見出し画像

コレクションの動機は性別によって変わるのか

1. はじめに

コレクションとは、「美術品、切手、書籍などを趣味として集めること。また、その集めた物。収集品。」(weblio辞書)を指す。現代社会では様々な物に満ち溢れており、コレクションする物の定義は上記のものだけに留まらない。その収集品はフィギュアやぬいぐるみ、缶バッジなどの一般的な物に加え、石鹸や消しゴム、ペットボトルのふたなどのマイナーなものまで多岐にわたる。

マーケティングリサーチ会社のクロス・マーケティングが全国20歳~69歳の男女を対象に行った「コレクションに関する調査(2022年)」によると「なにか集めているモノはありますか?」という質問に対して40.9%の人が何かしら集めていると回答している。年代別に割合をみてみると、20代では47.3%、30代では42.7%、40代では42.3%、50代では40.9%、60代では31.4%といった結果になり、若者になるほどコレクターとしての傾向が高いということがわかる。

2. なぜ人はモノを集めるのだろうか。

人がものを集める理由としては、自己満足・同族優越感・完全主義・強迫観念・経済的価値・自己充足・社会的評価・所有欲といったような心理的側面が大きく影響していると考えられる。所有欲には、居場所の獲得、自己アイデンティティの確立、効力感とエフェクタンス、刺激の四つが含まれる。

男性には何かを達成したいという欲求があり、これは自己満足や同族優越感などといった項目に深く関わる。それに対し女性は、他人と共感したいという欲求があり、これは社会的評価や効力感とエフェクタンスといった項目に深く関わる。例えば、男性であれば達成感を得るために、キャッチアンドリリースの釣りを行う。女性であれば、SNSで話題の商品やインフルエンサーが紹介した商品を購入するといった傾向がある。

上記で述べたことから、男性は達成感を得るためにモノを集め、女性は他人から共感をしてもらうためにモノを集めることがわかる。

ここから考えられる結果として、「男性は自己満足(自尊感情)を高めるためにモノを集め、女性は他人からの評価を得たいがためにモノを集めるのではないか」と仮説を立てた。

この仮説が正しいものであるか検証するために、我々は文献やアンケートをもとに調査を行った。

3. 調査概要

私たちは流通科学大学に通う学生男女62人(男性37人、女性25人)にコレクションすることが自己満足と承認欲求にどれだけ影響するのかを調査するためのアンケートを行った。

調査内容としてはまず、モノをコレクションしているかを問い、その後自己満足・承認欲求それぞれについての質問を五問ずつ尋ね、これを①まったくそう思わない、②そう思わない、③どちらでもない、④そう思う、⑤とてもそう思うの五段階評価で回答してもらった。具体的には自己満足についての質問は「私は自分自身に大体満足している」「私は自分自身に大体満足している」「私は自分自身に大体満足している」等、承認欲求については「人と話す時にはできるだけ自分の存在をアピールしたい」「自分が注目されていないと、つい人の気を引きたくなる」「大勢の人が集まる場では、自分を目立たせようと張り切る方だ」等と聞いた。

ここでの質問文は自己満足については内田、上埜氏の「Rosenberg自尊感情尺度の信頼性および妥当性の検討 ―Mimura&Griffiths訳の日本語版を用いて―」(2010)に記載されていた尺度から、承認欲求については小島、太田、菅原氏の「賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度作成の試み」(2003)に記載されていた項目からそれぞれ抜き取り利用した。

4. 分析結果

ここで得た各回答を点数化し、自己評価・承認欲求それぞれについての質問の点数の平均を一人一人出した。このデータを利用して私たちは男女間でモノを集める際に私たちは統計ソフトであるHADを利用して最初に回帰分析を行った。その結果、女性では有意が確認できたが、男性には有意が確認できなかった。そのため私たちはT検定も行うことにした。t検定を行った結果、男女どちらも有意差は見られなかった。

回帰分析・T検定をそれぞれ行った結果どちらも有意差は見られなかった。そのため「男性は自己満足(自尊感情)を高めるためにモノを集め、女性は他人からの評価を得たいがためにモノを集めるのではないか」という仮説が正しいとは立証できなかった。

2つの分析を行った結果、男性はモノを集めることによって得られる自己満足感と満たされる承認欲求の点数には差が見られず、女性はモノを集めることが承認欲求を満たすよりも自己満足へとつながりやすいという事実が判明した。よって、我々が当初提唱した「男性は自己満足(自尊感情)を高めるためにモノを集め、女性は他人からの評価を得たいがためにモノを集めるのではないか」という仮説は立証することができなかった。

しかしながら、分析を行うために得たアンケートのデータをもう一度整理しなおし我々は次のように考察を行った。モノを集めていると回答した流通科学大学に通う学生が収集しているモノを男女で比較し分類すると、以下の結果となった。

男性が集めるモノと人数は、漫画7人、推しのグッズ(アニメ・タレント含む)6人、カード3人、ゲームソフト2人、フィギュア2人、少数派の回答としてレコード、写真、楽器、服、トミカ、釣り具という結果が得られた。それに対して女性は、推しのグッズ(アニメ・タレント含む)9人、服3人、CD・DVD2人、少数派の回答としてぬいぐるみ、本を集めるといった結果が得られた。

この男女が集めるものを比較してみると、男性が集めるモノは種類が多く個人によってばらつきがあるが、女性が集めるモノにはばらつきはあまりなく大体まとまっているといえる。

この男女が集めるモノの傾向の比較から我々は「男性は個人によっていろいろなモノに興味を示しモノを集めるが、女性は個人によって集めるモノの差があまりないため趣味嗜好にある程度の共通性がある」のではないかと考察した。

参考文献

クロス・マーケティング コレクションにおける調査(2022)(閲覧日2023年6月8日)https://www.cross-m.co.jp/report/life/20220302collection/

Rosenberg, M. (1965) ROSENBERG SELF-ESTEEM SCALE(閲覧日2023年6月29日)https://fetzer.org/sites/default/files/images/stories/pdf/selfmeasures/Self_Measures_for_Self-Esteem_ROSENBERG_SELF-ESTEEM.pdf

内田智宏・上埜高志(2010)「Rosenberg自尊感情尺度の信頼性および妥当性の検討:Mimura & Griffiths訳の日本語版を用いて」(閲覧日2023年6月29日)https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=3638&file_id=18&file_no=1

小島弥生・太田恵子・菅原健介(2003)承認獲得欲求・拒否回避欲求尺度作成の試み(閲覧日2023年6月29日)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpjspp/11/2/11_KJ00002442204/_pdf

いいね、フォローしてくれると学生のやる気につながります