見出し画像

EVシフト鮮明だった欧州でEV需要が減っているのはなぜか?~戦略を狂わせたある国の動き~

こんにちは、お金が入るでかねいりです。

先日の日経新聞の記事に「フォード、全車種にHV 30年までに~EV需要減で戦略転換~」というものがありました。

この記事を見て「おや?」と思ったことがありました。私の記憶では、欧州の自動車メーカーを中心に「EV自動車シフト」が進んでいると思ったからです。

今日は、「EV自動車の需要減」について調べてみて気づいたことをお伝えできればと思います。


■「脱炭素」が自動車業界に大きなインパクト

2015年に採択されたパリ協定で2020年以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めが示され、「脱炭素(カーボンニュートラル)社会の実現」が叫ばれるようになりました。

そこでフランスは2017年に「2035年までにガソリン車の販売を禁止する」と発表。その後、イギリス「2030年からガソリン車の新車販売を禁止する」と発表。そうした流れからEU(欧州連合)「2035年までにガソリン車の販売を禁止する」法案を発表し、2022年に確定となりました。

さらに欧州以外でもその波は広がり、中国は2035年までに新車販売は新エネルギー車にするという方針が発表されました。

これらのことで一気に注目を浴びたのが、EV(電気)自動車です。

自動車のEV化は、自動車業界にとってインパクトがものすごく大きく、これまでの戦略を大転換せざるを得ないほどの影響度です。

具体的には、これまでのガソリン車やハイブリッド車は、エンジンを動力とし、部品点数も多いのが特徴でしたが、電気自動車になることにより、動力はモーターで、部品点数が大幅に少なくなります

EV自動車の肝はバッテリー(電池)性能の高く、且つコストを抑えた電池の開発が競争優位をつくります。

これは、これまでの自動車業界の競争ルールが大きく変わることを意味しています。

そうした流れから、2021年にメルセデス・ベンツを製造するドイツのダイムラー社2030年までに新車販売を電気自動車(EV)のみにすると発表。

フォルクスワーゲングループは、2030年までに新車販売の50%をEVにすることを発表しました。

欧州を中心に自動車業界がEV化にシフトしていくことになりました。

■2023年になり、様子が変わってきた

そうした中、2023年に入り、様子が変わってきました。

イギリスは、2030年からガソリン車の新車販売禁止を5年延長して2035年とすると発表。また、EUも2035年にガソリンなどで走るエンジン車の新車販売をすべて禁止するとしてきた方針を変更し、温暖化ガスを排出しない合成燃料を使う場合に限りは新車の販売を認めると表明しました。

ここにきてなぜ方針を変えてきたのでしょうか?

1つの背景は、フォルクスワーゲンやダイムラーなど自動車大手を抱えるドイツが合成燃料を使う内燃機関車を認めるよう求めていたことにあります。

では、EV化シフトを宣言して自動車業界のEV化を引っ張っていたフォルクスワーゲンやダイムラーが、なぜEV化に反対をしたのでしょうか?

調べていくと、気になる記事がありました。

「EVシフトに積極的な欧州で、一部メーカーでEVの生産を減産する動きが出てきた。報道によれば、ドイツのフォルクスワーゲンは、ドイツ東部のザクセン州内工場とドレスデンにある工場で2023年10月に約2週間、ふたつのEVモデルの生産台数を抑制した。」

メルセデスベンツが掲げていた2030年までの完全EV化を撤回し、2030年代もハイブリッド車などエンジンを搭載した電動車も販売するという事が発表された」

両者とも理由として「完全なるEVシフトは市場や状況が望んでいなく実状と合っていないと判断」と報道されていました。

これはどういうことなのか?

■欧州におけるEV販売の鈍化 その背景にはある国の存在が

2024年1月、市場調査会社ロー・モーションによると「EV自動車の2023年世界販売台数は前年同月比31%増加したが、伸び率は2022年の60%から鈍化した」と発表。3月には欧州でのEV自動車の販売台数は前年同月比9%減少した」と発表。EV自動車の需要は確かに鈍化していました。

なぜ、鈍化し始めたのでしょうか?

2023年にドイツがEV補助金の打ち切りを決定したことの影響が大きいと考えられています。その他の欧州の国々でも補助金や税制優遇をしていましたが、段階的に打ち切られ始めています

そもそもEVは、従来型のガソリン車やディーゼル車に比べると車体価格が高い。さらに、欧州中銀(ECB)がインフレ対応で金利を引き上げたため、カーローンの金利も高くなりました。EVを購入するための負担が重くなり、需要が冷え込んだと考えられます。

そうした中、大半の既存大手メーカーはEV事業で利益を上げることに苦戦しています。米アップルも開発の中止の方針を固めたという報道がありました。EVの基幹パーツであるバッテリー(電池)の価格そのものが高価で、低価格帯のEVの供給がなかなか進まないという現状があります。

そこで、シェアを伸ばしているの中国メーカー。欧州自動車工業会によれば、EUの新車登録に占める中国車の割合は、2022年時点で、EV市場に限定すると中国メーカーのシェアは3.7%まで跳ね上がり、前年に比べても2.0%ポイント上昇しています。

EUが環境対策を重視するなら、中国車であろうともEVの普及を推進するのではと思うのですが、そうはいかないのです。EUは、EVの普及で「域内自動車産業の保護」と「経済安全保障の向上」という目標も一緒に実現しようとしているため、EV自動車の中国依存を嫌っているのです。

そういったことから、補助金の打ち切りに至らざるを得なかったと考えられます。

EUが主導した脱炭素から端を発したEU肝入りのEVシフト戦略(思惑)が、中国のEV自動車によって打ち砕かれたという結果になったと言えます。

今回のことを調べたことで、世界における中国の影響力がこのようなところにまで及んでいることに驚かせられるとともに、世界が中国を警戒する理由を改めて知ることとなりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?