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病気の原因を探るアプローチの仕方

今日は病気や身体の不具合の原因について医療がどのように捉えて、どのようにアプローチしているのかを考えてみたいと思います。

伝統医学と西洋医学による病気の原因の捉え方

世界には様々な医療があります。
それらの医療において、病気の原因はどのように捉えられているでしょうか?伝統医学の代表的なものには中医学或いは漢方、アーユルヴェーダやユナニ医学というものがありますが、中医学や漢方においての病の捉え方は、気・血・水や陰陽五行というもののバランスの乱れが病や不具合の原因と捉えています。またアーユルヴェーダではトリ・ドーシャと言われる3つの病素と言われるもののバランスの乱れと解釈しています。ユナニ医学でも人間を構成する基本体液を4つに分けて、それらのバランスの乱れが病の原因と捉えています。それら伝統医学の共通点としては全て、病に至るプロセスに着目し、「身体のバランスの乱れ」が不具合や病気の原因と捉えています。

一方、西洋医学ではどうでしょうか。西洋医学では病気それぞれに異なる原因があり一概に原因を論じることはできません。そこにはバランスの乱れという解釈はほとんど出てきません。例えば、肺炎という病気は肺に炎症が起こっているという現象を表しているに過ぎず、西洋医学の病名のほとんどが病気のプロセスに着目しているのではなく、「肺炎=肺の炎症」のように、既に起こっている現象をパターンが類似したものを一つの集合体としてカテゴリーに分類して診断体系を作っています。そして、その肺炎というカテゴリーに分類したものの中において、その共通点から原因を捉えていくというアプローチをしていきます。つまり肺炎という肺の炎症が起こるのは、調べていくとどうやら細菌やウイルスなどの病原体が肺に浸潤することによって、肺に炎症が起こり、呼吸が苦しくなるのだなという具合です。

伝統医学と西洋医学のどちらの捉え方が良いかという事ではなく、アプローチの仕方が全く違うという事です。そしてその結果、伝統医学も西洋医学もそれぞれが異なる得意分野を持つことになりました。

病気に至るプロセスにおける伝統医学と西洋医学

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私は病気に至るには基本的に上のような健康→不具合→病気というプロセスをたどると考えています。

伝統医学である中医学・漢方、アーユルヴェーダ、ユナニ医学においては健康な状態というのは身体の中で全てがバランスが取れて循環していると捉えていますが、そのバランスが乱れると不具合が起こると考えますので、目に見える病気という診断カテゴリーに当てはまる前の段階から力を発揮します。例えば、検査しても異常が見つからず西洋医学的な診断カテゴリーには入らないけど、身体が怠い、のぼせる、手足が冷える、体が重たいなど、西洋医学ではいわゆる不定愁訴と言われる所が得意分野になります。バランスが崩れることによって生じる身体の変化を捉えて、そのプロセスを辿り、そのバランスを元のベクトルに戻すよう働きかけます。同時にどうしてバランスが崩れてしまったのかと言う事を考えます。

一方、西洋医学では基本的に客観的に目に見えて明らな異常が見つかり、検査で異常が検知された段階で、病名という診断カテゴリーのどこかに分類されて初めて力を発揮します。例えば、血液検査等で明らかに炎症所見があり、画像検査でもそれを裏付ける異常所見が目に見えて明らかな場合、かなり力を発揮する事ができます。例えば、先ほどの肺炎においては、明らかに呼吸困難という症状があり、呼吸回数が増えて、酸素の値も低下しており、胸の聴診で肺に雑音が聞こえ、血液検査でも炎症の値が上がり、またレントゲンやCTで肺に異常な浸潤影というものが映っているという全て客観的な所見を持って、これは明らかに肺炎が起こっていると判断されます。

さらに西洋医学においては、その原因をたった一つに求めていく傾向にあります。例えば、肺炎においては痰を調べて、痰の中に特定の細菌が増殖しているという証拠を見つけて、「これが根本的な原因」だといって、その細菌に効果がある抗菌薬を使って治療をします。特に救急の現場などは明らかに客観的な異常が起こってくる人ばかりなので、西洋医学はかなり強力な力を発揮します。そうやって目に見えて、かつ診断カテゴリーに分類されて効果を発揮する西洋医学は医療の発展に大きく貢献しています。しかし診断カテゴリーに分類される前の段階においては、西洋医学はなかなか対処していくのは難しいのが現状です。頭痛に対して痛み止めを使って症状を抑える事は出来ても、根本的に頭痛が起こったプロセスを捉えたり理解するというアプローチではないので根本的な解決にならないことも多いのです。

まとめ

伝統医学と西洋医学はどちらが良い悪いというのはなく、アプローチの仕方と捉え方が全く異なるため、得意分野が違います。病気をプロセスと捉えることで、それぞれがどのように、そしてどの段階でアプローチしている手法なのかが分かりやすくなり、頭も整理しやすくなるのではないかと思います。次回は、西洋医学のアプローチの仕方で重要な「エビデンス」について考えていきたいと思います。


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