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【#球春到来】06BULLS 新しい監督・変化したエースとチーム

大阪府大東市、龍間ぐりーんふぃーるど。ほぼ奈良県との県境にある野球場だ。この野球場は07年に当時大阪桐蔭高校3年生だった中田翔が、当時の高校野球記録となる87号ホームランをかっ飛ばした球場でもある。

(中田翔記念碑)

そんな球場で練習をしている06BULLSを訪ねた。今年からチームを指揮するのは桜井広大。チーム在籍3年目。監督として迎える初のシーズンだ。

コーチから監督へ

「そりゃあもう全然違いますよ。全体見ないといけないですから」
外野でアップをするナインを見つめながら、指揮を執り始めてからの約20日を振り返った。

「チームのメンバーは大きな怪我はないですよ。疲れが出てきているところはあるけれど、力は去年よりちょっとずつ上がってきている。これからは実戦に向けての練習がメインになりますね。ここからオープン戦が始まるという段階なので動きを見ていきたいです」

(ピッチングマシンにボールを入れる桜井監督)

桜井監督が大事にしたいこと

―監督となった上で力を入れていることは何ですか?

「人間教育ですね。例えばここにいる選手たちがここで野球を辞めて社会に出ても活躍できるような人を育てていきたいです。そのために大事なのは『挨拶』や『感謝』。当たり前のようなことかもしれないけれど、それがなかなかできない。今のチームも去年に比べたらだいぶできるようになっているけど、まだまだ」

―確かに選手たちも声をかけてくれたり、挨拶をしてくれる

「本当に当たり前のこと。『礼に始まり礼に終わる』という通りですね。とにかく純粋であることと誠実であること。これが大事です。例えばこのリーグだと、NPBと対戦するときに選抜チームを組みますが、例えば4割打ったバッターがいたとして、その試合で仮に打てなくても、ちゃんとした姿勢で向き合って野球をやっていれば評価はしてくれる。でも、ホームランなんかを打っても手を抜いたりしているのがわかると、相手にはわかってしまう。だから練習から、普段からしっかりやろうと思っています。このリーグも格下に思われていると思うので、『ちゃんとやっているんだぞ』というのをまずブルズの選手から見せたいです」

―これからオープン戦が始まっていくが

「これに関しては実戦的な練習の中でしっかり目立つ選手を見極めていきたいです。練習であんまりでも、いざ実戦に入るとものすごく打つ選手がいたりする。姿勢の話もしましたが、この世界、やっぱり結果が全て、大事なところなので、しっかり練習しないといけないなと思っています。そして人間誰しも波があるので、落ち込んでいるときに選手のお尻を叩けるかだと思います」

―目立つ、という選手は今のところいますか

「まだそこまでで抜きん出た存在はいないけど、中村(雅友)なんかはすごくやる気になってくれている。ちょっとオーバーワークでお尻を痛めたりしたけれど、本当にやる気になって、体重も10キロ増やしてここまで来てくれました。練習量も食べる量も増やして体を作っているので、他の選手もしっかり見てほしいなと思っています」

今年に全てをかけるエース・中村雅友

桜井監督が名前を挙げた中村投手に話を聞いた。

オフに結果的に10キロの増量に成功した。ボールもチームメイトから「去年に比べ見違えた」と称された。それでも「練習に満足しないようにしている。よくやったと思わないようにしている」と話す。

きっかけはSNSのDMだった。堺シュライクスの片岡篤志に広島に自主トレに誘われた。その自主トレ先のジムをたまたま中村が知っていたことで意気投合。以降オフシーズン、中村と片岡はいろいろなことを話しながらトレーニングを積んだ。

「片岡からDMが来てなかったら今本当にいろいろ考えたりしてなかったですね」

片岡には怪我をしないための体を作る方法や、出力をしっかり出すための方法を聞いたりしたという。

「片岡は自分の経験とか、やってきたことであそこまで強いボールを投げられるようになったので、本当にすごいなと思っています」

昨年途中に入団。クラブチームに所属していたが、新型コロナウイルスの流行のために、シーズンが3月で終わってしまった。
どうしようかと思ったときに同じ大学の同級生だった佐藤蓮に誘われた。

「もともとチームにも不満があって、『シーズン終わったら行くわ』って佐藤に言ってたんですが、コロナで本当にシーズンが終わってしまって。クラブ選手権とかの目標が無くなって、どうしようかと思いました」

1週間後には移籍を決意。以後ブルズの投手の中心選手の一人として規定投球回にも到達、最後にはリーグ選抜にも選ばれた。

「今まで高校大学社会人と、練習など団体で動くことが多かったんですが、独立リーグだとみんな個々にいろいろ動くので、それに一番驚きました。いい意味で自由にできるのでしっかり練習をしたり、自分に甘くならないようにしないといけないなと思いました」

去年の成績にも当然満足していない。そして上のレベルを目指すにあたってなりふり構わない。

「clubhouseというアプリがあって、現役のNPBの選手やスタッフの方と直接話せたりするんです。そこで『どうやったらプロになれますか』とか真剣に聞いています」

返ってくる答えは「自分にしかない特化したものを作ること」だった。

「キレがいいとかそんなんじゃなくて、ボールの速さは誰にも負けない、とか、この変化球は誰も打てない、とか、そんな武器を作るべき、ということでした。平均じゃなくどこか尖ったものを作れれば、ということですね」

そのためにも誰にも負けるつもりはない。獲れるタイトルは全て獲る、と公言する。

「このリーグで一番になれないとだめだと思っています。そしてみんなNPBとかに行きたいと言っている人も多いですが、NPBに行って活躍できないと意味がない。そこで活躍できる選手になりたいです」

もうすぐ開幕、そんな中、中村は「ここまでにこんなボールを会得する」「ここまでにこんな結果を出す」という逆算した目標を立てているという。夢のために満足も妥協もない。

「進化した自分をシーズンで見せたいです!」

そう言ってこの日の練習を切り上げた。その直後「帰って素振りするぞ!」と高らかに宣言して。

練習風景と気になったこと

この日はベースランニング、ノック、ケースバッティング、シートバッティングと実戦形式の練習が多めだった。

ノックでは2年目の千原和希がサードのポジションから全体を盛り上げていた。桜井監督のノックに選手がとにかく食らいつく。それを互いが盛り上げる、いい雰囲気ができていた。

(ノックを打つ桜井監督と千原和希)

シートバッティングでは遊馬ジェシーが右方向へ巧みに打つなど、打力をアピール。虎弥太、奥田一弘ら昨年からの主力も順調な仕上がりを見せていた。

ブルペンでは白戸颯、川口陽太郎らが立ち投げを行い調整をしていた。
その中で内海皓太が手元のスピードガンで143キロを計測。本人曰く、1月には早くもトレーニングで144キロを出していたとのこと。2年目の飛躍に期待したい。

(内海皓太投手。ちなみに昨年の実戦での球速は140キロ)

写真を撮っていると「あ、ユニフォームのほうがいいですか?」と選手のほうから提案された。アップの後はチーム支給のシャツ、もしくは昨年のユニフォームで練習をしていた選手が大半だった。

練習後、谷口功一GMより「プロの球団なのだから、しっかり服の色、インナーなどは揃えていく」と話が出ていた。チームの正装であるユニフォームやチームカラーの服を練習から揃って着る=同じ方向を向いて戦っていくという明確な意思を感じた。

(谷口GM)

その姿勢は練習後のグラウンド整備でも。選手だけではなく、桜井監督、谷口GMもトンボやブラシを持ってグラウンドを均していっていた。

チーム結成節目の10年目、監督も、選手も、会社の体制も変わった。
変わっていく06BULLSに注目していきたい。

(文・写真:SAZZY)

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