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加納エミリ「Steppin'」に惹かれていく理由となぜだか思い出す「ボクたちはみんな大人になれなかった」



不思議な感覚を感じてる。なんでしょう、この音楽の気持ちよさだけじゃない、モヤモヤした感覚。でも、それは悪いモヤモヤじゃない。聞くたびに、歌詞を繰り返すたびに、惹かれていく何か。

8日に出たばかりの加納エミリさんのニューシングル。ティーザーで思ったちょっと懐かしい感じ。なぜだか今井美樹さんの「雨にキッスの花束を」が急に頭の中を流れたり。プロデュースがインドネシアのシティポップバンドIKKUBARUで、このときはこんな惹かれるとは思わなかった。

「長い夢が覚めなくて 思い出だけ振り返って 少し退屈してるの」(注・歌詞はすべて私の耳からなので間違っていたらごめんなさい。)

「エモい」なんて言葉じゃ表せないもの。私たちはあの日を振り返って感傷に耽るだけ生き物じゃないでしょう?

「昔はよかった ばっかり言ってる間にほら
歳だけ重ねたくはないでしょ」

思い出すもの。先日観た「ボクたちはみんな大人になれなかった」

小沢健二関連で気になって、原作を読んだとき、当時の私の心境と重なって「あの頃の私たちがいる」なんて思って大号泣したもの。それから3年過ぎての映画化。これは劇場で観ねばならないと映画館まで行く。
ものすごく素晴らしい部分と、これどうだろう?って部分が入り混じった非常に混乱させる作品。泣き出しそうになって、急にすべてが冷めて、再び泣き出しそうになる。ネタバレになりますが、原作にはない2020年のシーンがあって。

主人公の佐藤がタクシーに乗ったときたまたまラジオから流れる小沢健二の「彗星」。

「今ここにあるこの暮らしこそが宇宙だよと
今も僕は思うよ なんて奇跡なんだと」


この曲をバックにいろんなことが思い出されていく。出会った人たち。最高なこと、最低なこと。
そして彼女と別れた場所へ向かう。
そこで佐藤が感じたものは。エンドロール後の佐藤の後ろ姿から私たちが受け取るもの。

そう、小説では感じられなかったものがここにあるの。あの日々を思い出して胸を苦しくさせて、きっとそんな自分に酔ってたあの頃のあたしには感じられなかったもの。それは年月が過ぎたからかもしれないけど、2020年の佐藤が見せてくれたこと。

なんだか「Steppin'」にはそんなものを感じるの。
こんなに懐かしさみたいなものを漂わせながら今の歌なの。
胸はキュンとはならない。はじめに書いたようにモヤモヤしてる。
 「かまわないけど」とか「選べる道は一つだけじゃない たまには流されるのも悪くないよ」優しさのような、もしくは突き放したような言葉たちが私をふっと考えこませる。そして何かが心に残る。それを今はまだモヤモヤとしか表現できないのがもどかしいけど。でもこの感覚こそが大事な気がしている。

「懐かしいものもとても素敵 でも
今と並べないで 過去はもう進まないから」

過ぎ去った過去を全否定はしていないはず。「進まない」「変えられない」わかってる。わかってるけど、思い出しては繰り返す逡巡を。そんな日々たちを心の何処かに置いて。どこかには置いておいていい気がするの。すべてを捨ててとか、白黒付けなくていい。それで生きていけるのなら。

「区切りなんてつけなくていいんじゃないかな。
どっちが前でどっちが後ろかなんて。」
ドラマ「あなたのそばで明日が笑う」のセリフを何故だか思い出して。

「目線をそらさないで
 長い夢から覚めたとき
 音楽はいつでも待ってる」

そう音楽はいつでも待ってる。音楽が記憶を呼び覚ます装置であることは重々承知しているけれど、ふっと新しい音楽に出会えることだってある。
今の私なら(sic)boyとconton candyに夢中だろう?

「Steppin'」と「City Hunter」をヘビロテ中だろ?ついでに「忘れないで」も。
そして年末の小沢健二のニューシングルも心待ちにしているんだ。


「ごめんね」で当時かなり落ちていた私を救った加納エミリさんの新曲が最高だってこと。そしてなんだか心に棲みついて仕方ないこと。そんなことを思って書いていたら、先月観た映画を思い出し、なんだかよくわからない感じになってしまいました。
でも、嬉しいこと。素晴らしい音楽たちが待っている。

ファンクラブ向けミニライブの「Steppin'」のニューアレンジも切なさ増しでよかった。基本配信ライブで何もコメントとか残さない私でもハート送ってしまうほど。23日まで見れるので、ぜひ気になった方はEMIRI CLUBへ。


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