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全てが愛おしく感じる瞬間。①母という存在


去年の10月に、今までの人生を整理するために書いたものです。

何回かに分けて、アップしていこうと思います。

お時間が空いた時にでも、ちょっと覗いてみませんか?

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私は今、椅子に座ってPCに向かっています。
目の前の窓から入る少し冷たい秋風が、頭と顔を冷やしてくれます。
軽く目を閉じると夕方の生活音と共に、かすかに聞こえる鈴虫の音色が重なって、季節が通り過ぎて行くのを感じます。
椅子に浅く腰掛け、背もたれの上の部分に首を掛けて動かすと、まるでマッサージをしてもらっているかのように、気持ちよくなってしまいました。


今年の夏は熱い太陽の下、地球温暖化も応援したようで、蒸暑い日々が続きました。その暑さといったら、このまま夏が続投するかのようでしたが、やっぱり四季のワンシーズンでしたね。過ぎてしまうと体に残った夏の疲労感さえも懐かしく思い、何故か心地よく感じてしまいます。
こんな季節の中に、私はすっかり溶け込んでしまい、少しうたた寝をしていました。

自分の呼吸音を全身で聞いて、すべてが愛おしく感じる時、生きているということを実感させられます。こうしてごく日常の瞬間が、満喫できるようになろうとは、過去の自分からは想像もできなかったことです。若い頃には、自殺を考え、退廃的に生きていた者が、ということです。


いったいなぜ、私は、こうなったのでしょう。
日常のごく普通のことに、なぜ満喫できる私になってしまったのでしょうか。ここで少し、ゆっくりと振り返ってみることにします。


ここ3年間は夫の仕事の関係で、とても目まぐるしい日々を過ごさせて頂きました。それまではただの「主婦」であり、一人の「お母さん」がです。
まぁ、完全な「主婦」だといったら、誤解を呼ぶかもしれませんね。確かに3年前までは、日本語を教えていました。資格を持っていたので、この国で日本語の講師をしていました。実はそれも、依頼があったのでするようになった仕事でした。


結婚した当初は、夫の母校の前で外国語学院を経営している後輩から頼まれて、日本語の上級クラスを受け持ったのをきっかけに、短大の語学コースを始め、各語学院数か所で教えていました。
その後、ある事情で韓国を離れ、夫は日本で仕事を始めますが、義理の母の具合が悪くなったこともあり、私は子どもたちを連れて韓国に戻ります。

それから数年後、娘が習っていたカヤグム(韓国の琴)の先生から、 以前の経験もあって近所の生涯センターで日本語を教えてほしいといわれ、育児の合間で教えることになったのです。


始めは小・中学生対象のクラスや、主婦のクラスが中心でしたが、個人的に頼まれて日本の大学進学を目指している高校生を対象に、日本語能力試験やEJU(日本留学試験)と各大学の過去入試問題を中心に、教えるようにもなりました。
(ちなみに当時、高校生たちと一緒に解いた各大学の小論文系の過去問は、こうして書くことの基礎になり、とてもありがたい経験となりました。)


実は今だから言えることですが、当時の私にとって日本語を教える目的は二つありました。


一つ目は、韓国在住の日本人にとって日本語を教える場は、韓国の人たちと交流し、韓国を学ぶことができる場だったのです。もちろん子どもたちの学校関係や、ご近所の付き合いの場もありましたが、日本や日本語を教えるという立場でお会いした方たちは、日本人である私に好意的に接して下さる貴重な存在でした。
中でも主婦のクラスで出会った方たちは、素敵な人たちばかりでした。この大邱の壽城区は韓国でも教育熱が高い所として有名で、お母さんたちの子どもに対する情熱には大変驚かされ、理想的といわれる韓国のお母さんに直接触れて、この国の教育現状を学ぶことなりました。今思うとこの経験は、教育に対する問題意識を与えてくれました。


また二つ目は、子どもたちに日本語を教えたかったので、教えることを通して教え方を学びました。実は私はこちらのご両親と一緒に生活をしていたので遠慮したこともあって、韓国語だけで子育てをしました。その後、状況が変わる中、自然と日本語も使うようにはなりました。特に娘が日本の大学を目指していたので、日本留学を目標とする高校生たちに教えながら、日本の教育状況を学ぶことにもなり、何よりも私が勉強になりました。

こうして私は日本語を教えることを通して、両国の教育現状などを知りながら日本や韓国を学び、この国における母親像を構築していきました。
もちろん日本語を教える仕事は好きでしたが、自らその仕事を選択することはありませんでした。ある時、中学校で日本語の教師にならないかという話もありましたが、迷うことなく断りました。


結局私は普通の「主婦」を選択し、ただの一人の「お母さん」に過ぎません。特に私は、このような主婦や母親という立場に、プライドを持っています。


家事は得意です。特に収納など片づけることに関しては、姪っ子に「神」だといわれています。空間を整えた後のスッキリ感がたまらなく好きなので、無意識的にいつの間にか片づけてしまいます。それはそれで問題ですが。
掃除・洗濯も好きです。お料理も好きで、早く作ることが得意です。主婦は全てにおいて、時間との勝負の「技」を持っていると思います。
こちらのママ友とも、上手に付き合えます。聞くことによって、韓国や韓国語の勉強になっています。子どもたちの時間管理も、1年に1・2度は寝坊をして遅刻させてしまうこともありますが、基本的にはしっかりできます。

例えば日本の知り合いのママ達が集まり、主体的に発信している場があるのですが、そこの母親に対するプレゼンテーションはとても印象的です。


「お母さんは、一人で一つの会社!でも、年中無休!」から始まり・・

「だからこそ、エネルギー・エモーション・お金・時間のコスト削減が必要!」と続き・・


総務:家の備品調整  経理:家計管理  人事:子育て(人材育成)
営業:親戚対応・ご近所地域対応・ママ友対応・学校関係
受付:訪問客対応  秘書:旦那さん対応・家族のスケジュール管理
企画:イベント・旅行 社食:食事作り 衛生:掃除・洗濯・健康管理


と、あります。


まさしく世の中の主婦やお母さんたちは、家庭という一つの「会社の経営者」であり、全てをやりこなす「従業員」でもあるのですね。
見事です。本当にその通りだと思います。

私はそんな「母」という存在に、誇りを持っています。

何をしていても、どこに居ようとも、子どもたちにとっては一人しかいない「お母さん」なのです。

だからこそ、そんな子どもたちが「生まれてよかった」といえる環境を、つくってあげたい、ただそれだけなのです。

                      (次回に続く・・)




拙い文章を読んで頂いて、ありがとうございました。 できればいつか、各国・各地域の地理を中心とした歴史をわかりやすく「絵本」に表現したい!と思ってます。皆さんのご支援は、絵本のステキな1ページとなるでしょう。ありがとうございます♡