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【概念】ジョブ・クラフティング⑤~どのようにして測るか~


本日は、大好評(嘘)のジョブ・クラフティングシリーズ第5弾。
ジョブ・クラフティングの測り方について解説していきたいと思います。

前回はジョブ・クラフティングがどのような要素によって発動し、どのような効果を生み出すかについてお話しさせていただきました。
詳細は、以下の記事をご覧ください。


これまでのお話しは、Wrzesniewski & Dutton(2001)(レズネスキーとダットン)によって提唱されてきた枠組みで説明してきました。

2010年台前半からJC研究は増え始めております。その契機となったのが、ジョブ・クラフティングの尺度の開発であると言われております。
尺度とは、「物事を測定するための基準や物差し」のことを言います。
つまり、ジョブ・クラフティングを測定するための物差しができたということです。

補足ですが、研究には、質的研究と量的研究があります。質的研究とは、インタビューや自由記述などの本人の語りからデータを得る研究です。量的研究とは、アンケート調査(主には複数の選択肢から選ぶもの)によってデータを得る研究です。
そして、量的研究を行うためには、アンケートを作成する必要があり、尺度開発の研究というのも行われます。

ジョブ・クラフティングの尺度開発を行ったのが、Tims & Bakker(2012)という方です。
このジョブ・クラフティングの尺度開発によって、ジョブ・クラフティング研究は著しく増加していったと言われております。
そのジョブ・クラフティングの尺度の日本語版を開発した人がEguchi(2016)という日本人です。論文を以下に掲載しておきます。

日本語版のジョブ・クラフティング尺度を一部記載しますと、

「私は、自分の能力を伸ばすようにしている」
「私は、自分自身の専門性を高めようとしている」
「私は仕事で思考力が消耗しすぎないようにしている」
「私は、自分の仕事で感情的に張り詰めないように心がけている」
・・・

https://hp3.jp/tool/jcs

この他21項目で構成されております。
また、これらの尺度は「構造的な(仕事の)資源の向上」「妨害的な(仕事の)要求度の低減」「対人関係における(仕事の)資源の向上」「挑戦的な(仕事の)要求度の向上」の4つの因子で構成されております。

以前、Wrzesniewski & Dutton(2001)のジョブ・クラフティングの種類としては、「作業クラフティング」「関係性クラフティング」「認知的クラフティング」の3つの種類で構成されているというお話しをしましたが、Tims & Bakker(2012)の尺度では、4つの種類で構成されています。

そして、Tims & Bakker(2012)の尺度の4つの因子(種類)の語尾に注目すると、「仕事の資源」と「仕事の要求度」という2つの言葉がついていることがわかります。
これは、Tims & Bakker(2012)のジョブ・クラフティング尺度は、仕事の要求度ー資源モデル(JDーRモデル)がベースとなって作成されたものだからです。

よって、Wrzesniewski & Dutton(2001)の認知的クラフティングの要素が含まれておりません。
この尺度は、ジョブ・クラフティングを測る上で最も使用されている尺度ではあるのですが、認知的クラフティングを測ることができないことから、課題があるとも言われております。


本日は以上です。
概念を測定するということが、いかに難しいことかがお分かりいただけたでしょうか?
「モチベーション」や「やりがい」などの概念は日常的に使われている言葉ではあると思いますが、これらの概念をどのようにして測る?と言われると難しい問題になります。
何かの尺度を開発して、10点以上であれば、モチベーションが高いと言えるかどうかというのは非常に難しいからです。

このように人間の心理的な問題を測ろうとするためには、何らかの根拠が必要であり、その根拠となるのが、理論やモデルであったりします。
今回は、仕事の要求度ー資源モデルがベースとなって開発された、ジョブ・クラフティング尺度についてご紹介させていただきました。

尺度の全てを載せることは、著作権的によくなさそうな気がしたので、全ての項目にご興味がある方は上記の論文をご覧くださいませ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。



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