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まさか自分がアンパンマンワールドに対する脅威になるとは思わなかった

アンパンマンポテトという食べ物をみなさんはご存知でしょうか。
アンパンマンワールドの住人たちの顔の形をした、 なんとも可愛らしいひと口サイズのポテトです。 子供のころのお弁当の定番として鎮座しているこちらの食べ物を、誰でも一度は食べたことがあるのではないかと思います。 僕もきっと、昔に食べているはずです。こういうものはパッケージを見るだけでも「懐かしい〜」と思っちゃいますよね。

先日、お仕事を頑張ったご褒美として、あるものをいただきました。
そう、お給料です。嬉しいですよね。
少しばかりのまとまったお金をいただきました。月一のイベントの中でも、給料日が一番好きだという声も多いようです。
「お給料が入ったから、欲しかったアレを買っちゃおう!」と、まずはご褒美に使う人も多いことでしょう。

お給料が手に入った僕は、ある薬局内をふらふらしていたところ、あるものに出会いました。 それが、僕とアンパンマンポテトとの『再会』です。
また、会えるんですよね。ふとしたきっかけで。

懐かしさも相まって、久しぶりにアンパンマンポテトを食べたくなり、もらったばかりのお給料で購入しました。 新たな肩書きとして『お給料のご褒美にアンパンマンポテトを買った男』を手に入れました。

気づけば自分で、アンパンマンポテトを買ったことはありませんでした。
お弁当に入っていたということは当然、これまでは親が購入していたことになります。アンパンマンポテトを親に買ってもらうか、自分のお金で買うか、この辺が子供と大人の境目としてありそうですね。成人式の日には親に感謝すると同時に、振袖のまま薬局に行き、アンパンマンポテトを買うのが良さそうです。

アンパンマンポテト(略:アンポテ)と共に帰宅した僕は、早速調理に取り掛かりました。 作り方は袋の裏に書いていたのですが、 「わし、大人ぞ?」という気持ちから「見ないでも作れるだろ」と思いました。

そして、うちには冷凍設備がないため、一回の食事で完食しなければなりません。 大人買いからの大人食いです。 子供の頃からの胃袋の成長具合を、アンポテに見せつけてやりましょう。

フライパンにサラダ油を引き、さっそく袋の中のアンポテを全て出しました。
内容量が想像の2倍はあってウケましたが、無事調理スタートです。

火にかけ始められて安心した僕は、タブレットでYouTubeを見始めました。 「面白いなぁ〜」と思いながら見ていたら、ガスコンロの方から「ピピッ」という音が聞こえてきました。これはガスコンロからの『焦げてますよ!』の警告音です。ここで調理中であったことを思い出した僕はフライパンを覗き込むと、表面8割くらい焦げたアンポテがそこにはありました。

なんということでしょう。 28年間生きてきて、アンポテも一人で作れないとは。 親の背中はいつまでも越えられないということでしょうか。

焦げたポテトをフライパンから剥がす時に、ポテトの表面は剥がれ落ちてしまいました。 アンパンマン達の顔をモチーフにしたポテトは、誰が誰だか分からなくなってしまいました。

「アンパンマンだ〜!」「これは、ドキンちゃんかな?」 などと話しながら食べるという、アンポテの楽しみを一つ、この手で奪ってしまいました。 こんなことがアンパンマンに知られたら、アンパンチ執行です。 罪の重さからしたら『トリプルパンチ』かもしれません。 いや、そのアンパンマン達も今やフライパンの中です。

アンパンマンワールドを、僕が終わらせてしまいました。 アンパンマンワールドに対する、巨大な脅威となってしまいました。 子供の頃の自分には、こんなこと決して言えません。 タイムスリップをして過去の小さい自分がアンパンマンを見ている背中を見ながらも、 (きみはいつか、アンパンマン達にとっての脅威となってしまうのだ…) と思い、涙を流してしまいかもしれません。
「おじちゃん、なんで泣いてるの?」と子供の頃の僕に聞かれても、
「ちょっとお腹が空いてしまってね…。」とクールに答えるしかありません。

この場合は一体誰からお仕置きをされるのだろうな、と考えながら僕は、 次の一手を考えていました。 焦げを取るためにフライパンの中を箸でガリガリした時に、全てのポテトをぐちゃぐちゃにしてしまいましたが、 その光景を見て自分のことを『本物の悪魔』だなと思いました。 バイキンマンという悪の存在を、すんなりと飛び越えてしまいました。 かき混ぜたアンポテをひと口食べた僕は「これはこれで結構美味しいな」と思いましたが、自分のことを『本物の悪魔』だなと思いました。

懐かしさを追求した結果、失敗で思い出を塗り重ねてしまいました。 懐かしいものは、懐かしいままで残しておくのも良いのかもしれません。
しかしそれ以上に、懐かしさに触れるというのは人間の根源的なものだと思います。 ぜひみなさんも、アンポテを食べてみてはいかがでしょうか。
その際には、調理中にはYouTubeを見ずに調理に集中すること、そして裏の作り方の説明をしっかりと確認することをお勧めします。

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