商品の売り方もろもろ
第1 はじめに
この話は、何かの商品を顧客に対して相対で販売する方にご覧いただけたらと思います。商品の売り方についての話です。
なお以下の話では投資信託(投信)の話が出てきますが、それはあくまで題材に過ぎません。投信の売買そのものに関して何かの提言を行ったり勧誘を行ったりするものではないことをご注意下さい。特に以下の話はインデックス型投信の購入を勧めるものではありません。投信の売買にあたっては十分にご検討の上で自己責任にて売買なさることが必要です。
第2 ファイナルシャルプランナー(FP)との面談
連れ合いはFP2級の取得を目指しています。彼女にはあれこれと取り組む課題があるのですが、その一環となります。
FPになった後の活動をイメージするため、彼女は現役FPとの面談に行って来ました。テーマは「資産形成をどうすれば良いのか」です。面談に応じて下さった先生は証券会社に所属していらっしゃるとのことで、良い商品をお勧め頂いたら勿論購入することになります。
さて、その先生はアクティブ型投信をお勧め下さったのですが、連れ合いにはなぜアクティブ型投信を勧められたのかが分かりませんでした。一応、アクティブ型投信の方が利益が高いという説明があったそうですが。
第3 投信とは
私の理解では、資産運用で十分な収益をあげる力量のない人か資産運用をやっているヒマのない忙しい人がプロフェッショナルに資産を委ねて利益を受け取るのが投信です。資金の預け先の力量を信じて任せるのがアクティブ型、経済指標というモノサシに従う(つまり資金の預け先の力量自体は信用しない)ことを前提に資金を委ねるのがインデックス型と理解しています。
本来の投信の意味から言えばアクティブ型を選ぶのが正論ということになります。なので、そういう意味では、FPの先生の仰ることは間違っていません。
第4 アクティブ型とインデックス型との成績比較
一方、アクティブ型投信とインデックス型投信との成績を比較したデータは色々と公表されています。下図はそんなデータの一つです。
Web記事「アクティブファンドをおすすめしない理由とは?インデックスファンドには勝てないのか」によれば( https://money-sense.net/1172/ )、上の図は「6ヶ月時点でどのカテゴリーでも過半数近くがインデックスファンドに負け」ており「10年でみればほとんどのファンドがすべてのカテゴリーでインデックスファンドに負けてしまうという結果になってしまってい」ることを示すそうです。
こういう結果を見ると、正論はさておき実質的には顧客に不利益をもたらす商品をFPの先生は勧めたことになります。連れ合いの言うことが事実なら、その先生は嘘をついたことにもなります。これは一体どういうことなのか。
第5 FPの都合
改めて、アクティブ型投信とインデックス型投信とを適当にピックアップしてみました。
アクティブ型投信A。2020年初めの価格が約16,000円、2024年4月24日の価格が27,633円、2倍に少し足りない程度です。管理費用は1.617%。
インデックス型投信B。2020年初めの価格が約12,000円、2024年4月24日の価格が23,611円、やはり2倍に少し足りません。管理費用は0.05775%。
利益が高いという話はどうなったのかという点もあるのですが、それより管理費用に注目です。1.617%および0.05775%。アクティブ型投信の管理費用はインデックス型投信のそれの約28倍となります。証券会社からすればどちらを勧めたくなるのかは一目瞭然というものです。
「FPの先生が自分の利益を優先して顧客が損をする可能性の高い商品を売りつけようとした」などと思って済ませるだけならこうして文章にする意味はありません。そもそも誤解があるかも知れません。
文章にするほど重要なのは、顧客の信頼を勝ち取りつつ利益率の高い商品の購入へとつなげるにはどうすべきかという問題がここに存在することです。
アクティブ型投信にしても、価格上昇が十分に大きければ管理費用が高くても差支えないのです。商品を販売する立場の人が純利益最大を目指して販売活動を行うことはその人に課された義務でもあります。でも顧客の利益を犠牲にして利益を得ることは商道徳としても問題があるし、それが将来の売上と利益とを犠牲にすることにつながるなら、それはかえって義務を果たさないことになります。
ではインデックス型投信を勧めて顧客の信用を得ると良いのでしょうか。それは薄利多売を前提にするやり方です。薄利多売を前提にするなら、多売ができるほどの顧客を早急に獲得できなくてはなりません。どうやって、どれほどのコストをかけて、顧客を獲得すれば良いでしょうか。多くの競争相手がいる状況、知名度が低くて集客が難しい状況、そんな状況では採算が取れずに撤退することとなるでしょう。
こういった背景があるので、「顧客の信頼を勝ち取りつつ利益率の高い商品の購入へとつなげるにはどうすべきかという問題」が重要なのです。
今回の事例であればアクティブ型投信を勧めるだけでなくその売買までコンサルティングして実績をだすといったところでしょうか。具体的なところは想像できかねますが、定期的な面談を繰り返してその時その時でベストの投信を勧めれば上の問題が解決できるかも知れません。でも私が知らないだけでそういう行為は違法なのかも知れません。合法にそういう問題を解決する方法は私にとって雲をつかむような話となります。その点で言うは易し行うは難しと言わざるを得ませんが、取り組まないと差別化を図れず価格競争および集客で消耗するばかりになります。こういった点は何を売る場合には同じことと思えるのです。
第6 まとめ
・薄利多売は前提事項がある場合に限り成り立つ選択肢です。
・何かの商品を顧客に対して相対で販売する場合、顧客の信頼を勝ち取りつつ利益率の高い商品の購入へとつなげるにはどうすべきかは重要な問題になります。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?