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ZOMBB 5発目 対ゾンビ用パワード・スーツ(エチゼンヤ店長手作り)

「どうだ!凄いだろう!2年かけて僕が造ったんだ」
伊藤店長は、得意満面だ。瞳がキラキラしてる。
次郎はそんな伊藤店長が、心底きめえ!と思った。

そのパワードスーツみたいなものの姿は悪くはなかった。
頭部にはヘッドギアのようなものがあり、
左目にあたる部分には、
<ドラゴンボール>のサイヤ人がしていたような、
スカウターに似たものが付いている。


両のコメカミにあたる箇所には
大型のシュワファイヤーが取り付けられている。
シュアファイアとは、
単に暗がりを照らすライトではなく、
対象に強力な光を浴びせて”目潰し”を
行うために開発されたライトである。
胸の部分は、分厚い装甲になっており、
その胸の中央には、
直径15センチくらいの光を放つ、丸く輝くものがある
・・・まるで<アイアンマン>だ。

両肩にはプロテクター。
両腕も分厚い装甲で造られており、
腕の甲の部分には、
東京マルイ製ハイサイクル
H&K G3 SASマシンガンが装備されている。
そして驚いたことに、左肩にはミニガンが装備されていた。
ミニガンとは 
銃身を6本持つ電動式ガトリング銃である。
映画<プレデター>で
シュワちゃんの仲間が使っていたアレだ。


腹部は動きやすくするためか、蛇腹状の装甲。
両の腰には大きな、
乗用車のものと思われるバッテリーがひとつづつ
装着されている。股間は装甲で包まれ、
大腿部には、動きに柔軟さを持たせるため、
やはり蛇腹式の装甲だ。膝、ひじにはプロテクター。
脛、足の部分は、この装備の重量を支えるためか、
太く大きな装甲がなされている。


背中には、酸素ボンベみたいな物が、
2つ背負っていた。
それらすべての装備は、
何本もの太いコードでつながっている。
色は全身、オリーブドラブ色で統一されている。
まさに、パワードスーツだ。

だが、ひとつ気になることがあった。

このパワードスーツを着させている物だ。
最初はマネキンかと思ったが、
そうではなかった。全体にチープなのだ。
浮き輪のように空気で膨らませたような・・・。
その物体は全身、黒ギャルのような褐色。
顔には大きく見開かれた目。
その目は、けばけばしい睫毛で囲まれている。
そして、これも縦に大きく開かれた口。
それに髪もある。それは安物の金髪ウィッグのようだった。
これって、もしかして・・・ダッ○ワイフ?

「店長・・・」
次郎は、少年のように瞳をキラキラさせているオッサンを
哀れむ目で見た。

「見ての通り、パワードスーツだ。両腕には東京マルイ製
ハイサイクルH&K G3 SASマシンガンを装備。
しかもボックスマガジンで
5000発を連射できる。
左肩には、ネットオークションで手に入れた
電動式ガトリング銃、装弾数12000発。。
それに背中の圧縮空気のボンベで、
上空20メートルまで、30秒間上昇可能なのだ」
伊藤店長は遠くを見る目で語る。

「山田くぅん、とりあえず装着してみよう」
伊藤店長に言われ、
気が進まないながらも、山田次郎は
パワードスーツをダッチワ○フから取り外し、
1時間もかけて装着した。

「これって原動力は、
 もしかして、この胸にある<リアクター>?」
山田次郎はちょっと期待して、伊藤店長に訊いた。

「あ、それは<アイアンマン>を真似て造った、
 ただのLEDライトだよ。
 それ造るのに、2ヶ月もかかったんだから。
 かっこいいでしょ?」

知らんがな!どんだけ暇なんだ!

「動力源は腰の両方にある、バッテリーだよ。
 胸の<リアクター>のライトも、
 そのバッテリーで光らせてるんだ」

無駄なものに電力消費させてんじゃねえよ!
次郎は胸中で、毒づく。

「操作は簡単だ。山田くぅん、
 左腕の内側のパネルの蓋を開けてごらん」

伊藤店長にそう言われて、左腕の内側を見る。
たしかに、長方形のパネルのような物が付いている。
次郎はその蓋を開けた。そのパネルには、
4つの小さな四角い液晶画面がある。
その画面には、短い棒状の赤い光が放射状に、明滅している。
まるで映画<プレデター>が腕に付けていた・・・

「自爆ボタンじゃねぇかああああぁッ!」
山田次郎は絶叫した。

「山田くぅん、心配いらないよ。自爆ボタンじゃないから。
 それは武器、装備を起動させるタッチパネルなの。
 上に数字があるでしょ?
 1がハイサイクルH&K G3 SASマシンガン発射、
 2が電動式ガトリング銃の発射、
 3が背中のボンベで上昇・・・」

「わかったけど、店長、このヘッドギアのアゴの部分にある
 でかい箱のような物は何だよ。邪魔なんだけど」
説明する伊藤店長を、さえぎって次郎は訊いた。

「あ、それね。一番苦労したとこなんだ。
 4のボタンを押してみてよ」

山田次郎は伊藤店長に言われたとおり、
そのボタンを押してみた。
ポコン!と音がして、アゴの下から何かが出てきた。

「これって、カロリーメイト・・・しかも固形」

「戦闘中でも、栄養補給は必要でしょ?しかもチーズ味!」
伊藤店長は満足そうだ。

「・・・で水は?」
次郎は呆れ顔で訊いた。

「あ・・・」

「あ・・・じゃねえわ!水無しでこんな物食ったら、
 口の中の水分全部持ってかれるわ!」

それはともかく、
こんな重い装備で相模原まで行けるはずもない。
そこまで、考えているのか?この男は・・・
山田次郎はその疑問を口にした。

「こんな格好で、どうやって相模原まで行くんすか?
 これじゃバイクも運転できないッスよ・・・」

「私が連れて行ってあげるわ」

山田次郎は首だけで、声の主を振り返って見た。
商品ケースの陰から、一人の女が現れた。
新垣優実———<ララ・クロフト>のコスプレをした、
コードネーム・ララが立っていた。

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