最終回『くちびるリビドー』第20話/3.まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風(8)
「そういえば……マモルね、このところ体調崩しててさ。お店、閉めちゃってるのよ」
真夜中。寧旺が口をひらいたのは、ゆうべと同じように星を眺めながら過熱した思考をクールダウンさせようと、寒空の下を歩きはじめたときだった。
「偉そうに、アンタにアドバイスなんかできる立場じゃないのよ、実際は」
そう話す寧旺の雰囲気から「マモルさんの状態は相当よくないのでは?」と感じ取ってしまった私は、返す言葉が見つからぬまま、耳を澄ませて次の言葉を待った。
「病気のことはね、最初からわかっていた