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【 #球春到来 】挑む~堺シュライクスの異色の2人~

外野手から再度投手に転向・村上海斗

とにかく体が大きい。ブルペンに入ると189㎝の体はもっと大きく見えた。腕を思いっきり振り下ろすと、ボールはストライクゾーンにぴったり決まり、ミットからは弾けるような音が鳴った。

147キロが自己最速という村上だが、手元のスピードガンで148キロをあっさり出してしまった。

(村上海斗投手)

捕手として受けていた藤田青空のアドバイスを受けながら昨年までは外野手だった男が、1球1球フォームを確認して投げていた。投球のほとんどが140キロを割ることなく、60球の投げ込みを終えた。

「試合になったらひょっとしたらアドレナリンが出てもっと出るかもしれないですね。150キロ出ちゃうな」と言いながら、楽しそうにボールを投げ込んでいた。

9月5日、さわかみ関西独立リーグ選抜がジャイアンツ球場で巨人3軍と交流戦を行ったが、その試合に村上は巨人の外野手として9番センターでスタメン出場していた。


「その試合の事はあんまり覚えていないですね。交流戦とかはよくやったけど、独立リーグとかあんまり詳しくなくて」
と振り返った。

その2か月後、村上は巨人から戦力外通告を受けた。12球団合同トライアウトも受けたが、一つ心残りがあった。

「どうしてもピッチャーに心残りがあって、ピッチャーとして野球をやりたかったんです」

1月、村上が大学時代以来の投手に転向するという記事がスポーツ紙に出た。そこで真っ先にオファーを出したのが堺シュライクスだった。

「他にもオファーはありましたが、関西で野球をやりたかったですし、一番最初に声をかけてくれました。なので、堺に決めました」

練習では藤江均コーチにアドバイスを仰ぎながら投手としての調整に取り組んでいる。「今は肩ひじの状態を見ながら、ストレートだけ投げている。キャッチャーを座らせたのもまだ2度目」という状態だそうだ。

だが、そのストレートを見たらどんな投手になるのかと、ワクワクせざるを得ない。

なお、何球かこっそり変化球を投げていたが、驚くほどキレが良かった。バレて藤江コーチに怒られていた。

その後もシュライクス名物地獄の走り込みにも参加。
キツい!と言いながらもしっかり完走。隣を走っていた吉村樹をイジる余裕も見せた。

(みんなが息を切らして走っていた時に、この余裕)

目標を聞いてみた。
「今年の12球団合同トライアウトを投手として受けることが目標だったんですけど、まずは試合で投げられるようになりたいです。見てほしいところはストレートです!」

投手としてリスタートを切った村上の野球人生。スピードガンがあるくら寿司スタジアム堺でそのストレートを見た人がどんな反応を見せるのか、そしてこの秋にどんな集大成を見せてくれるかが楽しみだ。

異色すぎる二刀流・毛利怜央

昨年8月、一人の高校生が偶然シュライクスの練習に参加していたのを見た。毛利怜央。精悍な顔立ち。下半身もしっかりしている。ストレートのMAXは137キロ、変化球は多少バラつきが見えた。

しかし、そのあとの練習にもしっかりついていった。
「投手野手分かれて自分の練習ができるのは魅力だな」と毛利はその時思った。

(8月にテストを受けに来ていた毛利)

シーズンが終わったあと、シュライクスへの入団が発表された。高校を卒業して、さあこれから野球に打ち込むぞ…ということはありふれた話。

しかしチームの練習が始まってすぐ、毛利のTwitterに驚くことが書かれた。

要約すると、家族が毛利に無断でモデル事務所のコンテストに応募したところ、書類審査が通ってしまったということらしい。

家族が勝手に応募、という20年ぐらい前のジャニーズの志望動機によくあった感じもさることながら、確かにこの顔なら、モデルとしてもいそうだな、というのも事実。

(「もし事務所が顔怪我したらアカンってなったらキャッチャーマスク着けさせて練習さしたり、試合に投げさせるからな」と藤江コーチが言うほどのポテンシャルと「マスク」の持ち主)

「最初は全然よくわからないまま進んでいったんですけど、書類が通って、次にウェブで面接して、最終面接みたいな感じで事務所に言ったら『うちで専属モデルとしてやってほしい』と言われて…」

すぐに球団と事務所の間でも話し合いが持たれ、お互いに支障のないようにやっていこう、ということになった。

「野球ももちろんしっかり取り組んでいきますし、モデルとしてはまだ全然どうなるかはわからないんですが、雑誌に載ったり撮影があったりするそうです。有名な雑誌とかに載れるモデルになりたいですね」

そんな毛利だが、昨年5月より肩を痛めていて、現在別メニュー調整中だ。

(余裕そうに見えるが、実はバランスを取るのが精いっぱいな図)

「リハビリとストレッチ中心に進めていて、やっと昨日ネットスローができるようになりました。トレーナーの方とも相談しながらやってきて、4月半ばぐらいには試合で投げられるようになるんじゃないかということでした」

元々小学生の時には阪神タイガースジュニアにも選抜された実力の持ち主。高校時代はほとんど投げられなかったというが、野球に対する情熱も人一倍だ。

「今の段階では実績がないので、1年目はしっかり基礎を作ってボールのキレや重さ、そしてスタミナをレベルアップしていきたいです。その中で試合で実績を作って、なんとか1回でもリーグ選抜に選ばれたいです。2年目には球速を150キロに到達させてタイトルを獲れる選手になりたいです」

昨年8月に会った時に比べて、さらに体も大きくなっていた。
焦らずリハビリに励んでほしいが、今後の目標についてこう語った。

「野球でもモデルでも両方で有名になりたいです。そのために全力で頑張りたいです」

天は二物を与えずとは言うが、与えられているものを存分に活かす。なかなかできないことだ。人一倍努力が必要となるが、どちらも全力で挑む。

(文・写真:SAZZY 取材:3月4日)

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