葉だ。②人間が思い通りにできない苦悩を意味しているが、その苦しみを少しでも減らそうと(コントロールしようと)しているのが現代医療だ。③動物はそうした行為をしないが、それこそが人間らしさであり、医療の理念ともなっている。④その理念を実践するのは大変だが、看護師としてのやりがいも感じる。

■別案:生と死について(600字相当)

生と死と聞いて、わたしが思い浮かべるのは「一期一会」という茶道の言葉だ。一期とは人が生まれてから死ぬまでのことで、一会とは出会いのことだ。茶席において、その出会いが一生に一度であるかのように相手を思いやることを意味している。わたしたちの生と死の間には、人生がある。そして、ケガをしても、病気になっても、その人の人生を思いやり、可能な限り豊かにしようというのが医療の基本理念だ。インフォームドコンセント再生医療も患者様のQOL(生活の質)を保ち、高めるためのものだ。ターミナルケアは、患者様のよりよいQOD(死の質)も目ざしている。これからも、わたしは看護師として、そうした医療行為において多くの患者様と出会うだろう。その人たちの生と死にも「一期一会」の精神をもって寄り添いたいというのは、甘すぎるかもしれない。現実には、きびしい言葉を浴びせる患者様がおられるし、言葉さえ発しない患者様だっておられる。それでも、その出会いを大切にし、相手を思いやることに、こだわりたい。そうすることで、患者様の生と死の質をわずかでも高めることができるはずだ。それは、看護師としてのわたし自身の人生の質を高めることにもつながっていくと思う。(505字)

※この解答例では、「患者」を「患者様」と表現しています。ネットで調べた限りでは、どちらの言い方でもよいようです。

小論文弁当のレシピ
①生と死と聞いて、わたしが思い出すのは一期一会という言葉だ。②相手を思いやることの大切さを表しているが、その心は医療の基本理念とも通じるものがある。③わたしは、看護師として、その理念を実践していきたい。④それはわたしの人生の質を高めることにもなるはずだ。

■生と死について(800字相当)

小学生の時、飼っていた二匹のハムスターの一方が死んだことがある。もちろん、わたしは悲しかったけれど、生き残った方は元気に動きまわっていた。そのハムスターは仲間が死にかけている時にも無関心だったから、わたしは子供心に動物と人間は死に対する態度が違うことを理解した。人間だったら、そばに具合の悪い人がいれば、心配して助けようとするはずだ。不幸にして亡くなった場合も、その死に寄り添おうするだろう。人間には、相手を思いやる心があるし、それが動物とは異なる人間らしさだ。そうした人間らしさは、現代医療の理念にもなっている。たとえばインフォームドコンセントセカンドオピニオンは、患者の主体性を尊重し、そのQOL(生活の質)を思いやった制度だ。ターミナルケアは、患者の人間らしい死のために行われる。今日、超高齢化社会を迎えているわが国は、やがて、これまでに経験したことのない多死社会を迎えるはずだ。わたしは看護師として、認知症の患者や尊厳死を望む患者など、これまで以上に様々な生と死に関わることになるだろう。その中には、いわゆる「下の世話」が必要な人もいるはずだ。自力で排泄し、その後始末もできることは、人間らしさの最後の砦だ。そうした患者と接する時も人間の尊厳を忘れず、やさしく、てきぱきと対応できる看護師でありたいと思う。わたしの看護の質が高まれば、患者の生と死の質をわずかでも高めることができるはずだ。(597字)

小論文弁当のレシピ
①子供の頃、飼っていたペットの一匹が死んだが、他のペットは特に悲しそうではなかった。②人間は動物と異なり、他者の死に寄り添おうとする。それが人間らしさだ。③そうした人間らしさは、医療の理念にも反映されている。③これからの多死社会において、わたしは看護師として、多くの死に向き合うことになるが、その人間としての理念を大切にしたい。

■別案:生と死について(800字相当)

先年、家の近所に住むお爺さんがかなりの高齢で亡くなられた。地域の活動に熱心だった方で、わたしが小学生の頃から児童の見守り運動をされていた。登下校の時間帯には横断歩道にいて、やさしく声かけしてくれたのを覚えている。その葬儀には、わたしの母が参列したが、帰ってくるなり、大往生だったそうよと言った。大往生とは、天寿を全うし、安らかに死ぬことだ。そのお爺さんは常々、そんなふうに世を去りたいと口にしていたらしい。だから、葬儀に重苦しい雰囲気はなく、ご遺族の表情にも暗さはなかったと母は言った。話を聞いて、わたしが思ったのは死には、それほど悲しくない死もあるということだ。本当に悲しいのは、若くして亡くなるとか、不慮の死だ。十分に生きていないのに命を奪われるのは、当人も無念だろうし、周りの人間も不幸にしてしまう。それに対し、充実した人生をおくり、死と向き合えた人の死は、どこか満ち足りている。わたしたちは死を避けられないが、死の質(QOD)を高めることはできるのかもしれない。そのためには、まず人生の質(QOL)を高めることが大切だと思う。人生を自分らしく、豊かに生きたと思える人は、その終焉においても、悔いが少ないはずだ。わたしもやがては年老い、死を迎える時がくるだろう。その時、葬儀に参列した人たちから、あの人は大往生だった言われるような人生をおくれたらいいと思う。(576字) 

※やや作文風です。文字数を増やしたいなら、末尾に以下の文章を足す。
そして、そんな人生をおくれる人を増やしたいし、それに貢献できるのが看護師という仕事だ。大げさな言い方をすれば、医療の目的とは大往生できる人を可能な限り増やすことではないだろうか。

※ここではQOLを「生活の質」ではなく、「人生の質」と訳しています。

小論文弁当のレシピ
①先年、知り合いのお爺さんが亡くなったが、大往生だった。②そのことを知ったわたしは、人間の死には悲しくない死もあると感じた。③その悲しくない死とは、人生の質(QOL)が保たれた死だ。④わたしも、そんなふうに豊かな人生をおくりたいと思う。


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