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芋を焼け、扉を開けろ。

家で本を読んでいた美雪は、きな臭い匂いに気づいた。開いていた窓から身を乗り出して見ると裏の小山の横穴から白煙が立ち登っている。

「なんだ、山火事か?」

近所が騒ぎ初める。何かを察した美雪は、部屋にあるシューズを履くとスラリと伸びた足を窓枠にかけ、ひょいと飛び出し山の裏側へ全力で走った。


最近は遊び場所がめっきり少ない。僕達3人はいつも退屈だった。どこで遊んでも近所の年寄りにうるさがられる。

「家でゲームも飽きたな」

大野がそう漏らす。小学校でサッカーをやろうにも校門は閉ざされている。

すると福谷が、焚火で焼き芋をしようと言い出した。福谷家は農家で金時芋の収穫が終わったばかり。食いしん坊の大野は、眼を輝かせた。

福谷家で竹ぼうきを3本借りる。すごい量の落ち葉が庭一面に広がっており、ていよく掃除をさせられている気がしたが、焼き芋に魅了されている僕達は、素直に落ち葉集めをする。

庭の隅には横穴があり物置になっていた。ゴミ袋3つ分ほど集め、物置の近くで落ち葉を盛大に燃やした所で、怒鳴り声が聞こえた。

「あんた達!なにやってるの!」

福谷の姉ちゃんの美雪だった。美雪は、中学陸上のエース。短髪で背が高く、焼けた肌が印象的な美人だった。普段は優しいが今日はやたら怖い。

「こんな所で焚火したら通報されるでしょうが!早く消しなさい!」

近所で騒ぎになっていると聞き、あわててバケツの水をぶっかけた。
でもなんでバレたんだ。

「裏の穴から煙が見えて飛んで来たのよ」

美雪は物置の奥を指した。

「これは防空壕の跡。今は物置だけど横穴が他と繋がってるのよね」

それで、あちこちから煙が出たらしい。そうだったのか。でもよく見ると物置の奥に小さな扉がある。美雪に聞くと、そんなものは無かったと言う。気になった福谷が物置にあった懐中電灯で扉を照らす。すると家紋のような絵が入った金色の取っ手が光った。

皆と顔を見合わせ、僕は恐々とそこに手をかけた。

(つづく)

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