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少年院在院者の「うそ」

少年院には3年間勤務しました。今思うと、すごく貴重な経験だったと思います。その中で、学んだことの一つが、
「少年は嘘をつく」
ということです。もう、とにかく、とりあえず嘘をつきます。例えば、少年院では目をつぶって、静かにしておかないといけない時間があります。巡回して一人一人を確認していた時に、しっかりと目が会っても「目をつぶっていた」と言い張ります。
何か、不正なものを隠していた場合も、目前で隠している行為がみつかってもしらっばっくれます。ふてくされて、泣いて、開き直ってしまいます。「怒らないから」となだめすかしても簡単に認めたりしません。

怒られっぱなしの人生

当たり前ですが、子どもというものは大人と違って、力が弱く、知力が未熟で、権力も財力もありません。そんな子供が自分を守るための武器と言えるのは、「嘘」だけだけなんですよね。
少年院までくる子どもって問題行動のエリートです。相当悪いことをして、それも何度も何度も繰り返さないと少年院までくることはできません。
問題行動を起こして叱られる。叱られて傷つく。傷つくから問題行動が治らない。親に叱られ、教師に叱られ、地域からつまはじきにされ、警察で叱られ、家庭裁判所で叱られる。叱られっぱなしの人生。

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きみは何をおそれているの?

大人としては、正直であること、誠実であることを子どもに教えたいというという気持ちで「嘘はいけない」と子どもを叱るのですが、でも、子どもにとっては嘘を取られたら自分自身を守れないと感じるのです。
子どもの話は嘘があると思って聞く必要がありますし、その嘘をちゃんと受け止めて、彼は何をおそれているのか、何から自分を守ろうとしているのかを考えなくてはいけません。
それを見極めた上で、怖がることはないと説明し、徹底して寄り添って初めて、少年は本当のことを語りはじめます。

虐待をされていない少年はいない

少年院に入院するすべての子どもは虐待経験があります。100%と言っていいです。
一般的な虐待だけではなく、放置や過干渉も含めて何らかの形の虐待が認められます。彼らにとっては、親を含めて世界中の大人から虐待を受けている状況なのです。そこで、虐待されてる同士が傷を舐め合うように寄り添って不良集団が出来上がります。
そんな彼らの状況をわかってあげる必要があるのです。
甘やかすのではなく、良いことと悪いことをちゃんと評価し、誤魔化したり、自分たちを蔑んだりしない大人からの、公平なジャッジを彼らは望んでますし、時間がかかりますが、そういった大人の言うことなら彼らはちゃんと聞きます。

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立ち直るのは少年自身

少年院では、さまざまな教科教育・職業訓練等を行うために、外部から講師を招いてます。
設備を充実させて、中学の卒業課程を修了させたり、高校卒業認定試験に向けた学習、各種の資格免許を取得させるための設備を用意して、職員も本人に対しての指導助言を行ってます。
でも、結局は、馬を水辺に連れて行っても、馬に飲む気がなければ飲ませられないと同じように、本人が立ち直ろうと思わない限り、改善更生はできないのです。
逆に、立ち直る意欲があれば、本人が進んで自分のやるべきことをやるので、職員は何もしなくても勝手に立ち直ります。

私たちは、「なりたい大人モデル」を示せているの?

では、具体的にどうやったらいいのかなのですが。
一番の方法と思っているのが、「なりたい大人」モデルを示すことです。
少年が「将来あんな大人になれるように頑張ろう」と思えるような大人であるかどうか。
自分を振り返ってても、なかなかに難しいことだとは承知しているのですが、少なくとも、難しい顔して不機嫌そうな大人なんかはなりたくないので、なんか「人生って楽しいよー」的な、「大人になるっていいもんだよ」って思ってもらえるような大人でありたいとは思っています。
だって、日本人の自殺者数は減少傾向なのに、子どもの自殺率は逆に高くなってんだもん。


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