見出し画像

よりよい選択のために

小学校高学年から中学校にかけて、僕は「ポケットモンスターシリーズ」のゲームに熱中していた。

最初にプレイしたのは、確か「ホワイト2」だったと思う。そこから、「Y」「オメガルビー」「ムーン」と、新作が出るたびに買ってはプレイした。最新作をプレイする傍らで、ホワイト2以前に発売された「ハートゴールド」「ダイヤモンド」「ブラック」で遊び、「ポケモン不思議のダンジョン」や「ポケモンスクランブル」といった周辺の作品にも手を出してきた。

ここで、ポケモンを詳しく知らない方のためにも、少し補足しておこう。そもそもポケモンとは「プレイヤー自身が主人公となり、ポケットモンスター(略してポケモン)という不思議な生き物たちとともに冒険を進めていく、ロールプレイングゲーム(RPG)」【*】だ。壮大な冒険の目的の1つは、最高(最強)のポケモントレーナーである「チャンピオン」になること。ポケモンを育成していった先で、現任の「チャンピオン」と勝負をし、勝敗いかんで自分が新たな「チャンピオン」の座につける。
先にあげた「ポケモン不思議のダンジョン」や「ポケモンスクランブル」は毛色の違う作品だが、ここでの説明は省略する。気になる方は調べてみてほしい。

もう久しくプレイはしていないが、テレビでポケモンのCMが流れたりなんかすると、ふと「ちょっとやってみようかな」と思うことがある。実際にゲーム画面を開くまではいかないけれど、プレイヤーだった頃の自分を思い出して、懐かしくなったり、ちょっと切なくなったりする。

それくらい好きだったポケモン。(まあ、今も好きな気持ちが残っているのかもしれないが)その醍醐味の1つは、何といっても「最初のパートナー」選びだ。3種類の異なる特徴(タイプ)を持つポケモンの中から1匹、これから苦楽を共にする相棒を選ぶ。

最初にプレイした「ホワイト2」では、決めるのに時間がかかった記憶がある。3つしか選択肢がないとはいえ、どれも甲乙つけがたいくらいに愛らしくみえたのだ。当時、同じタイミングでバージョン違いのカセットを買った弟が選んだポケモンを選択肢から除外し、最終的には、自分の好きな色が緑であることにかこつけて、緑色のポケモン「ツタージャ」に決めた。

ゲームの世界から離れて、現実世界に目を向けてみると、いくつかの中から何かを選択しなければいけない場面はたくさんある。ありすぎるくらいにある。

選択形式のテスト問題、街中の自動販売機、デートに着ていく洋服。

枚挙にいとまがないほどの選択の機会を自ら生み出し、時には他者に与えられながら生きる私たち。「どうすれば後悔しない選択ができるか」という話題が共通の課題にのぼるのは、私たち一人ひとりが、日夜膨大な数の選択と向き合っているからに他ならない。

では、どうすれば後悔しない選択ができるのか。

その1つの答えは、選択の基準を作ることだと思う。要するに「何をもって選択をするのかの理由付け」のことである。先の私のパートナー選びでいうところの「弟の行動」と「好きな色」にあたる。このうち、弟の行動は「外的な基準」で、好きな色は「内的な基準」である。

外的基準は、自分以外の周りものに関連する理由付けのことだ。「周りが○○だから、△△をする」という時の、「周りが○○だから」の部分である。一方、内的な基準は、自分の思考や行動に紐づいた理由付けのことだ。「自分が○○だから、△△をする」というように、内的な基準に従うと、自分に根ざした選択をすることになる。

これらの基準は、流動性によって大きく3つに分けられると考える。流動性とは、ここでは「基準の変わりやすさ」のことを指す。

1つ目は「流動しない基準」だ。先の例では「弟の行動」がこれにあたる。弟のとった行動は一過性のもので、過去を書き換えない限り、変わることがないからだ。

2つ目は「流動しにくい基準」だ。先の話だと「好きな色」が該当する。自分の好きなこと・得意なことなどは、長期的にみて変化しにくかったり、変わり方がゆっくりである。

3つ目は「流動しやすい基準」だ。例えば、流行や株価、自分の一時的な感情のことである。

選択の基準は、植物における根っこのようなものだ。基準の根がしっかりしていることで、選択するという行動を起こし、結果という果実が得られる。裏を返せば、この基準がぶれればぶれるほど、後悔する選択につながるのではなかろうか。また、選ぶ際には「内的な基準」の方が大事、みたいな話を聞くことがあるが、僕はそうは思わない。植物が日光や水を必要とするように、外から与えられるものが自分を大きく成長させる可能性があるからだ。内的なものと外的なものの双方がリンクすることで、自信をもった選択ができると考える。

今思えば、私がポケモンで「パートナー選び」に胸を躍らせることができたのは、「流動することのない弟のパートナー選び」と「流動しにくい自分の好きな色」の二重の基準に沿っていたからなのかもしれない。

絶対に動かないものと移り行く可能性があるもの。

外的な基準と内的な基準。

複数の視点で選択の理由付けを行うと、「選択に失敗した」と感じてしまう時に、後悔の行く先を分散できる。それが、結果的に自信をもった選択につながるのではなかろうか。

生きていくうえで、私たちが「選択」から逃れることはできない。

だからこそ、「変わりにくいものを基準にする」「複数の観点で選択の理由をつくる」という視点を取り入れつつ、後悔しすぎない選択ができるようになる必要があるだろう。それができたとき、選択をすることへの楽しさ・喜びが、選択の新たな「内的要因」となって、自信に溢れた選択につながっていくに違いない。


引用

*:株式会社ポケモン, 2014, 「『ポケットモンスター』は、こんなゲーム」, ホームページ, https://www.pokemon.co.jp/ex/oras/about/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?