「卒業写真」の思い出
ユーミンの「卒業写真」という歌がある。
悲しいことがあると開く皮の表紙
私は悲しいことがあっても卒業写真は開かない。そこに好きだったあなたも、遠くで叱ってくれるあなたもいないから。自分の写真は嫌いだし。でもこの曲を聴くとなんとも言えないほろ苦い懐かしい思いが蘇る。
中学生の時ちょっと気になる人がいた。とても繊細な子で、谷山浩子と漫画やアニメが好きな男の子だった。今だとオタクというのだろう(当時はそんな言葉は知らなかった)。ちょっと暗いというか影のある子だった。でも私とは気が合って結構いろんな話をしたように思う。
中1の時、同じクラスで1学期の頃はまぁまぁ来ていたけれど、2学期以降はほとんど学校に来なくなり、そのまま2年に上がる時には違う学校になってそれきりの人だ。
(私の世代は、第二次ベビーブームで人数がパンパンだった頃で、たまりかねて新設校がバンバンできた時代だった。私の中学は私が2年になる時に、近隣に新設校ができて学年の半分近くがそれで別れ別れになったのだ。だから、中1の時は同じクラスや部活で仲良くしていた子とも同じ卒業アルバムに載ることはなかったのだ。半分削られても6クラスはあったと思う)
街で見かけた時何も言えなかった
中3の時、駅前の塾の帰りにその中1の頃に気になっていた彼の姿を偶然見かけた。
ナチュラルにあとをつけてみた。
その子の家が分かった。
その日はそれで帰宅した。
それ以降は、特にそれ以上アクションを起こすこともなくそのまま中学を卒業した。
その時の冬のひんやりした空気とか、足元のカサカサした落ち葉の感触とかを思い出すことはたまにあっても、それはそれ以上でもそれ以下でもなく、私の中に堆積していった思い出のひとつというだけの存在になった。
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