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Day.12 実家に帰ってない

 しばらく実家に帰っていない。実家に行っても気を使ってしまい、余計に疲れてしまうからだ。自分に子どもが生まれたばかりのころは、ときどき遊びに行っていた。だけど、あるできごとがきっかけになり、足が遠のいてしまった。

 母が亡くなってから30年近くになる。いつの間にか母といっしょに暮らした年数よりも、母がいなくなったあとの生活の方が長くなってしまった。自分の年齢は、母が亡くなったときの年齢を超えてしまい不思議な感覚だ。

 もともと、わたしは父とは性格が合わなかった。だから距離は遠かった。しかし、母が亡くなり、父が再婚し、わたしにも子どもが生まれて、実家に行く頻度も増えて、その距離は少し近づいたように思っていた。

 しかし、基本的にわたしの父への関わり方が、子どものころと全く変わっていなかった。だから距離が縮まったことで、その関係に疲れてしまったのだ。子どものころ、わたしはいつも両親の顔色をうかがっていた。「機嫌を損ねては大変だ。自分にとばっちりが飛んでくる。よい子でいないと…」毎日そう思って過ごしていた。大人になった今でも実家に行ったときは、それを続けていた。だから、ある日、実家に行ったときに、がんばり過ぎてしまい、自分が崩壊してしまったのだった。

 それ以外にも実家への足が遠のいた理由がある。父の再婚相手の人に対する態度が、母に対する言動とは余りにも違うので、二人を見ていてもの凄く困惑したからだ。両親は共働きだったが、父が母を労っている様子は感じられなかった。そのため、自分が知らない父の姿を見るたびに、母に対して怒鳴り散らしていた場面を思い出し、胸が痛くなる。その痛みに耐えられなくなり、行くのをやめてしまったのだ。

 その痛みは母に対するものだと思っていたが、実は自分に対する痛みだった。とにかく父が恐ろしくて、関係性を作ることができなかった。突然怒鳴る、突然キレる。なぜなのかが理解ができなかった。子どものころと違うのは、自分が大人になりいろいろな人と出会ったことで、父の行動の理由は理解できるようになったことだ。だけど、近くに行こうとは決して思えない。

 きっとこの痛みを解決するには、父と直接話をして、関係性の回復することなのだろう。だけど、それをしようとは思えないので、そのままにしている。子どものころと同じ痛みをもう1度味わうかもしれないという恐怖。それを乗り越えようという勇気は湧いてこない。

 母がこの世を去る前に、わたしたち家族に残した言葉がある。母の最後の願いは「家族仲良くしてね。」だった。30年経って、母の願い通りにはなっていないが、母は今のわたしの気持ちを受け入れてくれてると思う。仕方がないねと。変わらない父娘関係にあきれていながらも、きっとどこかであたたかく見守ってくれていると思う。そして、いつか家族が仲良くするのを応援してくれていると思う。

今日も読んでいただきありがとうございます。明日もがんばります。


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