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魔女の一撃

アイロンをかけようとしたその姿勢のままニッチもサッチも行かなくなったことはありますか? 私はあります。それは今朝の事です。

あっ……。

あっ……。

「どうしたの? お母さん?」

長男が訊いてくる。訝しそうに。

うん……。

四つん這いになったまま、起き上がる事も座りなおす事もできない。ずっとアイロンを握りしめてハイハイの格好だ。私はどうしたというのだ? なんで動けないのだ?

しばし混乱。

少しでも動こうとすると痛いから動けないのだ。ああこれは……。

魔女の一撃

とかいうやつか。これが。

などと、キースへリングのイラストみたいな格好のまま「あ」とか「う」とか言う母を心配して、長男が薬箱に湿布を探してくれて、私の腰に貼ってくれて、自分のお弁当や水筒の支度の続きを自分でやってくれてアイロンを片付けてくれた。うわっ、かっこいい。そうこうして、心配してくれつついつもより遅れ気味に出かけていった。普段冷たいというか母に無関心な長男が。成長したなぁ……としばし感動(その時はみんなもう出かけてしまい、長男しか居なかったのだ)。

なんとかテーブルに片手をついて立ち上がったものの、スマホを片手で持てなかったので、メールやラインもなかなか打てず、苦しみながら、なんとか職場のグループラインに今の状況を告げて、とりあえずパソコン当番を代わって貰った。

恐る恐る部屋の中を移動してみると、能のような移動の仕方なら(平行移動)歩けるようになった。しゃがんだり立ったりもゆっくりスクワットのようなやり方ならなんとかできる。うん。これなら仕事に行ける(これも毎日スクワットをしていたおかげか)。

夫にもとりあえずの状況をラインしたが、その頃にはスマホを持ち上げて打つことができるまでにちょっと持ち直した。

顔を洗おうとしても洗面台の前でかがめないので、ほぼまっすぐの姿勢のまま、片手を台につき、片手で水をすくい、顔を撫でるような感じで適当に顔を洗った。まぁちゃんと洗えなくても1日くらい大丈夫。適当にメイクしていざ出勤。

着くなり、同僚の1人がコルセットというか、腰に巻くサポーターを貸してくれた。ギックリ腰の経験値の高い先輩たちはみんなサポーターは持っているとのことで、しっかりつけてもらって凄く楽になった。なんて頼もしい。

大量の飲み物が入ったシッパー(大1つ、小2つ)を同僚たちに手伝ってもらってバイクまで運んで貰った。とりあえずお客様には大体決まった品物を玄関先まで1列やら1パックやらだけ持っていくか、バイクの荷物のところまで来てもらったりした。

なんて幸せで恵まれたいい職場なんだろう。

多くの人達の親切をかみしめた。

外回り中、ふと公園の方を見やると犬の声とブランコの揺れる音。平日の昼間の公園だから、幼稚園に上がる前の子供連れか、散歩中のお年寄りしかいない。ここは古くなった元新興住宅地でほとんどお年寄りしか居ない地域……と思って、よくよく見ると、思い切りブランコを漕いでいたのは1人で犬の散歩の途中らしいおじいさんだった。

なんて楽しそうに……!

その童心に気持ちを揺さぶられながら、ひと通り仕事を終えて、センターに戻った。

戻るとまた皆さんに助けられて、明日の仕入れまで済ませて、その足ですぐ裏手にある整形外科へ行った。レントゲンを撮って、骨にも椎間板にも異常がないことを確認して、筋肉の痛みだからまぁいわゆるギックリ腰の軽い状態だろうということで、湿布と飲み薬とサポーターを出されて帰宅した。

帰るとたまたま休みの夫が三男を迎えに行ってくれていた。もうすっかり夕方だった。その後一緒に買い物に行ってくれて、一緒に台所に立って、ハンバーグを夫と三男と私で作った。それはとても美味しかった。

よし。

将来の夢が一個できたぞ。

あの、公園で見たおじいさんのように、私もおばあさんになったら、思い切りブランコを漕ぐぞ。誰の目を気にすることもなく。あんな風に楽しそうに。

それまではなんとか健康でいなくては。



(ここnoteでもご心配いただき、またアドバイスも頂いて本当に嬉しかったです。ありがとうございます。思ったより軽かったので、無理しないで治るまで気をつけます(´;ω;`)本当にどうもありがとうございました!)


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ありがとうございますサポートくださると喜んで次の作品を頑張ります!多分。