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劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は90分の映画の二本立て!!

 『映画大好きポンポさん』という漫画があります。先月から劇場アニメが公開されております。

 私がこの映画を観て最初に抱いた感想は、この映画、長すぎじゃね? でした。

 この映画の上映時間はキッカリ90分です。(原作への強烈なリスペクトを感じます)
 にもかかわらず、体感では180分あったのです。
 しかし、実際に確認したところ、上映時間はキッカリ90分でした。

 なんというか、時空が歪んだ感覚に陥りました。

 あきらかに90分とは思えません。私は絶対180分観ました。
 厳密に言うと90映画を2本観ました。

 理由は明白でして、この物語の主人公は、一貫してジーンくんというちょっとおかしいくらいの映画大好き青年なのですが、その相棒というか準主役が途中で変わるのですよね。キッカリ半分で。

 前半は、天才プロデューサーポンポさん。
 後半は、劇場アニメオリジナルキャラクターのアランくん。

 その準主役が入れ替わるタイミングが、(私の体感では)キッカリ90分だったのです。

90分の映画が2本入った(体感)180分の超高密度映画

 なんだか訳がわからなくなってしまってきたので、最初にこの映画の感想を点数で申し上げますと、100点満点中180点です。(体感180分だけに)

 前半の(体感)90分で、私は数えきれないほど泣きましたし、見たくて見たくて仕方がなかった、原作のクライマックスシーンに「こうきたかー!」としびれました。

 そして大満足で、残すはウイットなオチだけだと思っていたら、そっからさらにキッカリ90分の映画を観た気分になりました。

 ちょっと密度がおかしいです。

 原作マンガでは、ジーンくんが編集を行うシーンはたったの4ページです。しかし、劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は、むしろここから始まります。

 そう、劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は、ジーンくんがポンポさんに導かれ、ニャカデミー作品賞を獲得する『MEISTER』のクランクアップまでの奇跡を描くキラッキラな(体感)90分の前半戦。

 そして『MEISTER』の編集作業にジーンくんが悩んで悩んで悩みまくり、あがいてあがいてあがきまくる、ギラッギラな(体感)90分の後半戦。

 超豪華二本立てなのです。

 そして私はこの(体感)90分の後編で、劇中数えきれないほど泣きましたし、「おいおい、ちょっとどうすんのこれ?」という展開からの、ブレイクスルーにしびれました。最高です!

 これ以上詳しくは言えません。なにせ原作漫画ではたった4ページしかないシーンなのです。ほぼほぼ原作にないシーンなのです。ぜーんぶ強烈なネタバレです。

 いいから劇場に行け。としか言えません。

 ちょっとだけ感想を言いますと、これは、長年アニメの世界に身を投じてらっしゃる平尾孝之監督でないと描けない物語であると思われます。それくらい「アニメ(というかシネマ)」についての専門性の高い物語で、かつ非常にシビアで残酷、そして奇跡が起こる物語です。


劇場版と原作の見事な対極構造

 さて、ここから余談です。(余談なのに長い)

 劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は、豪華二本立ての映画です。

 そして、この映画の公開直前に刊行された原作漫画『映画大好きポンポさん3』は、ジーンくんが超豪華な映画を二本作るマンガです。

 そして、原作マンガ『映画大好きポンポさん3』は、劇場アニメ『映画大好きポンポさん』と対をなすの物語です。 

 劇場版『映画大好きポンポさん』の後半パートは、大量に撮影したフィルムから、編集作業を行うジーンくんが、切って切って切りまくるお話です。

 一方、原作マンガ『映画大好きポンポさん』は、今まで登場したキャラクターたち全員に最高の見せ場がやってくる、盛って盛ってもりまくるお話です。

 さらに、劇場版『映画大好きポンポさん』の後半パートは、ジーンくんが、編集作業で切って切って切って切りまくるシーンを、とても丁寧に丁寧に丁寧に描写する構成です。

 一方、原作マンガ『映画大好きポンポさん』は、ジーンくんがやりたいこと全てを盛って盛って盛りまくるために、ほぼ一コマのカットも無駄せず、描写を削って削って削りまくる構成です。

 さらにさらに、劇場版『映画大好きポンポさん』の後半パートは、ずっと失敗をしてこなかったエリートの挫折が描かれるシナリオです。

 一方、原作マンガ『映画大好きポンポさん』は、ずっと鳴かず飛ばずので失敗を繰り返してきた不器用な男の成功が描かれるシナリオです。

 ちょっとビックリする位、アプローチが異なります。

 アニメとマンガと言う、「媒体の差」もあるかと思いますが、それ以上に、劇場アニメを手掛けた平尾孝之監督と、原作マンガを手掛けた杉谷省吾[人間プラモ]先生の、作家性の違いからくるものに感じてなりません。


まとめ!

 劇場版アニメ『映画大好きポンポさん』は90分の映画が2本入ったミラクルにお得でスーパーに面白い映画!

 さらに、原作マンガ『映画大好きポンポさん3』を事前に読んおけば、楽しさ倍増!

 いいから、劇場版アニメ『映画大好きポンポさん』を観よう!!
 そしていいから『映画大好きポンポさん3』を買って読もう!!



















まとめの後の感想

 まとめた後に続きがあって、誠に申し訳ありません。

 そして誠に申し訳ないのですが、まとめた後に感想があるということは、ここから本音を書いてしまうと言う事です。

 そして、ここからは、ガッツリとネタバレを書いていきます。

 私は、さきほど劇場アニメ『映画大好きポンポさん』は、100点満点中180点と言いました。

 さきほどは「体感上映時間が180分だから」とウソぶきましたが、私は、この映画は二本分の密度があると言っています。であれば、本来点数は200点満点であるべきです。

 そう、私は劇場版『映画大好きポンポさん』を、200点満点中、180点だと思っています。
 厳密には、前半戦が100点満点100点。
 そして、後半戦は100点満点80点だと思っています。

 全体としてはとても面白かったです。それはもう、とても面白かったです。

 私が個人的に『???』と感じたのは、たった一箇所です。
 たった一人のキャラクターです。

 そのキャラクターは、ニャリウッド銀行の頭取です。
 彼は、窮地に陥ったアランくんを助けてくれる救世主です。

 一見、なんの問題も無いように見えます。とても素晴らしいです。

 頭の硬いお偉方達との会議を全世界に生配信して騙し討ちにする、胸がすく展開。
 そして、それでもなお「YES」と言わないお偉方達の目の前に颯爽と登場し、クラウドファンディングの時系列の融資額データの中から、お偉方の人達が見落としている、最も大事なデータを指摘して、すぐさま多額の融資を決める、人格溢れた大手銀行のボス。

 一見すると、完璧なストーリーです。ですが私は『???????』と思ってしまいました。正直言って、ガッカリしてしまいました。

 何故か?

 それは、銀行のお偉方の劇中での扱いです。

 お偉方は、最初、アランくんが制作した、制作ドキュメントを観て「数字を示せ」と失笑します。

 そして、自分たちが行っている会議が、全世界中継されていて、クラウドファンディングでとんでもない金額を集めるという「数字が示された」にも関わらず、「感動ではビジネスにはならない」と、頑なに拒絶をします。

 そんな状況下に、颯爽とニャリウッド銀行の頭取が現れ、鶴の一声で、勝手に融資を決めてしまいます。

 そしてこの時、お偉方はどうなったでしょう?

「やれやれ頭取にはかないませんね?」と言わんばかりに、手のひらを返してしまいます」

 お偉方はただのイエスマンです。

 そして、

 銀行の頭取は、「鶴の一声」で無茶振りをする困った人物です。

 この作品は物語ですので『MEISTER』が成功するのは決まっています。ですから、物語にとやかく言うのは野暮なのですが、私は現実の世界で、イエスマンのお偉方と、ワガママなトップが事業を失敗させてしまう現実を、山のように観てきました。

 だから正直言って目が覚めてしまったのです。
 せっかく、心地よい奇跡の物語に酔いしれていたのに。

 なんだ、ご都合主義じゃんって。夢が覚めてしまったのです。

 ご都合主義と言ってしまうと、ジーンくんや、ナタリーちゃんの才能を、神がかり的な審美眼で見抜くポンポさんの方が遥かにご都合主義なのですが、むしろそこが最も大事なポイントなのです。

 『映画大好きポンポさん』は、映画の申し子ポンポさんが、未知の才能を見つけてスターダムへと引っ張り上げる、ご都合主義な物語です。

 『奇跡』というご都合主義をポンポさんが引き起こして、周りをひっかきまわすお話です。

 そのポンポさんの対比として、ニャリウッド銀行の頭取は、明らかに力不足です。弱すぎます。しょぼすぎます。
 冒頭から数々の奇跡を起こしまくっているポンポさん比べて、ぽっと出の(しかもカワイらしくもない)よくわかんない爺さんでは、全然勝負になりません。

 そして、実はこれが一番重要なのですが、ニャリウッド銀行のお偉方には、いっさいの見せ場がありません。

 ただひたすらに、頭の硬さを露呈して、騙されたら狼狽して、エライ人が「イイね!」と言ったらコロリと意見をひるがえす。

 本当に悲しいくらいの小物です。

 そして、計6冊出ている原作マンガ、『映画大好きポンポさんシリーズ』には、そんなくだらない小物は誰一人と登場しません。

 みんな、何かしらのキラリ輝く一芸を持ち、その能力を遺憾なく発揮して最高に面白い映画を作るという奇跡を起こしていきます。

 だから私は、このクライマックス描写が、本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に残念でした。

 これではどっかのweb小説です。テンプレのざまあ系です。気づいたけどもう遅いとか言ってる長文タイトルです。
(別にweb小説や、ざまあ系が悪いと言う話ではないです。『映画大好きポンポさん』のテーマとは、明らかにミスマッチだという話です)

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 では、どうすりゃ良かったの?
 と聞かれると、答えはハッキリしています。

 劇中、お偉方の一人がアランくんに「感動ではビジネスにならない」と言います。そして「結果は数字示せ!」と言います。

 これ、ぜーんぶ、ニャリウッド銀行の頭取が言えば良いだけの話です。

 たったこれだけで、未知の原石を見つけ出す奇跡の天才ポンポさんと、目に見えるデータしか信じない、徹底的に非情な実利主義者のニャリウッド銀行の頭取という、究極の対比構造が出来上がります。

 そして、クラウドファンディングの成功が、アランくんの魂のプレゼンによるものであると、お偉方が、頭取を「数字で説得」をすれば良いのです。

 たったこれだけです。たったこれだけで、

 アランくんの情熱で先輩が動き、世界の人々が動き、お偉方が動き、そして最後の最後に、非情な頭取が動く。

 たったこれだけ、たったこれだけの工夫で、前半と後半は、完全な対比構造になります。

 もったいない……本当にもったいないと思います。

 『映画大好きポンポさん』は『奇跡』の物語です。
 ポンポさんという見た目とっても可愛らしい少女が『圧倒的な審美眼』によって、『必然の奇跡』に周囲に巻き込んでいく物語です。

 そしてその奇跡が、ジーンくんに波及し、アランくんに波及し、アランくんの先輩に波及し、全世界に波及していく物語です。

 そんなわけで、私の脳内では、勝手にクライマックスが書き変わってしまっています。(繰り返しとなりますが、物語の構成は完璧です。単に私の肌感に合っていなかったというだけの話です。申し訳ない。だからまとめの後に書いている訳です)

 というわけで結論! 劇場アニメ『映画大好きポンポさん』が、200満点中200満点の大傑作!
 だからみんな、劇場行って映画館で観よう!!

最後までお読みいただき誠にありがとうございます。 サポート戴けたら、とてもとても喜びます。