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なぜメジャーではない地下アイドルを応援するのか

「導入」

アイドル戦国時代と言われる2010年頃~現在にかけて日本の女性アイドルは急増している。2000年前半までのアイドルのイメージは「テレビに出て歌って踊るのがアイドル」であった。しかし、現在は「地下アイドル」または「ライブアイドル」とも呼ばれるアイドルは、テレビに出るアイドルとは違い、主に週末にライブハウスなどでライブ活動を行うアイドルがでてきた。地下アイドルという言葉は知っていても主にどんな活動をしているのか。収入はあるのか。など知られていない部分が多数ある。

また、地下アイドルは誕生してはすぐに解散しアイドル自身もグループを転々としながら地下アイドル界隈に生き残り続けようと必死である。なぜそこまでしてアイドル活動を続けるのだろうか。

謎が多い地下アイドルについて、私自身が地下アイドル活動を行っていた経験を踏まえ実体験と照らし合わせながら、地下アイドルについての解説、なぜメジャーでないアイドルを応援しているのかについて分析していく。

「そもそも地下アイドルとは・・・」

地下アイドルとは、主に週末、ライブハウスで20分枠程のライブをし、出演後に物販と呼ばれる特典会でチェキをとったり、話したりする時間を約1時間設ける。この流れを1日2本、多い時で3本ほど行う。

地下アイドルは女性アイドルだけでなく、「メン地下」と呼ばれる男性地下アイドルも存在する。メン地下は女性支持が高い傾向がある。

「グループの収入源は・・・」

アイドルの収入は主に物販で得られた売上金の数%~数10%である。
例えば、某グループはチェキ1枚1000円で撮れるとする。撮影後サインやコメントをアイドルがファンと1分ほど話しながら書いていく。このグループはチェキバックが20%であれば1日に20枚分のチェキを撮ったとすると、(1000×20)×0.2で4000円がその日の収入となる。

しかし、交通費や食事代が自腹のことが多いため少しのプラスかマイナスになってしまうこともある。さらに、ライブをし、物販が終わるまでその日の収入が分からず必ず稼げるとは限らないのである。その日の運も重要となってくる。

また、運営といわれる地下アイドルグループのプロデューサーや社長は「動員」と言われる自グループ目当てで予約、入場してくれた人のチケット代をライブハウスや主催者と予め決められた割合で割りその額が売り上げとなる。

動員数が少ないと主催者の売り上げも減ってしまうため動員数が重要になってくる。そのため、数を呼べないグループは大きなライブに呼ばれることは難しいのである。つまり、オタクと呼ばれるファン(以下オタク)の多さだけではなく、そのグループにいくらお金をかけてくれるのか、時間をかけてくれるのかにかかっているのである。

「オタクとは」

*¹オタクという言葉の語源は1980年代初期の秋葉原やイベント会場で、アニメやマンガ好きの人が相手に対して「お宅は~」を多用していたためだと言われている。そのため、以前はアニメやマンガ好きな人などを「オタク」に分類していたが、いつしか「鉄道オタク」や「アイドルオタク」のように裾野が広がり、今では”特定のものごとに熱狂的する人”を「オタク」と呼ぶようになったのである。

 様々な文化に対してオタクと呼ばれる人がいるが、アイドル、特に地下アイドルのオタクは大きく3種類に分けることができ、ハマる理由もさまざまである。
慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科の庄司有希氏、中村伊知哉氏の「新参ファンと古参ファンの共存によるアイドルプロモーションの一手法」を参考にすると下記の3つが出てきた。

1つ目は、「発見したいオタク」である。
発見したいオタクとは、地下アイドルの中から後にメジャーデビュー(地上とも呼ばれる)するようなアイドルや、地下アイドルの中でもトップになるようなグループを人よりも先に見つけ出したい人である。人より先に見つけ応援することで売れた時の「優越感」を満たすことができる。

2つ目は、「現場主義オタク」である。
主に現場と呼ばれるライブ会場に足を運ぶオタクである。
推しているアイドルグループのライブに高頻度でいるオタクはお前いつもいるな。の略「おまいつ」ともいわれる。
このようなオタクはライブだけでなくライブ後の物販にも参加しグループにお金を落としてくれるグループの存続を支える存在なのである。

3つ目は、「ガチ恋オタク」である。
現場主義オタクと似たところがあるがガチ恋オタクはライブでは推しメンだけを見ていることが多く物販でも推しメンにのみお金をつぎ込むことが多い。疑似恋愛的な感覚である。

このようなオタクによって地下アイドル界は支えられているのである。
しかし、お金は無限ではないのにハマり通い続ける一部のオタクはなぜ自分自身ではなくアイドルにお金を貢ぎ続けるのだろうか。

「分析」

DECAXの法則というマーケティング分析を使いその謎を紐解いていく。
DECAXの方法とは、2015年に株式会社電通が、コンテンツマーケティング向けの消費行動モデルとして提唱したものである。

この法則の大きな特徴は、広告などを使って消費者に直接アプローチするのではなく、消費者からコンテンツを発見してもらうところから始まる。という点である。
DECAXは、Discovery(発見)、Engage(関係構築)、Check(確認)、Action(行動)、Experience(体験共有)の頭文字を取ったものである。

地下アイドルも後のオタクになってくれる消費者がネットで検索や、実際にライブ会場でライブを見るところから始まるため発見から始まる。この方法を使いなぜハマりお金をつぎ込んでいくのかマーケティングの視点から分析する。
コンテンツマーケティングの時代に考えなければいけないDECAXの法則とは? | WEB CIRCLE MEDIA

DECAXの循環は下記のようになっている。

この図を基にひとつずつ地下アイドルのオタクについてみていく。

① Discovery(発見)

地下アイドルを発見するきっかけは、元々メジャーなアイドルが好きで身近で予約なしでもライブに参加できるため行ってみよう。やメジャーなアイドルのファンの中でも地下アイドルも応援しているファンに連れられて参加するパターンとツイッターなどネットで推しを探したくて検索したまたま見つけるなど発見の方法は現場に行くかネットでヒットする2パターンであることが多い。

② Engage(関係構築)

実際にライブを見ることでグループの色や曲、メンバーのビジュアル、ライブの楽しさなどを感じることができ好きかもしれない。と感じ気になるようになる。

ネットで検索した場合はYouTubeで上がっている公式のライブ映像やオタクが撮影可能ライブで撮影したライブ映像を見ることで写真やツイッターの文面だけではわからないアイドルとしての部分を知ることができ実際に現場に行ってみたい。と思うようになる。

③ Check(確認)

何度かライブに足を運ぶ、ライブだけでなくTwitterなどのSNSをフォローする、定期的にアイドル自身が行うSHOWROOMなどのネット配信に参加する。などしてグループだけではなくメンバー個人のファンへの接し方、アイドル活動への熱意などを確認する段階である。オタク自身はチェックの段階と感じすことはないが実際にはライブ以外の場面での活動もオタクの行動、心に影響しているのである。

④ Action(行動)

グループもしくはメンバー個人に対して発見、関係構築、確認を行ってきたが、行動は実際に購入する段階である。オタクでいう購入とは、グループ目当てでライブの予約をする、お金を出してメンバーとチェキを撮ることである。

お金を出し、時間をかけてでも会いたい、見たいと思うようになる。

⑤ Experience(体験共有)

実際にライブでメンバーと目が合ったなどの自分だけが得られた体験、チェキ撮影時に話した内容や撮影したチェキなどをアイドル自身、アイドルオタクが見られるSNSに上げる。ほかのオタクにアイドルとの関係性を見せることができ、アイドルへの自己アピールにもなる。

アイドルがツイートなどアップしたものをみて「いいね」などの反応をしてくれることにより承認欲求が満たされると同時に見てくれているのだと感じまたすぐに会いたくなりライブに足を運びチェキを撮りSNSにアップする。を繰り返していくのである。

この一連の流れを説明すると下記の図のようになる。

このようにしてオタクは地下アイドルにハマり時間をかけお金を落としているのである。

今回は「なぜ地下アイドルのオタクはメジャーでない地下アイドルを応援しているのか」について分析した結果、応援したいという気持ちの奥底には「承認欲求が満たされるから」であるとわかった。

アイドル側だけでなく応援する側も承認欲求はあり、互いを支えながら地下アイドル界隈は成り立っているのである。

〈参考文献〉

Eeomedia/オタク用語一覧|オタクとは何か?今さら聞けない「尊い」「沼」「ぬい」などの意味を一気に解説!/2022年4月07日https://eeo.today/media/2021/12/21/23995/ 

(閲覧日2022年6月14日)

大学院メディアデザイン学科/新参ファンと古参ファンの共存によるアイドルプロモーションの一手法/2014年(閲覧日2022年6月14日)

株式会社ウェブサークル/コンテンツマーケティングの時代に考えなければいけないDECAXの法則とは?/2022年4月8日

コンテンツマーケティングの時代に考えなければいけないDECAXの法則とは? | WEB CIRCLE MEDIA

(閲覧日2022年6月14日)

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