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ChatGPTの出現によって医療はどう変化するのか?

最近話題のChatGPTですが、本当に驚くほど便利ですね。破壊的テクノロジーとはまさにこの事で、恐らく社会のパラダイムシフトになるかと思っています。これは単なるトレンドではなく、世の中が一変する程のイノベーションだと思います。

そこで今回は、ChatGPTの出現により、今後医療がどのような未来になるのかについて考えてみたいと思います。

ChatGPTとは

ChatGPTはOpenAIという人工知能研究所が2022年11月末にリリースしたチャット形式の大規模言語モデルです。ChatGPTを一言で表現すると「人工知能(AI)であるコンピュータープログラムが、こちらが聞いたことや命令にほぼ何でも的確かつ最適に、また超自然な会話で答えを返してくれるチャットボット」とでも言いましょうか。しかし、それ以上のものです。

これまでGoogleでググって、その検索結果の中から自分でそのWebページを見にいって欲しい情報にアクセスしていたと思いますが、ChatGPTは自分が知りたいことや得たい情報を普通の会話型質問形式で打ち込むと、AIがまるで人が答えたかのように流暢な言葉で返してきます。言葉だけを見ると、人が答えたのか、AIが答えたのかもはや判断することは不可能なレベルです。ChatGPTはWeb上の巨大なテキストデータセットや書籍、記事、ニュース、会話などのあらゆるデータから学習し、人間が話す言葉を理解し、適切な回答を生成するドラえもんのような存在で、さらにユーザーとの会話を通じて新しい知識や情報を取得することもできるようです。

「相対性理論について、300文字以内に5歳児でも分かるように説明して」
「投資家にプレゼンしたいんだけど、どうやったら上手く心を動かせるようなプレゼンにできるか構成を考えて」
「今冷蔵庫に玉ねぎとほうれん草があるけど、それを使って美味しくヘルシーなレシピを考案して」
「コロナ後遺症の原因はどう考えられてる?」
「日本の少子化問題をどう解決したらいい?」
など、正解のある問題から、正解のない問題までありとあらゆることに対して超自然な言葉で的確に返してくれます。

それだけではなく、テーマを指定して小説を書かせたり、ラップの歌詞を作らせたり、文章の要約をさせたり、Excelの欲しいデータを得るための関数を出してくれてデータ整理のためのかなり時短できたり、エンジニアがプログラムを書くのに、的確に命令すると自動でプログラムを書いてくれたり、学生にテストする試験問題を自動で作成してもらったり、、

そうです。超天才の絶対的見方が現れたという感じです。
私はChatGPTを「何でも答えてくれる品の良い超天才お兄さん」と呼んでいます(笑)

使用上の注意点としては、テキストデータセットから学習して作成しているため、ときどき明らかに間違っていたり、架空のものをさもあるかのように回答してくることもあるので、完全に鵜呑みにするのは危ないと思います。

今後急速にAI診療の流れが起こりうる

しかし、今見てきたように、AIの精度が現時点でここまで来ている事に多くの人が驚愕したのではないでしょうか。私は正直衝撃を受けました。そしてこれからさらにその精度が向上し、出来ることもかなり広がると思っています。

その上で、医療に関してどう変化が起こると予想できるかというと、私が以前noteに書いたAI診療がもうすぐ目の前に来ようとしているという事だと思います。もう少し時間がかかると思っていましたが、このペースで進むと数年以内にAI診療が一般化すると思っています。

AI診療の流れは、患者さんが何か症状があって受診すると、診察前の問診を答えていくだけで、AIが可能性のある病気の鑑別を絞ってくれ、診断をさらに絞る上で行うべき検査を問診の情報を踏まえた上でAIが推奨し、それによって行なった血液検査や尿検査、CTやMRIの検査などをAIが解析し、AIによって自動的に診断がなされるようになると思われます。そしてさらにその診断をもとに、これまで蓄積されたデータセットや論文、ガイドライン等から最適な治療やマネージメントについてAIが推奨してくる。そういうフローがAI診療で行われることになると予想されます。さらにテクノロジーの進歩で検査自体も非接触・非侵襲で身体の異常を検出できるようになってくると思われます。

今後予想されるAI診療の流れ

これまで医師が教科書を読んで理解し、暗記して、論文やガイドラインを読み込んだり、頭で考えて悩みながら答えを出した問題でも、AIが恐らく医師が行うよりもより高い精度で見落としの少ない診断が高速でなされる可能性が高くなると思います。

ちなみにChatGPT自体にChatGPTが今後医療にもたらす変化について聞いてみたところ、以下の回答が返ってきました。まさに、驚きのクオリティーの回答です。

「ChatGPTは今後医療にどのように変化をもたらすでしょうか?」に対するChatGPTの回答

AI診療を実現するために

では、AI診療を実現するためにはどういった環境が必要でしょうか。
まず病院で行った検査データや画像データ、内服薬の情報やアレルギー情報、治療内容及び治療を行った結果などの全てのデータがデータセットとして、インターネット空間であるクラウド上にストックされる必要があるため、電子カルテがクラウドに結びついている必要があると思います。クラウド型の電子カルテも最近出てきています。クラウド上のデータには臨床データばかりではなく、論文などの医療文献、ガイドラインなども含まれています。

そしてAIはクラウド上のデータセットから学習していきます。
電子カルテに情報が入力されると、それに応じてAIがリスポンスする。そんな流れになるのではないかと思います。

AI診療環境

AI診療の位置付け

以前にも書きましたが、AI診療はあくまでも診療補助です。しかし、それでも最強の助っ人になってくれることと思います。もちろん最終的な責任は人間である医師が取る必要があると思いますが、AI診療が普及することで、医療設備が整っていれば、地域間による医療水準の格差がかなり小さくなり、どこでもグローバルスタンダードなマネージメントが出来るようになると思われます。

一方で、これも以前に書きましたが、AI診療はEvidence-Based Medicine(EBM)の科学的根拠(エビデンス)の部分がAIに置き換わっていくという位置付けになり、決して人間である医師が必要なくなるというわけではないと思います。

EBMの4つの要素とAI診療の位置付け

人間医師の役割

これまで見て来たように、ChatGPTの出現はAIの進化のスピードを物語っており、それは医療においてAI診療が現実的なものになることを予想させるには十分ではないかと思います。

その上で、AI診療によって我々人間医師はどうなっていくのでしょうか?

私はAI診療の導入によって、医師の役割が大きく変わってくると考えています。もちろん救急領域や外科領域、手技が必要な領域などまだロボティック技術によって十分に置き換えられないものも現実的にまだあるので、そういった領域は引き続き残ってくると思われます。しかし、内科領域や皮膚科、病理科、読影中心の放射線科などは大幅に業務負担が減ってくるものと思われます。

それによって、私たちの役割は現代医療でありがちなデータ解釈と治療を中心とした患者さんとのやりとりから、患者さんの価値観や意向、過去の体験や感情、これまで歩んできたプロセスに向かい合う事に役割がシフトしていくのではないかと考えています。より多くの時間を患者さんという一人の人間にしっかり向き合うことが出来るようになる、そうならざるを得ないと思っております。それがこれまで医療が少なからずないがしろにし、無視してきた部分だと感じております。

私は医療の近未来がAI診療の導入によってそうなっていくと考えています。それは喜ばしいことと私は捉えていて、AIという機械化が進めば進むほど、逆に私たち人間医師によってより人間らしい本来の温かみのある医療が提供できるのではないかと思っています。

最後までお読み頂きまして誠にありがとうございます。



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