浅草芸人列伝　この芸人はスゴイ！〜おぼんこぼん師匠から学ぶ米中対立

2020年8月12日 20:54

【漫才協会所属。誰よりも舞台袖で他の芸人のネタを見てきた男が綴る意外な芸人のスゴイところ】

今回も前回に引き続き、浅草芸人列伝番外編「芸人目線で見る政治」シリーズをお送りしたいと思います。

今回のテーマは「おぼんこぼん師匠から学ぶ米中対立」。

本題に入る前に質問でーす。「資本主義」と「共産主義」って聞いたことあります？

私も昨日初めて聞いたんだけど、どうやら資本主義ってのが「頑張ったら頑張った分ご褒美もらえるよ」っていう世の中。で、共産主義ってのが「いやいや、それだと差が出来ちゃうから、みーんな同じご褒美にしようよ」っていう世の中。らしい。違ったらゴメン。

芸人で言うなら「ウケたやつがたくさんギャラもらう」のが資本主義。「ウケてもスベってもギャラ一緒」が共産主義。って事かな？

一見共産主義の方が優しそうだけど、「俺こんな頑張ってるのにギャラ一緒ってどういう事や！」って不満に思う人もいる。

どちらの考え方も良いとこ、悪いとこ、あるような気がします。

そこで聞いて欲しいのがおぼんこぼん師匠の話。

今や「世界一仲の悪い漫才コンビ」として有名になったおぼんこぼん師匠。それが明るみに出たのが、今をさかのぼること一年半前、2019年2月27日に放送された「水曜日のダウンタウン」でした。

後の世に「227事件」として語り継がれる歴史的事件。漫才協会の内部では暗黙の事実として知られていた二人の仲の悪さ。それが世界中に広められ、拡散された日です。

この二人、なぜ仲が悪いのか？

本当のところはお二人のみぞ知る。いや、もしかしたら本人たちにも分からなくなってるのかも知れません。

そこで私個人の考えを勝手に発表しますと、それはイデオロギー闘争。思想の違いです。

以前にもこの連載の中でお伝えした「新日本プロレス対UWF」の抗争。「相手の技を受けるプロレス」と「よりリアルに近いプロレス」の戦い。

「ウケたら何やってもええねん！」というおぼん師匠。世間に「仲が悪い」という事が明るみに出たとたん、それを舞台上でも番組内でもネタにし、笑いを取りに行きます。

仲が悪いことを知ってるお客さんは大爆笑。しかし、その事実を知らないお客さんはポカーン。ウケる時とウケない時の落差が激しい諸刃の剣。

それに対し「エンターテイメントは夢を見せなアカン。裏のドロドロは見せんでええ」という考え方のこぼん師匠。舞台上でおぼん師匠が「うちら仲悪いでっせー」と公表することにあまりいい顔しません。

この二人の考え方、まさしくアメリカと中国の対立と同じです。

「ウケたら何やってもええねん！」すなわち「儲かるなら何をやってもいい！」アメリカ的資本主義、新自由主義のおぼん師匠。しかしこれは儲かる人と儲からない人の格差が激しい諸刃の剣。笑う人、笑わない人に分断される格差社会を生みます。

逆に「裏のドロドロは見せなくていい」「内部の腐敗は隠せ」中国的言論規制をかけ夢を与える派のこぼん師匠。そして長年練られた熟練のネタは安定感抜群、確実にウケます。

おぼん師匠の方は最近ツイッターを始め、次々とツイートを発表。コンビを組むきっかけ話や、自宅でトロンボーンを吹く姿などを投稿。トランプ大統領同様に自分の主張をアピールしています。

それに対する、こぼん師匠。最近はツイートも控えめ。もしかしたら中国製アプリ「TIKTOK」に乗り換えるのでは？という噂も立っています。

「米国」「中国」と同じように対立する「おぼん国」と「こぼん国」。両大国に挟まれる漫才協会の小国たちは右往左往。

特に「おぼん国」のおぼん首相は「お前どっち派や、こぼん派やろ！」と他の国々に圧力をかけて来ます。「なんやお前、こぼんとメシ行くんか！もうお前とは縁切りや！二度と顔見せんな！」と、すぐに最後通告を突きつけて来ます。

しかし翌日には「今日メシ行こーや」と昨日のことがまるで嘘のように満面の笑みで近づいてきます。外交上手。

今や米国と中国は互いに対立し合い、米中会談などは夢のまた夢。とても実現する目途は立ちませんが、対立中であるにもかかわらず「おぼん国」と「こぼん国」の「おぼんこぼん会談」、すなわちＧ2サミットは、今、浅草東洋館の舞台上で毎日行われています。

舞台に立てば思いはひとつ。目の前のお客さんをいかに楽しませるか。イデオロギーの違いを超えて繰り広げられる「米国ラスベガスショー」と「中国雑技団」の芸の応酬。

「おぼん国」と「こぼん国」の存在にこそ、世界平和のヒントが隠されていると言っても過言ではありません。「おぼんこぼんの握手こそが世界平和の架け橋」なのです。

以上、おぼん派でもこぼん派でもなく、おぼんこぼん派。永世中立国、スイス金谷がお伝えしました！現場からは以上です！

金谷ヒデユキ

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