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「ことわざかるた」を作ろう④ あさきゆめみしゑひもせす

 義務教育で道徳教育をするよりも「ことわざ」を覚えよう。「ことわざ」を子どもたちに教えよう。「ことわざかるた」を手作りして「ことわざ」を伝えよう。それが子どもたちの倫理観を育てる。生きる知恵をはぐくむ。
 子どもたちに教えたい「ことわざ」を並べている最終回。もっといい「ことわざ」があるだろう。もっと覚えてほしい「ことわざ」があるだろう。
 実際に子どもたちに絵を描かせて「かるた」を作って遊んでほしい。全部のかるたを作らなくても、ゲームはできる。ことわざを覚えられる。

 最終回は「あさきゆめみしゑひもせす」の七五の部分。



かくしてしり隠さず

 すっかり隠したつもりでも、一部が見えている。頭は隠したけれど、お尻が出ている。
 「ことわざ」に関して、いろいろなことを書いてきたつもりだけど、どっかが抜けているかもわからない。いやいやこれは、頭隠したつもりが頭が出ていた、かな。


さわらぬ神にたたりなし

 よけいなことをしなければ、めんどうにまきこまれることはない。災いを起こす神様に触れなければたたりもない。
 よけいなことはするなと教えながら、周りで困っている人がいれば助けなければならない。自分が誰かを助けなければ、自分が困っているときに誰も助けてくれない。一人で生きているのではない。社会の中で人は生きていることを教えたい。ことわざにも人生にも二面がある。○か×ではなく、○でもあり×でもあるのが人生。それが人間。


木を見て森を見ず

 木だけ見て、森全体を見ていない。小さいことにとらわれて、全体が見通せないこと。
 「群盲ぐんもう象を評す」は、象の足を触った人は、柱のようだと思い、しっぽを触った人はロープのようだと言い、鼻を触った人は、木の枝のようだと言う。それぞれは正しいけれども全体を見ていない。
 「さわらぬ神に祟りなし」で、「群盲」「盲人」という言葉を使わないようにして「群盲象を評す」ということわざも使わなくなっているが、「木を見て森を見ず」、言葉にとらわれて本質を表すことわざを抹殺していく。


油断大敵ゆだんたいてき

 油断すると思わぬ失敗をする。
 「注意1秒、ケガ一生」。安全標語で、1秒の注意をおこたると、一生のケガをおうことがある、というもの。工事現場や交通安全に使われる。常に注意をおこたらない。


目の上のこぶ

 自分の目上の、じゃまになるもの。たんにじゃまになるものもいう。「目の上のたんこぶ」ともいう。
 たんこぶはなかなか消えないから、たんこぶともうまくつきあわなければならない。人と人との関係も同じ。自分にとって、たんこぶのような人ともうまくつきあわなければならない。


から出たさび

 自分が原因で苦しんだり、ひどい目にあう。もともとは、刀のサビは自分の刀身から出ること。
 失敗したら他人のせいにしたがるのが人間だが、結局は自分にも原因があることを、ことわざをとおして日頃から理解させておく。


知らぬがほとけ

 知らなければ気になることもない。心配しなくていい。
 それでも知らないことを知ろうとする好奇心を持っているのが人間。


えんなもの味なもの

 縁は、どこで結ばれるかわからない不思議でおもしろいものだ。男女の仲についていう言葉だが、男女にこだわらなくてもいいだろう。
 人間は一人で生きているのではなく、誰かとどこかでつながっている。「風が吹けば桶屋おけやもうかる」は、風が吹けばゴミが飛び目に入り、目の見えない人が増える。目の見えない人は三味線弾きで生計をたてていたので、三味線がよく売れる。三味線の皮はネコの皮で作るのでネコがたくさん捕えられる。ネコがいなくなればネズミが増える。ネズミが増えると、ネズミがおけをかじる。桶が不足するので桶屋が儲かる。ということ。今はネズミを捕って食べるネコもいないし、盲人が三味線弾きで生計を立てることもほとんどない。盲人という言葉でさえ禁句となる。どこかで何かがつながっている。
 「バタフライエフェクト」は、ブラジルの1匹のチョウの羽ばたきが気象に影響を与え、テキサスで大きな竜巻を起こす。小さな出来事が大きな結果になるという意味。「縁は異なもの味なもの」だ。


百聞ひゃくぶん一見いっけんにしかず

 百回聞くよりも一回見た方がわかる。
 あれこれ言うよりも、1回見せればわかる。「ろんより証拠しょうこ」。話し合いで解決するよりも、証拠が大きな力を持つこともある。ことわざがあちこちつながっていることも教えたい。


桃栗三年柿八年

 モモとクリは芽が出てから三年、カキは八年で実ができる。モモ・クリ三年、カキ八年、そのように、何事もできるまでに時間がかかる。
 実際に、種を植えてみるのもおもしろい。モモの種は割れていることが多かったけど、今の品種はちゃんと割れていない種がある。固い殻をわった方が発芽率がいいそうだ。クリは、あの形のまま土に埋めれば芽が出る。もちろん天津てんしん甘栗あまぐりを埋めたって芽は出ない。梅干しの種をまくようなものだ。カキもそのまま種を埋めたら芽が出る。
 道徳教育は結果がすぐには出てこない。教育自体がすぐに結果は出てこない。テストの点数はすぐに結果が出るけど、心の中の教育はすぐに結果が出ない。何年も何十年もたってから結果が出ても、誰も評価してくれない。テストの点数が良かっただろう官僚や政治家は、教育予算を増やそうとはしない。訳の分からない教育改革を計画する。未来を見ようとはしない。ことわざを覚えても、すぐに結果は出ない。「桃栗三年柿八年」のように、長い時間をかけて結果が出るものがある。


いてはことをしそんじる

 「急がば回れ」は、急いでいるときは回り道になってもいいので、ゆっくりすれば失敗しないという。急いでは失敗するんだよ、と教えている。
 テストの点数にしても、一夜漬けの勉強でその時は結果を出したとしても、その知識はすぐに忘れてしまう。本当に覚えるためには、じっくり時間をかけて覚えなければならない。
 逆に、「思い立ったが吉日きちじつ」で、すぐにやらなければならないこともある。人生は○か×だけでは決められない。


すずめ百までおどり忘れず

 「三つ子みつごたましい百まで」のことわざもあるが、三歳までに覚えたことは一生忘れない。すずめも子どもの頃に覚えた踊りは一生忘れない。「百まで」は百歳までというより、死ぬまで、「一生」という意味。今でも、ある年代の女性は、ピンクレディーの「UFO」の曲が流れると踊り出す。



 「ことわざ」も「百人一首」も、子どもの頃に一度覚えてしまえば一生忘れない。道徳教育にもなる「ことわざ」や、日本人の心を育てる情操教育にもなる「百人一首」は、若いときに身につけさせたい。

 これでいろは47文字が終了。



いろはにほへとちりぬるを
わかよたれそつねならむ
うゐのおくやまけふこえて
あさきゆめみしゑひもせす

色は匂へど散りぬるを
我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山今日越えて
浅き夢見じ酔ひもせず


 「あいうえお」が言えるように、「いろはうた」も覚えたい。


 見出し画像の写真はぱくたそからお借りしました。水中写真を撮っているさやかさんの作品です。身近にある海の美しさ、神秘、それを知らないことがたくさんあります。身近にあることわざも、その歴史の知恵を知らないことがたくさんあります。もっと海を知り、ことわざを知れば、きっと心が豊かになるはずです。



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