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『留守番』

 僕だけ、置いてけぼりをくらってしまった。

 昨日は、雨音を聞きながら、思いっきり昼寝をした。夜の雨音は心地よく、大きなベッドを独占してたくさん眠れた。一人でもよく眠れた。ベッドの端まで届かない手と足を、思いっきり伸ばして眠った。

 一晩、留守番をするのは、初めてだった。

「大阪に行くの。ご飯はちゃんと用意しているからね。」
って彼女は言ってた。

あと、なんて言ってたっけ。

「私も、向こうに泊まるの初めてだから。君と同じ。緊張してるんだよ。」

と、僕の鼻先を、つんと触って出かけて行ったんだっけ。僕は、うまく返事が出来なかったけど。彼女の指の匂いは、ちゃんと覚えている。

 雨で、ベランダのお花が、よく育ちそうだ。

 僕はまた眠る。雨の中を歩いて戻る彼女の足音を、聞き逃さないように、耳だけは、きちんと立てて目を閉じる。しっぽは巻きつけた。寒くない。

昨日からずっと、催花雨の音ばかりが、僕の耳にこだましている。
 

僕の書いた文章を少しでも追っていただけたのなら、僕は嬉しいです。