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「お坊さんらしくない」南直哉さんが新成人に伝えたい「親ガチャ」との付き合い方(No. 945)

 考える人 メールマガジン
 2022年1月13日号(No. 945)

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■南直哉「お坊さんらしく、ない。」(1/10)
九、「親ガチャ」をゆるせないか

昨年の流行語トップ10にランクインした「親ガチャ」。南直哉さんが仏教の観点から《「親ガチャ」という無常》について考えた、新成人に贈るメッセージ。

《我々は自分を自分で始めたのではない。そこに根拠も無い代わりに、責任も無いのだ。》

「考える人」と私(44) 金寿煥

 本年もよろしくお願いいたします。もう少し季刊誌時代の「考える人」を振り返っていこうと思います。
 2006年秋号の特集「家族が大事 イスラームのふつうの暮らし」は総計67ページに及ぶ力作で、見逃せない特集です。担当は、先輩編集者のSさんだったと記憶しているのですが、シリア、レバノン、エジプトに足を運び、ムスリム(イスラーム教徒)たちの生活、とりわけ家族についてレポートした特集です。
 なぜ家族に焦点をあてたのか? 特集のリード文を引用しましょう。

 世界にあまたの宗教あれども、神様が人間の家族について語っている宗教は、意外に多くありません。もちろん、夫婦は仲良くしなさい、子供は大切に育てなさい、親の面倒は老後に見てあげなさい、というような常識や規範はどの社会にもあります。(略)
 しかし、神様が人間に家族のあり方を直接呼びかけるような宗教は、やはり一神教だけではないでしょうか。(略)イスラーム教では聖典コーランや預言者ムハンマドの言行録であるハディースで、家族について事細かに述べています。このことからも、イスラーム教がいかに「家族」という最小の共同体を、深く考えているかがわかります。

 特に2001年以降、どうしても「テロ」「聖戦」「原理主義」といったイメージがつきまとうようになってしまったイスラーム諸国ですが、「異国情緒」でもなく、「文明の衝突」論といった理解でもない、彼らの「ふつうの暮らし」を、家族を軸にして見ていこう、という特集の意図が記されています。
 実際に誌面で取材者のSさんは、アレッポの貿易商の自宅に招かれて夕食を共にしたり、ベイルートでクリーニング店を営む社長のモスクへの礼拝に同行したり、公衆浴場「ハンマーム」を訪れたりと、彼らの生活ぶりをレポートしています。そこには、日本にいるとなかなか実感できない敬虔な信仰に裏打ちされた生活がある一方で、ダイエットのためにジムへ通ったり、子供たちの教育に力を入れたりと、日本でも馴染みのある光景も見受けられます。
 36ページに及びカラーグラビアも充実の内容で、モスクやバザール(市場)といった「公共建築」から、リビングや台所といった個人宅までが収められています。
 そして、2006年5月の取材・撮影という時間も、本特集の貴重さを示しています。取材の2か月後、2006年7月には、レバノン国内のシーア派組織ヒズボラがイスラエル兵を拉致したことに対する報復として、イスラエル軍がレバノンを空襲。地上部隊も侵攻するなど、大規模な軍事行動が起こりました。
 そしてシリアです。ご存じのように、2011年頃から内戦が激化、アサド大統領が率いる政府軍と反政府軍の争いにイスラーム国が加わる三つ巴の戦いとなり、今もなお内情は混乱を極めています。
 旧市街全体が「世界遺産」に登録され、「世界最古の都市」の一つとしても挙げられるアレッポは今も内戦の爪痕を大きく残しているはずです。はたして、特集のグラビアに収められたアレッポの風景は、どこまで残っているのか――それを考えると、この特集がいかに貴重なものであるかを痛感させられます。

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