頼るから頼られる -後編-
それでも、昔よりは「助けてほしい」というHELPの声をあげられるようになったきた気がする。「めっちゃ苦手だった」のが「そこそこ苦手」くらいに、微妙にランクアップしたくらいだけど。
そのきっかけの1つは、「聞く技術 聞いてもらう技術」という本に出会ったことにある。
昨年(2023年)の秋、書店の棚を無造作に眺めていた僕の目が、一点で止まった。
心に留まったのは「聞く」という単語が書かれていたからだ。
僕は他の人の話を「聞く」のが好きなタイプ。コミュニケーションの中では、聞き役に回ることの方が圧倒的に多い。
その上、先に述べたように、誰かに頼られるのを苦にしない性格をしている。そんな僕の性質を見抜いてか、周囲から「相談に乗ってほしい」「話を聞いてほしい」と頼まれることがままある。頼られるのは好きだから、時間をとって、相手の話を聞くわけだ。
学校のこと。
家族のこと。
将来のこと。
相手が話すテーマは多種多様だけれど、そこには往々にして「悩み」が含まれていて、その人なりの「苦しさ」が見え隠れしていて、何とかして今の状況を脱却したいという切実な願いが宿っている。
一人ひとりの話に耳を傾けるたびに思うのは、相手に「話を聞いてもらえて良かった」と思ってほしいということ。聞く側のエゴかもしれないが、せっかく話をするのなら「話さない方が良かった」とは思われたくない。
―この本を読んだら、相手に「話して良かった」と思ってもらうために必要な技術が会得できるかもしれない
そんな期待を纏った一冊の本は、レジをくぐり抜け、僕と一緒に書店の外へ出た。
本の中にはタイトルにある通り、聞くために求められるスキルと、逆に話を聞いてもらうために大切なこととが書かれていた。
話を聞く技術を解説した本は、おそらくごまんとある。その中で本書が特徴的なのは、「聞かれること」にフォーカスが置かれている点だろう。
事実、筆者は本の結びにこんなことを書いている。
「聞く」と「聞いてもらう」を並列していると思いきや、一番最後に後者の方がより重要であると述べている。「聞いてもらう」と、「聞く」ことのパワーが身に染みて分かるのだという。
〈※本の内容が気になる方はぜひ、読んでみてください。余談ですが、後日別のnoteで本書の詳しい紹介をしてみたいと考えています〉
「聞いてもらう」場面として真っ先に浮かんだのは、誰かに何かを相談する時だ。「自分一人ではどうにもならない」と周りを頼る時、頼られた方は「聞く」側に、頼る方は「聞かれる」側になる。
筆者の言う通り「聞かれる」ことが大事なのだとすれば、それは「頼る」ことの大切さを説いているのと同義なのではないか。むしろ、「頼る」ことができなければ、本当の意味で相手の話を「聞く」ことはできないのではないか。
そんなことを考えながら、最後の一文を読み終えた。
周りに頼られたい。そのためには、みんなの話を親身になって「聞いて」あげなければならない。
「聞く」ことばかりに目を向けていた僕にとって、この本の内容は衝撃的だった。が、決して納得できなかったわけではない。本の内容には共感する部分があり、自分の話を誰かに「聞いてもらう」こと、誰かの力を「頼る」ことに積極的になる必要があると、素直に感じたのだ。
筆者風にまとめるのであれば、こういうことになる。
本を読み終えてから、間もなく1年が経つ。
この期間、自分の頼るスキルは間違いなく上がった。話を聞いてもらうに至るまでのハードルは下がり、誰かを「頼る」際に抱いていた罪悪感は少しばかり低減した。
意識的に「頼る」ようになって、思った以上にみんなが話を「聞いてくれる」ことに気が付いた。振り返ると、自分が頼れない原因は、何かを話したところで「きちんと聞いてもらえないはずだ」という思い込みにもあった気がする。話を聞いてもらえると分かると、周りに声をかけやすくなった。それに、誰かを頼っている人は、相手からの信頼が得られて、結果的に頼られるようになるとも感じた。
まとめとして、僕のように「誰かを頼るのが下手」で、それでいて「誰かに頼られたい気持ちが強い」みなさんが生きやすく(なるであろう)マインドセットを提案したい。
自分で書いておきながらなんだが、正直良い提案にはなっていない。1つめに関しては、ピーマンの苦手な人に「とりあえずピーマン食ってみろ」と言っているのと何ら変わらない。ある意味、暴論である。
それでも、意識するのと意識しないのとは違うと思うのだ。少なくとも、僕はそうだった。「もっと頼るようにしよう」と心に決めたことで、徐々に「頼る」ことができるようになった。
偉そうなことを言っているが、いまだに僕は、誰かを頼るのが下手だ。困っていても「困っている」と言えなかったり、苦しくても「苦しいから助けてほしい」と言えないことの方が遥かに多い。
下手だけれど下手なりに、周りを頼っていきたい。
ここまで僕の話を「聞いて」くれたみなさん、ありがとうございました。
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