無関心という名の人間性喪失
各自治体が「Live119」の導入を進めているというニュースがあった。
これは、スマホで映した映像を送り、それを見ながら応急手当の方法を教えるシステムだ。
車の運転免許を持っている人なら、救急救命の講義を受けているだろう。スマホを使わなくても、だれか人が倒れているときには対応しなければならない。
これが普通の対応だ。
人通りの多い渋谷で刺傷事件があった。血を流している被害者に駆け寄った人が、上記3の対応をした。つまり、「誰か来てください!」「119番通報をお願いします」と声をかけたが、周りの人は誰も反応しない。みんなスマホで現場の撮影をしているのだ。テレビのニュース映像で、「○○さん撮影」と出る、あの映像を撮影しているのだ。こんな映像を撮影する前に、逃げるなり、助けるなりできるだろう、という映像だ。その映像を放送局はなんの説明もなく、「○○さん撮影」の文字を入れるだけで流す。
ちょっと想像してほしい。
もし自分が血だらけで倒れているとする。周りの人は誰も近づかず、少し離れたところから、みんながスマホを向けて撮影している。
まるでホラー映画だ。たまらないぞ。そんな風景が現実になってきた。
人間はひとりでは生きていけない。互いに助け合ってこそ生きていける生き物。
人間なんて弱い動物だ。熊とケンカして勝てるわけない。猪にも勝てない。猿とケンカしても負ける。犬だって、小型犬ならともかく、普通の大きさの犬は恐い。昔は野犬がいっぱいいたけど、野犬に遭遇したら恐い恐い。
牙も爪も持たない人間は、他の動物に勝てないので、武器を作り、仲間と協力して大型獣を狩りしてきた。一人では何もできない。
赤ん坊も一人では育てられないので、家族で育てる。赤ん坊だけでも、子どもだけでも勝手には育たない。卵から孵化したら自分の力で海まで歩くウミガメとは違う。
社会の中でしか生きられない生き物が人間。
車椅子の人がいれば、「何かお手伝いすることはありませんか」と声をかけましょう、と駅のポスターにある。
よけいなお世話はいらないけど、必要なサポートがあってこそ人間は社会で生きていける。
それを忘れて、助け合わず、ただスマホをかざし、事件がなければ下を向いてスマホ画面を見続ける。
周りに無関心になった人間に未来はなくなっていくだろう。
「無視」することが、一番人間を傷つける。
情けは人のためならず
人助けは他人のためにするのではない。自分が困ったとき、自分が誰かに助けてもらうために、今、自分が他人を助けるのだ。
人間は一人では生きていけない。
社会の中で生きる人間として、もう一度自分自身を振り返ってみたい。
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