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午後十一時五七分。最終電車を待つ、 そのプラットホームに人の姿はまばらにしかなかった。…
九月半ばになっても降り注ぐ熱を帯びた陽光は、 まだ夏が終わってないことを体感させた。 十…
亜希子は中学二年生の夏まで山村亜希子という名前だった。 それが両親の離婚で母親に引き取ら…
亜希子もいじめにあっていることに、 手をこまねいているわけではなかった。 だが担任の教師…
「どうしたの?アッキー。浮かない顔して」 米倉里美の声で、亜希子は我に帰った。 昼休みの…
バス停は帰宅途中の学生達で溢れそうだった。 通学路だけに20人ほどが入れる 屋根付きの…
亜希子の通う学校のすぐ裏手にある喫茶店アシンメトリー。 古びたマンションの一階にある、垢抜けない外観の店だった。 だが、店内は白い漆喰の壁と、落ち着いた南欧風の、 ダークブラウンで統一された、 テーブルとチェアが5セットほどあり、 オーナーのセンスの良さを感じさせた。 その店内の窓際の席に、 祐介と亜希子は互いに向かい合うように座った。 カウンター内には白いものが混じる口ひげを蓄えた初老の男が、 サイフォンでコーヒーを入れている。 BGMはリストの名曲ラ・
亜希子は、浅い眠りから目覚めた。 視界に飛び込んできたのは、見慣れた白い自室の天井だ。 …
缶コーラを一口飲むと、 亜希子はいくぶん落ち着きを取り戻した。 それでもまだ、涙のせいで…
雲ひとつない、つきぬけるような秋空の下、 校舎の屋上ではいくつかの生徒たちのグループが …
亜希子はバス停に降りると、自宅マンションに向かった。 歩いて5分ほどのいつもの帰り道なの…
放課後の教室には、生徒の数はまばらにしかいないかった。 ほとんどが学習塾か部活だ。 西に…
来島祥子と加原真湖は同じ学習塾に通っていた。 この日も講義を終え、同じバスに乗っていた。…
それは突然の訃報だった。 全校生徒が集められた体育館は 普段とは違う、異様な緊張感に包まれていた。 生徒たちはそのわけを知っていた。 一部の生徒たちは、すでに朝のニュースで 報じられたその事件を知り、それはさざ波のように多数の生徒の間に 広まっていったからだ 演壇上の校長は青ざめてはいたが、 その表情は無地の陶器のように青白く固かった。 校長から見て左側に、その他の全教師たちが並ぶ。 まだざわめいている一部の生徒たちがいたが、 生活顧問の強面の男性教師が