ミツバチと人間の違いってなんだろう

 子どもたちに、「進路を考えよう」と言っても、実際に進路を考え、自分の将来を見すえている子が、いったいどのくらいいるのだろう。
 あなたは学生の頃、自分の進路をしっかり考えていたのだろうか。

 もちろん、先生になりたい、医者になりたいと具体的に考えている子、プロスポーツ選手になりたい、アイドルになりたいと思っている人もいる。今はユーチューバーかな。けれど、なかなか思い通りに人生は進まない。なりたかった職業につけていない人がほとんどだろう。


 ミツバチやアリの、社会性昆虫は、生まれたときから社会での仕事が決まっている。女王は女王で、働きバチは死ぬまで働きバチだ。

 働きバチ、働きアリは、本来はメスだ。
 卵を産み育てることができるのに、自分の卵を産まず、産めず、女王の子どものために一生働く。女王の子どもと書いたが、働きバチも女王の子どもだ。だから、自分の兄弟を育てている。母親である女王のDNAとオスのDNAをもらった子どもは、女王とDNAが半分同じ。だが、自分の兄弟とは、ほぼ同じDNAを持つことになる。自分と同じDNAを持つ兄弟だからこそ、自分と同じDNAを残すため一生懸命子育てをし、雑用に一生を使う。なぜ働くのかなど考えない。

 新しい女王バチは、働きバチと同じ条件で生まれるが、幼虫の時に他とは違い、ローヤルゼリーを食べさせられる。すると女王になる。働きバチも条件次第では女王になれた。
 女王は権力をほしいままにしているかというと、そんなことはない。一生子どもを産む。まさに出産マシーンなのだ。産めよ増やせよとばかりに、次々子どもを産み(正確には、卵を産み)、新しい巣を大きくする。それが死ぬまで続く。それが仕事だ。

 女王の卵の素となる精子だが、その製造元のオスは、何のために生まれたかというと、精子を提供するためだ。女王とセックスするために生まれた。しかもセックスできるオスばかりではない。できないまま死んでいくのが多い。夏場に、灯りに集まってくる羽アリは、オスなのだ。メスを見つけられなかったオスが夜の灯りに集まって来る。

 自分の思い通りにならなくても、ミツバチやアリは、それが自然だと思い、一生懸命生きている。


 自分に合わない仕事に就いたからと、すぐに仕事を辞める人がいる。
 石の上にも三年ということわざは、もう死語になってしまったのだろうか。三年続ければ、仕事の楽しみもわかるだろうに。
 入ったときには全然楽しくない仕事でも、続けていくと楽しくなる。最初から楽しい仕事なんて、まずないだろう。

 とはいうものの、ブラックな仕事を、ブラックな職場を、いやいや続けて心を病んだり、命を失ってはなにもならない。そんな職場であれば、やめればいい。思い切りやめてしまう勇気も必要だ。

 でも、わざとブラックに飛び込むこともある。
 私はかつて朝早くから仕事をしていた。勤務時間外であり、当然ブラックだ。でも、したいことが勤務時間にはできないので、早朝に一人でする。そうすると、誘ったわけでもないのに、一緒に仕事をしてくれる仲間ができた。給料も出ないのに、自分からブラックに飛び込む仲間がいた。
 うれしい。それはそれで互いに満足しながら仕事をしていた。

 新入社員のときの自分と、役員になってからの自分は違う。部署が変わっても違ってくる。仕事に関する考えも変わってくる。
 自分自身の私生活も関係してくる。独身のときの自分、結婚してからの自分、子どもが生まれてからの自分は、仕事に対する考えも変わる。子どもの成長によっても違う。子どもの成長につれて、仕事に対する考えが変わる。
 私生活も仕事もいつまでも同じではない。考えも変わっていく。働くことに対して、同じ考えをずっと持続できるわけがない。人の考えは、環境により、成長により、それぞれ変わってくる。
 そのなかで、自分にできる精一杯のことをすれば、きっと仕事は楽しくなってくるだろう。


 若かりし頃を振り返ってみれば、「働くって何だろう」なんて考えず、ただひたすら働いていた自分がいる。働きバチや働きアリのように働いていた自分が不幸だったかといわれれば、決してそんなことはないと今言える自分がいる。まずは立ち向かってみよう。

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